襲・撃

 「どうして・・・ここに?」


 「どうしてって様子を見に来たに決まってるじゃないですか!あんな風に家を飛び出したら誰だって心配しますよ!」


 「でも・・・どうやってここに??」


 「これです!」


 「糸?」


 エレシアは指先から出た細い糸のようなものを見せる、それをたどってみると俺の背中に繋がっていた。なるほど、これを伝って追って来たのか。


 「抜け目ねーな・・・」


 「そんなことよりその怪我どうしたんですか!見せてください!」


 「応急処置だけしますから、早く逃げましょう!」


 そういってエレシアは俺の腕をつかむと肩に空いた穴の少し上を糸で縛り上げ、糸を包帯のようにして、俺の肩に固く結ぶ。


 「帰ったらヒールポーションがあります!急ぎましょう」


 「ありがとう、これで出血多量の心配は無くなった。逃げられる!」


 「絶対に無事に帰ってスローライフを送るぞ!」


 「はい!」





 「ああ~なんか仲間?らしきものが助けにきて処置されちゃいましたね~」


 まさか、私の前に来た勇者が転生する前に勤めていた企業の部下だったとは・・・


 始めに聞かされた時は驚いたものだが、責任を果たさないクズだったと聞いて仕事が残っているのに帰ろうとするころとまったく変わっておらず呆れてしまう。


 (あれが世界最強の傭兵、嘘だろう)


 (私が教えたことすべて忘れやがって)


 捕らえて再教育して戦力になってもらわねばならないな、隊長もきっとそのつもりだろう。


 「警告の意味も込めて仲間から打ち抜きます」


 「まっ!まて!カワナミ!一般人には手を出すな!」


 「関係ありません。一つの命よりこれから人々を救う命の確保が最優先です。それに自分のせいで死んだというトラウマを植え付けることでより従順になるでしょう」


 「だとしても!我々傭兵は一般人の命を守る義務がある!そんなことをしたら本末転倒だ!」


 (うるさいなあ・・・もう撃とう)


 「エクセル・・・マグナビーム!!」


 


 

 俺はかなりの魔力を込めて鎖をちぎり、すべてを説明し終えてエレシアをおぶって走っていた。


 「俺がやらないと・・・ダメかもしれないことなんだ!キリッ」


 「そんなこと言った結果が昔の上司に縛られて、肩打ち抜かれて、戻る必要もなかったと、ぐフフフフフフ、馬鹿じゃないですか!」


 エレシアは何か不気味な笑い声で馬鹿にするように笑っている


 「うるせぇよ・・・」


 「で、世界最強の傭兵さーん!魔力はどのくらい残ってるんでーすか?」


 「その言い方やめろ、魔力は2割ほどしか残ってないぞ。」


 「それにしても身体強化魔法すごいですね、私が糸飛ばして移動するより断然早いです!」


 「聞けよ・・・」


 (魔力が2割・・・俺の2割は一般人6人分くらいの魔力だから何かはできるか)


 「ん・・・?」


 エレシアが何かに気付いたようだ・・・


 「ビーム飛んできてます!」


 「まかせろ!一度食らったものを2度も食らってたまるか、こっちもビームだ!こういうの憧れてたんだよなあ!」


 「マグナルタファイヤァァ・・・ビィーム!!」


 俺は手から極太光線を発射させカワナミのビームを打ち消しビームはカワナミがいるであろう方向に飛んでいく


 「こういうのがやりたかったんだよ!男の夢だね!」


 「すごいですね・・・」


 「おっとこんなことをしている場合ではない、行くぞ!」


 俺は家の方向へ振り向くと一目散に走りだした


 「・・・・」


 「さて・・・相談なんですが・・・」


 (まずい・・・やってしまった)


 「どうしました?」


 「それが・・・」


 「いいから早く言ってください」


 「さっきの魔法で魔力ほぼ使っちゃって・・・もうほとんどすっからかんで残ってないです・・・」

 

 


 


 




 


 

 


 


 

 

 


 


 


 




 


 


 

 


 


 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る