ほんとのことが言えますように
僕は昨日、何もできなかった。全てを知っていたのに、友達の喧嘩を止められなかった。ただ、みてることしかできなかった。
僕は全部知っていた。うみちゃんがゆきちゃんの大事なぬいぐるみにジュースをこぼして、泣きそうになりながら吹いていたこと。はるくんは本当に何も知らず、何もしていないこと。ゆきちゃんは勘違いで怒っていること。
「ジュースつけたのかえでくん?」
ゆきちゃんは悲しそうな、怒っているような感じで聞いてきた、
「違う」
「じゃあ、誰がやったか知らない?」
「知らない」
僕は嘘をついた。うみちゃんが嘘をついているのを知ってたけど、僕も嘘をついた。
「そしたらもう、はるくんしかいないね。許さない」
ゆきちゃんはとても怒っていた。僕はそんな雪ちゃんがちょっと怖くて、そうだねとうなづくことしかできなかった。はるくんは何もしてないことを知ってるのに、ゆきちゃんを止められなかった。
僕が2人の間に入って、みんなでちゃんと話し合えば、誰も傷付かなかった。そう思うと、みてることしかできなかった自分がどうしても許せなくて、悔しい。
僕は重たい気持ちのまま家に帰った。僕は悪いことはしていない。でも、何だかずっとモヤモヤする。うみちゃんの焦った顔、ゆきちゃんの怒った顔、はるくんの悲しそうな顔、全部が頭から離れない。
仲直りできるだろうか、またみんなで遊べるだろうか。いや、仲直りしたい。また一緒に遊びたい。
僕はお願い事をすることにした。今日は7月7日、七夕の日。短冊に願い事を書いて飾ろうと思った。
ママに買ってもらった短冊に、お気に入りの色鉛筆で丁寧に文字を書いた。
僕は明日、ちゃんと話さなければいけない。全部知ってたのに何も言えなかったこと、謝らないといけない。それから仲直りするんだ。あの時にはできなかったこと。僕は話す勇気を出そうと思う。
「明日、ほんとのことが言えますように」
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