希・望
まずいまずいまずい早く逃げなければ。
俺の脳内にはブラック企業のトラウマがあふれかえっていた、残業代なし・・・会社に泊まり帰れるのは2回、多すぎる仕事、パワハラ、。
(いやまてよ・・・パワハラしていたのは他の上司だし、残業代なしも同じ・・・異世界に転生した今ならもしかしたら理解しあえるんじゃ・・・、いやあいつは普通に帰ってたし、仕事の量も普通だし理不尽に怒られたわ)
「えっ!?まじ!そんな偶然もあるんだな~でも今回はお前が先輩だし上司って感じするけどな」
「声が大きい!」
いやもうすでに俺が大きい声を出していた、これで気づかれるならさっきのでも気づかれていたはずだ、無駄だろう。
それにケインは何を言っているんだ?今の俺はただのニートだぞ。
いやそれならまだいい、だが一番最悪な状況は無断欠勤という扱いにされてい
されていることだ、もしかしたらカワナミや兵士たちが追ってくるかもしれない。
「!!」
終わりだ・・・そんな最悪な状況を考えていると不意にこっちを向いたカワナミと目が合ってしまった・・
なにかを隊長に伝えている、隊長がそのままでクビにならなかったことに少し驚く、なぜか冷静になってきた
(そんなことを考えてる場合じゃない!)
「じゃあな!ケイン!」
「スピードエクステンション」
俺は挨拶を軽く済ませ残っている魔力の半分を使い駆け出す。
もう魔力は4分の1しか残っていない。
(いそげ・・・もっと早く!)
おそらく追いかけてくるであろうカワナミに捕まってもろくなことにならないのは目に見えている。
「はぁ・・・はぁ・・・うぐっ!?」
「バインドロックチェーン!」
急に鎖が腕を巻き込み上半身が縛りあげられる。
(嘘だろ!?400mは離れているぞ!?)
おそらくカワナミが放ったチェーンが400mほど離れた俺に巻き付いたのだ、なんという射程、だが不幸中の幸いとして狙いが逸れたのだろう、両腕は巻き込まれたが鎖は上半身に巻き付いただけで足は動かせる
(マズイ・・・完全に俺を捕らえるつもりだ・・・)
「ちぎろうと思ったが・・・無理だな、かなりの魔力で強化されている」
どうやらこの1発で仕留めるつもりだったようだ、かなりの魔力が込められていてちぎれない。
(かなりの魔力を使ったといってもまだ8割は残っているだろう・・・逃げてるだけじゃジリ貧だ、いずれ捕まってしまう・・・)
「全魔力を消費して一気に駆け抜けようか・・・」
「エクセルマグナビーム!」
そんなことを考えていた俺の右肩が後ろから飛んできたビームに貫かれる。
「ぐぁはっ!!」
直径3~4センチほどの右肩に空いた穴から血がだらだらと流れ落ちている。
どうやらカワナミは長射程でバインド、ビームなどを得意とするかく乱タイプのようだ、こちらからは認識できないし反撃も難しい。
(まずい・・・絶望的だ・・・俺は回復魔法を使えない・・・このままじゃ出血多量で家に帰る前に倒れてしまう・・・)
「くそっ!」
(責任なんか放り出してこんなとこ戻ってこなきゃよかった・・・関係ないものと割り切るべきだった・・・最低な奴になるべきだった・・・)
ここで倒れるとまた戦場に戻されてあんな日々を過ごすことになってしまう、それは誰の目に見ても明白だった。
「嫌だ嫌だ!戻ってたまるか!俺は・・・厄介な同居人もいるけど・・・俺は・・・スローライフを・・・」
「過ごすんだあああああああ!!!!!」
すると俺は木に糸のようなものを飛ばして巻きつけながらスパイ○ーマンのように移動している人影に気づく。
それは俺にとっての希望の光だった。
「どっどうしたんですか!ユウト!その怪我は!」
厄介な同居人が助けに来てくれたらしい
「エレシア・・・!!」
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