第7話
この日もふたりは小さな飲み会を開催していた。カクテル作りにハマった昴は美月に酒を振る舞う。本日はスクリュードライバー。ウォッカのオレンジジュース割だ。その飲みやすさからか、レディーキラーと呼ばれている。勿論、昴には彼女を酔わせて酔わせて無抵抗になるまで酔わせてやろうなどという気はない。そもそもスクリュードライバーは美月からのリクエストである。
ある程度酒が進むと、部屋に甘い空気が漂う。そういうこと、である。いつも通り、いやいつも以上に昴は酒の力を借りた。ビールに加えてカクテルも飲んでいるので、普段よりアルコールが身体に回っている。
「今日、俺の上乗ってみません?」
「えっ……それは、所謂、き、騎乗位……?」
「そうっす。松本さんに動いてほしいな〜」
下から目線で可愛こぶるように昴はお願い、と手を合わせると、全く可愛くないぞ、という言葉と共に冷ややかな視線が送られる。そこそこ筋肉質な男にねだられても可愛くはないだろう。しかしそれにしても冷たい目つきだ。初めて飲んだ日と今ではまるで別人のような表情を見せる彼女に嬉しいやら悲しいやら、複雑な気持ちにさせられた。
美月と幾度も身体を重ねた昴は、少しの冒険をしたくなっていた。正常位以外の体位をしたことがなかったから、という理由もある。
なんとなく、憧れのようなものを持っていた。ロマンと言ってもいいのかもしれない。男が動くことが一般的な性行為において、騎乗位は数少ない女性が積極的に動く必要がある体位だ。昴の腹の上で欲望のままに動く美月を下から眺めてみたいと思った。体重をかけられたとしても美月は小柄な上、昴に筋肉がそれなりにあるので問題はないだろう。彼女の体力が持つかどうか以外の心配はない。学力面ではトップクラスだが、運動神経は中の下の彼女。その体躯では苦手であっても頷ける。
「ん……まぁ、いいよ」
「え、マジすか?」
嫌がるかと思い、言いくるめるための言葉を準備していた昴は拍子抜けした。必要のない用意だったか。酒を飲ませると何でも言うことを聞いてくれるのかもしれない。あれやこれやと良からぬ妄想をひとり繰り広げた。
美月は鼻の下を伸ばす昴を見、怪訝そうな表情を作る。その顔は一瞬で崩れ、いつも通りの彼女に戻った。そして、昴が飲み干したビール缶の縁に指を滑らせながら呟く。
「……ちょっと、やってみたかったんだよね。実は」
「意外……松本さんって結構、積極的というか……んぐ!?」
思い切り頬を横に伸ばされ、喋れなくされた。これ以上は言うな、ということなのだろう。美月を見ると顔から耳まで赤く染っていた。
「そういうこと言うなら、やんないからね!」
昴にしてみれば事実を言った迄である。性行為に積極的な美少女、それが昴の中での美月に対する印象だ。が、彼女にとっては恥ずかしいことなのだろう。照れている姿も可愛らしい。つい口元を緩ませると睨まれた。馬鹿にされたと勘違いしているようだ。
「ごめんごめん」
雑に謝りながら昴は美月のブラウスのボタンに手をかける。上から順に外していくと、ふたつの小さな果実が繊細な刺繍で飾られた桃色の布に覆われていた。果実の円弧はうっすらとぶつかり合って縦にひとつ、線が入っている。果実に見蕩れながら濃紺のブラウスを脱がし、後ろに手を回して下着のホックを外す。覆われていた果実が昴の目に飛び込んだ。小さくも、柔らかく、しかし弾力のあるふくらみや触ってほしそうに固く尖った先端。今は昴だけのものだ。何度身体を重ね合っても彼女を見慣れる日は来なさそうだ。いつもこのタイミングで昴の準備は整ってしまう。そしてそれに気付いた彼女はとろけた目つきで昴に優しく触れる。温かい手が身体に馴染んで心地よい。
