第13話

「へへへ……くすぐったい」


 口づけを落とし、そのまま舌の先で首筋のほくろに触れる。顔を離すと美月がぎゅっと抱きついて昴の胸に顔を埋めた。すんすんと匂いを嗅ぐ鼻音が聞こえたので、こちらも髪を一束取って嗅いでやろうとする。


「んッ……ちょっと!」


 珍しく大きい声を上げながらじたばたと抵抗する美月を見て昴は思わず笑った。やはり嗅がれるのは得意ではなさそうだ。暴れる彼女を窘めつつ頭を撫でる。大抵の場合、頭を撫でれば大人しくなるのだ。本人曰く、眠たくなるらしい。

 美月を解放した昴はひとつ訊ねる。


「俺、どんな匂いなの?」

「んえ〜?んー、よく分かんない、へへへ」

「なんだそれ」

「嫌いではない……けど?」

「それはどうも」


 よく分からないが嫌いではない、という多分喜んでいい感想をもらった。嫌いではない、の部分を反芻して少し口角が上がる。そんな昴を見て美月は訝しげな目を向けた。多分馬鹿にされたと勘違いしている。いつ馬鹿にするタイミングがあったのだと言いたげで、説明を求められたら面倒だ。とりあえず誤魔化しの為に広い襟ぐりから覗く肩に口づけを落とし、そのままベッドに押し倒す。酒に酔った彼女は抵抗することなく昴を求めた。

 Tシャツを捲ると白い肌が顕になる。いつもなら身体を指でなぞるように触れたり、肌に吸い付いて跡をつけるところだ。しかし今日は違うことをしてみたかった。昴は顔を近づけ美月を腹を舐めずる。舌が柔らかい肌に触れると、びくっと身体を揺らした。しかし身体を揺らすだけで、逃げようとはしない。上から下へ、斜めに、そして臍の中へ。


「ひゃ……んんッ」

 

 想定外のことに美月が声を上げ、上体をやや起き上がらせた。噛まれると思っていた様だが、昴にその気配はなく、しかも臍に舌を入れられて舐め取られたのだから当然の反応かもしれない。

 しかし昴は止めなかった。外に出たからか、酒のせいか、美月の肌はしっとりしていて少し塩気がある。それが癖になって止められそうにない。




 身体中を味わった昴は、美月のショーツに手をかける。後、残っているのはここだけだ。そのまま下ろそうとすると、彼女に腕を掴まれた。ふるふると首を横に振っている。


「ここは、だめ……」

「なんで?」

「汗かいてるし……恥ずかしいから、だめ」


 一旦止めるふりをして、昴は内腿に舌を這わせた。そして美月の気が逸れた隙にショーツを脱がせる。薄い毛に覆われた秘部からは透明な汁が垂れている。これを舐めるなとは、酷い話だ。昴は脚を無理やり開き、汁を舌で掬った。


「だぁ……あッ、ばかッ!ほんと、だめなのにッ、ゔ〜ッ」

「どんどん溢れてくるけど?気持ちいい?」

「ちがっ!息、かけ、ないで……ッん……」


 美月は必死の抵抗で昴の頭を掴んでいるが、その手に力は入っていなかった。いくら舌で舐め取っても汁は止まることを知らないのか溢れてくる。美月も恥ずかしいと言う割には腰をがくがくと揺らして喜んでいた。正直すぎる身体だ。

 昴は口を膣の形に合わせ、思い切り汁を吸い取る。じゅるるる、と音を立てながら顔を離すと口周りについた愛液が糸を引いた。あまりにも濡れ易過ぎるのではないかと思わず笑う。


「んぅ……ッあ!舌入れないでぇ……」

「……分かった」


 昴は腫れた肉棒を美月の秘部にはめ込んだ。


「こっちが欲しかったんだよな?」

「ッあ〜!……ふぁあッ」


 まだ入れただけだというのに美月はシーツをギュッと握りしめながら身体を震わせた。顔は火照り、目を閉ざして荒い呼吸を繰り返している。奥まで届く、強く深い刺激に絶頂したようだ。肉棒を離すまいと締めつけて精液を搾り取ろうとしている。秘部のうねりに抵抗するように昴は腰を動かした。美月が限界なように、こちらも余裕はない。胸のふくらみに痕をつけることすら。

 美月と手を繋ぎながら射精した。


「んゔ……あッ……!はぁ……」

「……っ」


 肉棒を抜き取ると、美月はコンドームを外し白濁液を舐め始めた。それはいつもと変わらない行為だったが、彼女への気持ちを自覚してからはやや胸が痛い。昴は何も知らぬ彼女の髪を手で梳いた。汗で濡れた髪の毛から香りを強く感じる。甘く、軽やかで心地の良い香りだ。

 梳いた手がちょうど美月の首筋に当たり、そのまま昴は猫の相手をするように優しく撫で回した。



 

「マジで、搾り取られた……」

「え〜?あー、確かにすぐ終わっちゃったねえ」


 その通り、入れて直ぐに全部出してしまったからである。一体誰のせいなのか。張本人は何も知らないといった顔で口に手を当てくすくすと笑っている。普段ならここで終わらせ風呂に入るところだが、今日は違いを見せつけてやろうと決めた。

