オバチャン集団、街の外へ

「はー、ギルド内での揉め事は禁止だと伝えたはずなんだがなぁ?」


ギルド長が頭を掻きながら、縛られた男達を見下ろしている。男達はベソベソと泣いて洗いざらい喋ったあとだ。


「アタシ達は何もしてないわよぉ?」

「そうそう。その人達がなにやら周りで喋ってただけで…ねぇ?」

「ウチが移動するの邪魔したから注意してやっただけで手は出してねーよ」

「後ろからイキナリ襲われて危なかったから、軽く拘束してちょっとだけ素直になってもらっただけですよ」


人の多い時間帯だったので、野次馬に囲まれている。皆の顔が引きつって見えるのは気のせいかしら。


「あー、お前たちに非が無いのはわかるが…いや、流石…といったところか」


なにやら言っているが、最後の方は独り言なのか声が小さくて聞こえなかった。

とりあえず、男達はギルドにお任せして、依頼のために街の外へ出る事にした。

もちろん、買い物も忘れずに。


『では、街道の整備と魔物退治から片付けましょう〜』

「「「「はーい」」」」


街道整備とは。

街道は土を踏み固めて作られているが、時折穴があく。理由は様々だが、このままにしておくと馬車が脱輪して事故を起こす原因になるので、土魔法で埋めていく。後は柵が壊れていたり、落ちたゴミを拾ったりする。整備範囲は決まっていて、街道を北へ進んだ最初の野営地までが今回の仕事の範囲だ。

ワタシ達は、野営地へ向かいつつ街道の整備と魔物退治をし、野営地で一泊して周辺の森の中で薬草採取をしてから街へ帰る事になる。


街道に落ちたゴミは、ゴミ専用の袋へ入れていく。コレも空間魔法が付与されていて見た目以上に入るようになっている。ゴミには様々なものがあって、紙くず・串・木の枝なんかはもちろん、使い捨てられた魔道具や割れた魔石。折れた武器に壊れた防具もある。


作業しながら歩いていると、色んな人とすれ違う。すると、目の前の馬車からゴミが捨てられた。やれやれ…と思っていると、サティが素早く拾って馬車を追いかけた。

慌てて付いていくと、少し先で馬車を止めたサティが大声で説教をかましていた。


「あんた達ねぇ!道端にゴミを捨てるなんて親からどういう教育されてんの?!」

「はぁ…」

「はぁ、じゃないの!いい?1人が捨てるゴミは小さなものかも知れないけれどね、捨てる人数が多くなったらどうなるかわかるわよね?あっという間にごみの山よ!そ・れ・に!ゴミには害獣や害虫がたかってくるし、臭いの元にもなるの!ゴミは分別して、リサイクル出来るものと分けて捨てるのが常識よっ!ほら!ボサッとしてないでさっさと持ち帰りなさい!」

「えっ、いやこういうのは冒険者の仕事だし…」

「なーに言ってるの!誰かの仕事だからって捨てていいわけないじゃない。捨てるバカが多いから仕事になってるだけでしょう?仕事なんてね、世の中には山のようにあるのよっ!ゴミ拾い一つ無くなったところで何も困らないの!わかる?ゴミはね、万病の元なのよ?!まず適切に捨てる事を覚えなさいっ!」


そう言って、ゴミを馬車の中へ放り込む。「ぎゃっ!」と声がしていたが、自分で捨てたゴミなんだから何の問題もないだろう。

一通り説教し終えたサティが戻ってくる。


「ほんとにもう…近所のアパートにもゴミを適当に捨てていく大学生が居てね?この間も分別しないでゴミ捨てようとしてたから、ちゃんとやれ!ってゴミ捨て場の掃除までやらせちゃったわぁ〜」

「うーわ、サティさん流石すぎる」

「うち(病院)は出るゴミ殆ど産業廃棄物になるし、使用済みの針とか血液の付いた脱脂綿とかあるから気を使うのよね〜。私も若い頃、ごみの分別で苦労したわ」

「ウチ、メンドウだから適当にコンビニで捨ててる」

「こら!駄目じゃない、そんな事しちゃ!家庭ゴミは持ち込み禁止なのよ?今度分別しやすい捨て方教えてあげるわよ!」

「えー。メンドイよ〜」

「だめだめ!ちゃんとやるのよ?」

「ヤブヘビった〜〜〜」


近所のゴミ捨て場は各家庭持ち回りで清掃をして綺麗に保っているのだ。そうしないと悪臭の元になるし、カラスはゴミを漁るし、ネズミや黒光りするアイツの温床になりかねない。ゴミ捨て場だけで済めば良いけど、近隣のお宅にも出現しだすから厄介だったりする。

最近は自治会へ入らない家庭も増えたが、自治会がそうやって維持管理しているモノの恩恵だけちゃっかり受取る姿勢は、そりゃ好まれないよね。こちらの労力にタダ乗りする人には優しくなんて出来ないのだ。


『みなさーん!目的地が見えてきましたよ!』

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