夢・想


 意識を取り戻した俺はいつの間にか暗闇の空間にいた、ここがどこなのかもわからないし暗すぎて距離感が全くつかめない


 「なんだ・・・ここは・・・」


 「ん?」


 遠くにわずかな光が見えた俺はその方向に向かって走る、何よりもここを早く出たい一心だった


 「近づいて・・・来ている?」


 だがここであることに気づく、こちらも光に向かっているように光もこちら側えと迫ってきているのだ。


 そして近づいてくるスピードもだんだんと速くなっていくように感じた。


 「食べ・・ト・・マ・・の・・う・・は・・ら・・だ・・う」


 うまく聞き取れないが声も聞こえてくる、それも複数


 「食べ・・な・・はら・・だ・・う」


 「食べ・・ピ・・のう・・ら・・は・・う」


 だんだんと声が鮮明になってやがてはっきりと聞こえるようになり俺は確信する


 「食べられなかったトマト!この恨みはきっと晴らすだろう!!」


 「食べられなかったナス!この恨みはきっと晴らすだろう!!」


 「食べられなかったピーマン!この恨みはきっと晴らすだろう!」


 (この声は・・・光の正体はっ!レキレスによってぐちゃぐちゃにされた・・・俺が育てていた野菜たちの集団だ!)


 「うあああああああ!!!!!!!!!」


 「トマト!」 「トマト!」


 「ナス!」 「ナス!」


 「ピーマン!」 「ピーマン!」


 「「「うおおおおおおお!!!!!」」」


 トマト、ナス、ピーマンの集団がそれぞれ雄たけびを上げて襲い掛かってくる


 「ま・・・まて!逆恨みだ!お前たちをぐちゃぐちゃにしたのは俺じゃ!


 「うるせえええええ!お前がちゃんと守っていればこうはならなかったんだ!」


 「ぐばあっ!」


 その言葉とともに俺はピーマンに殴られる、ピーマンの拳はまるで肉詰めされたように硬かった


 「そのとおりだああああああああ!」


 トマトが汁を飛ばして目つぶしをしてくる、だが目に入らず口に入った汁はとてつもなく甘かった

 

 「くそおおおおおおお!」


 ナスの拳は煮込まれたようにトロトロだった。


 次々と野菜たちが襲ってくる、ひとしきり満足したのか俺を殴るのをやめ、


話しかけてきた。

 

 「俺らだって逆恨みだってのは分かってるんだ・・・」


 「だけど・・・どうしてもおいしく食べてもらいたかったなって・・・」


 そういうとトマト、ナス、ピーマンそれぞれのリーダーらしき野菜を残して、みな消える


 「生き残った俺らのこと、仲間の分までおいしく食べてくれよな」


 




 「はっ!はぁはぁはぁはぁ・・・」


 俺はベットから飛び上がる、どうやら夢だったようだ・・・・


 「だいじょうぶですか?随分うなされてましたけど・・・」


 「ちょっと野菜たちが襲ってきて・・・」


 「魔力だけじゃなくて知能まで消費したんですか?」


 そんな辛辣な言葉をエレシアから投げかけられる


 「あのテーブルの上の野菜は?・・・」


 リビングのテーブルの上にはトマト、ナス、ピーマンがそれぞれ一つずつ置かれていた。


 「ああ、あれは爆発を運よく避けて生き残った野菜たちです。探してみたら見つかったんですよ」


 「あいつら・・・」


 俺は目から涙が零れ落ちる


 「えぇ・・・どうしたんですか・・・何か変ですよ」


 「料理するぞ、あの野菜で」


 ピーマンは肉詰め、トマトはそのまま、ナスは煮込んで料理してやろう、それが俺からの・・・精一杯の天国への手向けだ

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