同・居

「お~い起きろ」


 俺はエレシアに占拠され自分の部屋にされた寝室にエレシアを起こしに行く。


 「開けるぞ」


 返事がないのでドアを開けると、部屋の中には蜘蛛の巣が張り巡らされていた。


 「せっかく掃除したのに・・・」


 俺はほうきで蜘蛛の巣を巻き取ろうとするが、蜘蛛の巣が信じられないくらい硬くびくともしない。


 「すごいな・・・防刃ベストにでも使えるんじゃないか」


 「ナイフ・・・試してみるか」


 俺はナイフを取り出すと蜘蛛の巣を思いっきり切りつけるが傷一つ与えられなかった。


 「完全に防刃ベストに使えるな・・・これ」


 傭兵をやめて収入減がなくなったことだしエレシアに作ってもらってそれを売ろうか?


 「ふぁ~あ、あ!ユウトじゃないですか!おはようございます!」


 そんなことを考えていると、エレシアが眠そうにしながら起きてくる


 「何ですかユウト!その手に持っているナイフは!」


 ナイフのことに気づいたらしい


 「寝込みを襲おうとしたんですか!変態!」


 エレシアは起き上がって戦闘態勢に入る


 「違うって!糸の強度を調べようとしただけだって!」


 「何ですか!私に魅力がないって言うんですか!」


 こいつ、めんどくせぇ・・・


 「そんなことはどうでもいいから、飯作ってくれ、約束だろその間に畑いじっとくから」


 「めんどくさいですねぇ、まぁ約束だから作ってあげますよ」


 そういってエレシアは糸を突き破って部屋から出てくる。


 「え・・・糸突き破れるの・・・」


 一応世界最強の傭兵と言われてる俺でさえ魔力がないのもあるが破れなかったのに・・・


 「自分で張った糸ってのはなぜかわかりませんけど簡単に突き破れるんですよ」


 そうなんだ・・・


 「じゃあ料理作っとくんで畑でもいじっておいてください」


 言われるがままに俺は畑で草むしりをしていた。


 「それにしても蜘蛛の巣硬すぎだろ・・・」


 「でも、あれ?前に掃除した蜘蛛の巣はあんなに硬くなかったんだけどな?」


 そういうことを考えながら、草むしりをしていたところに呼び出しがかかる


 「ごはんできましたよ~」


 俺はこの料理にかなり期待していた、まぁその期待はぶち壊されることになるのだが。


「やっとか」


 俺は女の手料理の手料理ということもあり、ワクワクしながらリビングに行き食卓に座る。


 だがそこにあったのはなにかドロッとしている何かだった・・・かろうじて認識できたのはレタスのようなキャベツのような何かの破片だけだった。


 「これは何?」


 「まずそうですね・・・」


 「そういうことを聞いてるんじゃなくて何を作ろうとしたの?」


 「何を作りたかったんでしょう?」


 「自分でも見失ってるじゃん」


 しかしいくらまずそうでも女の手料理だ覚悟決めて食うしかなかろう。


 「いただきます」


 すると突然玄関のドアが開く


 「やっと見つけた!・・・て食べちゃダメェェェェェェ!!!」


 俺はその言葉に手を止める


 「エレム!どうしてここに?」


 「心配だから来たのよ!」


 「え?だれ?」


 俺は戸惑いを隠せない、だがそれとなくエレシアに似ているような・・・?


 「説明しましょう、彼女はエレム、私の妹です」


 だからか、顔つきも身長も似ているのは。


 だが1つだけ明らかに違うことがある。


 胸だ、妹の方があるとはどういうことだろうか、それもかなり大きい。


 「おい、ユウト妹の胸を見るのはやめてもらおうか」


 「はぁっ!べっべつに見てねーし、勘違いすんなよ!」


 もう一度問おう、こんな状態でほんとにスローライフが送れるのだろうか?


 「そんなことはどうでもいいから大変なの!」


 「どうでもいい?胸の大きさがどうでもいいって言うんですか!」


 「ちがっ!・・・そうじゃなくて!・・・」


 「何が違うって言うんですか!」


 「お仕置きです!」


 エレシアは糸を飛ばすとエレムの両手両足を縛り付ける。


 「やめてぇぇ!胸が小さいからって妹に当たらないでぇぇ!!」


 「ちょっとやりすぎじゃ・・」


 「へっ!このくらいがちょうどいいんですよ」


 俺はエレシアを止めようとするが、まったく聞き耳を持たず拘束を解こうとしない。


 「で?何か言わなければならないことがあったんじゃないんですか?」


 エレムはだいぶ焦っている、よほど大変なことなどだろう


 「そうよ!里が大変なのよ!」


 「と、いうと?」


 里とはおそらくエレシアの故郷だろう。さすがに故郷が大変と聞かされれば興味を持つらしい。


 「最近魔王軍の襲撃してくるらしくて・・・」


 「まぁ私たちはどちらかと言うと人間側ですもんね、襲われるのも仕方ないでしょう」


  色々譜雑な事情があるらしい


 「でも魔王軍は人間との戦いで戦力を消耗しているはずでは?」


 「と・に・か・く、危なくなってきてるからお姉ちゃんも戻ってきなさいってお父さんが!」


 「ダウト!!」


 「うおっ・・」


 急にエレシアがそう叫ぶ。


 「どうせ私に帰ってきてほしいから、お父さんに言われて嘘ついたんでしょう・・・」


 エレシアのお父さんはどうやらかなりの親バカらしい


 「何回目だと思ってるんですか、もうわかりますよ」


 「いやそんなことは・・・」


 エレムがうろたえている、どうやら図星の様だ


 「しかも私たちは魔王軍に襲撃される側じゃなくてする側でしょう」


 「前に誰かが魔王軍の通り道を蜘蛛の巣だらけにしたじゃないですか、それに里の位置がばれるなんてありえないことです!」


 スパイダーヒューマンというのは随分好戦的らしい


 「そうだけど・・・そうだけど・・・その料理!どうせこの人にも迷惑かけてるんでしょう!!いい加減戻ってきてよ!」


 「エレムが作ってくれるからいいんです、それに具材をそのまま食べる方が美味しいです」


 どうやらエレシアは無理に料理を作ってくれたらしい、少し申し訳ない。


 「えっと名前は・・・?」


 エレムが俺に名前を聞いてくる、手足が縛られて床に這いつくばった人に名前を聞かれるのいうのもなかなか面白い


 「ユウトだ、よろしく」


 「ユウトさん姉が申し訳ありません!キッチンお借りしてもいいですか?もっとましなもの作るんで!」


 「お姉ちゃん!これほどいて!」


 「しょうがないですねぇ」


 どうやらエレムは料理を作ってくれる気らしい


 「いいのか!?、キッチンなんていくらでも使ってくれていいよ!」


 なんだろう・・・しっかりしてるし、この子とならスローライフを送れる気がする。


 「交換してもらえないかな・・・」




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