アフロの中には
おじさん(物書きの)
あらがう者たち
『次はお前だ』
携帯電話からのたった一言で筋肉が強張るのがわかる。
「まさか、お前は……」
『あぁオレだよ』
「……ウシオは、ウシオはどうしたっ!」
『ウシオ? あぁこいつか』
暴行のためか低くうめく声がする。
『……トラオ、逃げろ! ……ぅぐ』
「ウシオ!」
『ふん、ホントお前らは丈夫だよな。まぁいい、近いうちにそっち行くから。あぁ、逃げられると思うなよ』
そう吐き捨てると、ヤツは一方的に通話を終わらせた。
無意識に握り締めていた携帯電話がミシリパキリと嫌な音を立ててその手からこぼれ落ちた。
ついにこの時が来たのだと喜びにも似た震えが全身に走るのを感じる。
ヤツとの因縁がいつからあるのかは俺は知らない。綿々と続く純粋な恐怖。俺のじいさんもヤツに殺された。いや、じいさんだけじゃない、俺たち一族はヤツに殺され続けている。
遠い昔、一族は人々から奇異と畏怖の目に晒されていた。見た目が少し違うだけでだ。俺たちが何かした訳じゃない。外見が違うというだけでなぜこんなにも辛い思いをしなければならなかったのか。
確かに、身体的には恵まれていた。力も強かったし、疫病にも罹らなかったそうだ。かといって暴力的ではなかったし、どちらかというと物静かな一族と言える。問題は見た目、それだけだ。
一族はアフロヘアーでそれを隠し、各地に身を潜めた。それでもヤツは一族を探し出し、財産を奪い、殺し歩いている。
俺は恵まれた身体を活かし、あらゆる格闘技を身につけてヤツを倒す事を目標に生きてきた。年が近いウシオも俺と志を同じくしていたが、もう俺しかいない、俺がこの因縁を断ち切るのだ。
この日がやってきた。ヤツと対峙するだけで恐怖が全身を支配する。一族の血がヤツは危険だと言うのだろう。しかし逃げるわけにはいかない。ヤツと戦うのが俺の運命だ。そして今日、すべてを終わらせる。
「――桃太郎おおおおおおおおお!!!」
アフロの中には おじさん(物書きの) @odisan_k_k
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