しかし今日はいつもと違った。昴に触れたと思ったらそのまま彼女はチノパンのファスナーを下ろし始めた。晒された昴の下半身を見ながら、彼女は口に溜めていた唾液で昴のものを柔らかな口内に含み、優しく包み込む。咥えながら根元を掴んだり、周辺を手でゆっくりと撫で回す。舌の這わせ方は初めて食べられたときより明らかに昴好みになっている。何なら昴の想像を超える欲求を満たしてくれた。裏筋に口付けを落とすなど、昴の妄想の中の彼女ですらしないことだ。目の前の美月はじゅるじゅる、じゅぽじゅぽと音を立てながら昴の肉棒を口でしごいている。
昴の好きなところばかり触れるのに、根元を掴まれているせいか吐精できない。
「あ、松本……さん……」
「んむっ……!?」
根元を掴んでいた手が緩んだ瞬間、美月の口内に精子を注いだ。慌てて美月の口から肉棒を引き抜くが、どくどくと溢れ出す液は止まることを知らない。どろっとした白濁液が昴のすべてを受け止めた彼女の頬を伝った。口元には縮れた毛がついている。彼女は精液が零れないように両手を合わせて器状にし、顎の下に添えた。
「……ごめん、汚いから吐き出してください!」
「ん〜?」
昴が吐き出すための袋を取りに行こうと立ち上がったとき、美月の顔は天井を向いた。喉がごきゅ、と音を立てる。そして驚く昴に顔を見せながら舌を出してだらしなく笑った。口内にへばりついた液が間接照明の光で鈍く照らされる。その笑顔はとても無邪気で可愛らしく、しかし妖艶だった。
「えへへ、飲んじゃった」
「……」
そして、指についた精液を舌で舐め取る。煽るような仕草や、こちらを見る目つきに昴はまた胸が高まった。
普段ならここで美月を押し倒すところだが、今日は彼女が昴の身体に跨った。昴の下腹部に乗った彼女は前後に腰を動かし、昴を誘惑するように肌を撫でる。普段は受け身な彼女が初めて見せる姿に、昴は全身が火照る感覚に襲われた。出したばかりだというのにまた勃起する。
そんな昴を見て、美月は満足気に微笑んだ。
「またおっきくなったねぇ」
「うるさ……」
「ん〜?」
美月は腰の動きを止め、昴の上半身に自身の上半身をぴたりと重ね合わせる。思わず目を瞑ると、耳が生暖かい感触に襲われた。ねっとり柔らかい舌が昴の耳を侵食する。外側から内側へ、耳の中へ。緩やかな動きに昴は興奮し、思わず腰が跳ねる。
「どこで、こんなの覚えたんすか……」
「藍田くんの真似、してるだけ、だよ?」
耳元で小さく囁かれ、昴は思わず呻いた。吐息混じりの甘く優しい声は昴を更に興奮させるのだ。
美月は身体を起こすと昴の肉棒を見つめる。先端からは透明の汁がじわりと溢れ出し、限界を示している。今までリードする立場だった昴が今は彼女に負かされているのだ。
そんな彼女は今、つやめく汁を指にとって昴の肉棒の裏筋に塗りたくっている。その動きにいつもの小動物らしさは欠片もない。昴は無意識に腰を振っていた。その姿を見て彼女は目を細め口角を上げる。
「入れたそうだねぇ?」
「はい……」
ちょっと待ってね、と言うと美月はベッド脇のテーブルに置かれたコンドームを開ける。先程の態度から打って変わって、ぎこちない手つきに昴は愛おしさを感じた。今までは昴が扱っていたので、彼女は今日が初めてなのだ。破けないよう中身を片側に寄せて封を切った。先端の膨らみを指で摘み空気を抜きながら滑らせるように肉棒に装着する。
無事、昴のものにつけられた彼女はじわり、じわりと身体を動かし肉棒に近づく。そして右手で昴のそれを優しく掴み、彼女は上体を持ち上げた。花園の入口に肉棒をあてがうと、そのまま腰をゆっくり下ろす。いつの間にか濡れていた花園を肉棒が侵入する。全てを呑み込んだ美月は昴の上でゆっくりと前後に腰を動かし始める。
ふっ、ふっ、と小さく息を漏らしながら彼女は彼女の好む位置に肉棒を当てていた。
「んッ……藍田、くんッ……気持ち、いいッ……?」
「とても……」
気持ちいいのは勿論のこと、いつも昴に攻められてばかりの美月に屈している状況というのが良いのだ。やや屈辱的で、しかし不思議と快い。不思議な感覚である。
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