復・活
「はあ!?こんなにかわいい私がいるのに妹と交換!!!!???なめてるんじゃないですよ!」
聞かれぬようぼそっと呟いたのだがどうやら聞かれていたらしい
「可愛いかどうかなんか関係ねぇよ!お前なんかよりエレムの方がしっかりしてるなあって思っただけだよ!」
「可愛いが関係ないって言った!可愛くなろうと努力している人に謝ってください!」
「お前はしてないから謝らなくていいな」
「なにおう・・・」
「できましたよ!、今はこんなものしか作れませんが・・・」
俺がエレシアと言い争いをしている間にエレムは野菜スープを作ってくれたらしい。
美味しそうなにおいと湯気が立ち込めてくるエレシアと違いとてもおいしそうだ・・・
「それでは・・・いただきます!」
(これは・・・)
「おいしい!」
エレムの作ってくれた料理はしっかりと出汁がとられており、しっかりと野菜の硬さも計算されていてちょうどいい、何より味が素直で癖がない。
やっぱりエレムと過ごした方がスローライフ生活が満喫できる気がする。
「あの~エレム?私への料理はないんですか?」
エレシアは自分への料理がないことに不満を漏らす。
「お姉ちゃんがいろいろな具材を使っちゃったからお姉ちゃんの分はないわよ!」
「そんなぁ・・・」
「ユウト!私にもくださいよ!」
エレシアが料理を欲しがっているが、せっかくエレムが作ってくれた料理だ一口も渡すものか。
「だめだ!あと俺がこれから料理を作るからな、お前はキッチンに入るんじゃない」
「私だって頑張ったんですからね・・・」
エレシアが反論してくるが自分の料理が下手ということもあり強く言い返せないようだ
「で・・では私はこれで。お姉ちゃん、お父さんが会いたがっているのでたまには帰って来てください」
そういうとエレムは俺たちが何も言わないうちに言ってしまった。
なんだろういい子過ぎて自分が情けなくなってくる
「・・・頑張りましょうか」
「・・だな」
俺は小さくその言葉に同意すると、俺たちは3階の掃除を始めた。
「ふう・・・優雅だなぁ・・・」
「なんか・・・気持ち悪いです」
この場所にきて1か月がたとうとしていたある日、俺は畑仕事を終わらせリビングでコーヒーをたしなんでいた。
最初の頃はスローライフなんて送れるかと思っていたがなんだかんだで優雅に過ごしている。
「戦闘なんて起きずに畑仕事して、ゆっくり過ごす、それでいいじゃないか」
「まぁそうですけど・・・」
「戦闘・・・?」
そこで俺は嫌な違和感を覚える、本当に気のせいだったで済ませたい違和感を。
「・・・スプラッシュ」
「ひゃあ!つべたい!」
俺が魔法の詠唱をすると手から水が発射され、エレシアにかかる
「なんなんですか!急に!びしょ濡れですよ!」
「出ちゃ・・った・・・」
まずい・・・つまりいつからからは分からないが俺の分身が消え、魔力が復活している
「早く分身出しに行かないと・・・」
俺は最低限の金と水をリュックに詰め、出かける準備をする
「ちょっと出かけてくる!2日ぐらい戻らないかもしれないけ留守番頼む」
「ちょ!ちょっとどういうことですか!説明してください!」
エレシアが俺に問いかけてくるが無理もないだろう、同居人が急に理由も言わずに家を飛び出そうとするのだ。
「俺がやらないと・・・ダメかもしれないことなんだ!」
そういうと俺は返事も待たずに家を飛び出した、ブラックな環境で働かされていてもこれは世界の人々にとっては大切なことだ、仕事自体にやりがいは感じていた。
だがやりがいだけでは飯は食って行けない、その職場環境が嫌でやめたはずなのに・・・
「スピードエクステンション!」
俺は魔力の半分を使って身体強化魔法をかけ道を走り抜ける。
やめたといっても罪悪感や後ろめたさはあるようだ、新しく召喚された勇者のために全魔力を使って分身で新しい勇者のための慣らし期間を作り仕事を辞めてもう関係ないはずなのに・・・いやあるのか?
「はぁ・・・はぁ・・・着いた」
「っ!」
5時間近く走り続けてやっと着いた最前線の光景を見て俺は絶句する
そこには俺の分身がいなくなったとは思えない、随分と楽しそうに騒いでいる兵士たちの姿があった
「は!?」
「おう!なんだ帰って来たのか!?」
振り向くとそこにはかつての同僚で親友、ケインの姿があった。
「え・・・なんでこんなに余裕そうにしてるの?」
心配して損してしまった、まあ何もなかったに越したことはないのだが
「いやお前と新しく来た勇者様のおかげだよ!引継ぎに1週間ぐらいかかっちゃたんだけどその間もお前の分身で余裕でさー」
「引継ぎが終わってから分身が消えるまでの残りの3週間で魔王軍の幹部も1人倒して勢いづいてるってわけ」
俺は驚きを隠せなかった、それも仕方ないだろう。
(なんだよ・・・「お前が別格過ぎたんだよ」なんて意味深な言葉言われたら俺が特別って思うじゃん)
だが現実はそんなことはなかった、むしろ新しく来た勇者の方が俺より強いのではないか、そう思えてくるほどに。
「せっかくだし新しく来た勇者見に行こーうぜ!」
そんなクソうざい部活のOBなんてことはしたくなかったがこんなに味方の士気が上がる勇者とは何者なのか挨拶はせずとも少し見てみたい。
「ああ・・・案内してくれるか?」
「おう!こっちだ!」
この時点でさっさと帰るべきだった、思えばここからだろう俺のスローライフ生活が狂っていくのは
「ほい!あれが新しく来た勇者様!」
その姿を見て俺は絶句する
「勇者様の名前は確か・・・」
「カワナミ・・・アヤ」
「それだ!それ!あれ・・・でもなんでお前が知ってんだ?」
俺は新しく来た勇者の名前を知っている、そして顔にも見覚えがあった、むしろ忘れてなるものか
「あいつは・・・俺が転生前ブラック企業で働いていた時の・・・」
「上司だあああああああ!!!!」
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