 美月を後ろから抱え、ふたつの膨らみを揉みしだき始める。以前より大きくなったのか、手から若干溢れている。彼女は驚きこちらを振り返ったが、抵抗することはなくされるがままに喘いだ。


「んあッ……なんでぇ」

「……松本が煽ったから」

「ゔッ……そんなこと、ないぃ……」


 左手の親指と人差し指で膨らみの先端を弄りながら、右手は美月の花園へ攻め入った。中は先程までのセックスでほぐされているので、既に昴を欲している状態だ。腰を浮かせまいと必死になっているが、肉棒が欲しくて堪らない雌の表情をしている。思わず入れたくなったが、まだ焦らしてやろう。美月が自分から言うまでは黙っていることにした。

 膨らみの先端を刺激する指から逃れようと美月が身体をくねらせている。しかし昴に抱えられているため逃れることはできず、無駄に体力を消耗しているように見えた。右手は溢れ出た蜜に塗れながらも膣を掻き回し、くぽくぽと音を立てている。舌を出しながら浅い呼吸を繰り返す姿は、学校でマドンナと呼ばれている美少女とは結びつかない。昴の肉棒を臀部の割れ目に沿わせ、情けない腰振りを披露する彼女は発情期の犬同然だった。


「どう?指で中ほじくられるの気持ちいい?」

「ゔ〜ッ、……んああッ」

「すげえ、またイッた」

「これぇ、変になっちゃうからっ……手、止めてっ」


 こんな乱れた姿を見て止められる男はいないだろう。が、昴は言われた通りに手を止めた。


「はい、止めたよ」

「んう……」

「あれ、止めてほしかったんだよな?なんで腰振ってよがってんの」

「だってぇ……」

「なんだよ?言わないと分かんないだろ」

「……あ、藍田くんのっおち〇ちんで、私のおま〇こいじめてくださいっ」


 そう言うと美月は上体をベッドに付け、女豹のように尻を昴に突き出した。剥き出しの秘部から蜜が垂れて、入口はわざわざ指で触らなくとも昴を飲み込もうと開いている。


「早く入れてよ……」

「お前が腰振ってるから入れにくいんだよ、大人しくしてろ」


 そう言って昴は美月の丸くて白い尻を叩く。叩いた箇所が少し紅く染った。彼女はビクビクと身体を震わせながら小さく呻く。


「っゔ……」

「なに?叩かれて喜んでんの?とんだ変態だなあ」

「ち、がぁうっ!」


 美月の振る舞いを見ていると、思わず罵りたくなってしまうのだ。今日はいつもよりヒートアップしている。彼女の反応が昴を煽るから仕方ない、そう思うしかない。

 肉棒を秘部に押し込み前後に腰を振りながら、再度美月の尻を平手打ちする。ぱちんと軽い音が部屋に響いた。


「んあッ!?」


 挿入されて喜んでいるのか、叩かれて喜んでいるのか、はたまたその両方なのか。どちらにせよ、美月の反応は悪くない。このままだとまたすぐに絶頂を迎えるだろう。美月は奥が好きなので、そこを中心にぐりぐりと激しいピストン運動で攻め立てる。尻も叩きたかったが、奥を突く度に接続部分周辺がぶつかるので諦めた。上辺の方なら問題なく叩けるが、やはり柔らかい部分の方が刺激が強いと思われる。美月は後者が好きだろうから手は腰を掴むだけだ。


「イきそうッ……ふぁぁ〜!」

「イくときちゃんと言えよ」

「ゔ、分かったあ……あ、〜ッ!イく、イきますッ、ん……ッ!」


 尻を突き上げた体勢で、身体をガクガクと揺らしながら美月は果てた。しかし、昴はここで止めるようなことはしない。左手は腰を掴んだまま、右手を前に持っていき美月の秘部の先端を指で揺らした。絶頂したばかりの彼女には刺激が強かったようで、枕に顔を埋めて喘いでいる。


「俺はまだイってないからさぁ」

「ふーっ、う、あ……」

「すぐ終わらせる」


 昴は美月の身体に覆いかぶさり、枕にしがみついている手を自身の手で握りしめた。ぴったりと肌を重ねたまま腰だけを動かす。短い周期の浅いピストンも彼女にはお気に召したようだ。枕のせいでくぐもってはいるが、声が聞こえる。


「あ、出る……っ」


 2回目とは思えないほどの濃い精液を吐き出した。美月から引き抜き、身体を離すと彼女はこちらに向き直った。恥ずかしそうで、しかし満足気な表情をしている彼女は昴と目が合うと微笑んだ。

 昴の額の汗が美月のこめかみに滑り落ち、そこにあった彼女の汗と重なる。互いの汗が混ざり、ひとつの水滴が生まれて肌からこぼれおちた。その光景をぼうっと見ていると、下から肩をぺちっと叩かれる。


「お風呂、入ろ?」

「そうだな……」


 エアコンが効いているとは思えないほどに汗をかいたふたりは、風呂場へ向かった。

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