オバチャン集団、絡まれる

宿に戻ると、まだ他のメンバーは帰っていなかった。なので早速魔導具を作る。


(無くしちゃ困るけど、常に持ってるか確認するのも面倒なのよね。盗難と落下防止機能は欲しいし…あとはお守りかしら。襲われたら防御魔法が展開するのがいいわね。防水と防火もつけて、お金を収納出来るように空間魔法を付与したポケットも付けよう)


魔道具は魔石と呼ばれる、魔物の体内で生成される魔力が結晶化したものだ。魔道具が複雑になるほど使用する魔石は大きくて純度が高くなる。

ワタシが作ろうとしているものだと大きな魔石が必要だが、そこは創造魔法の出番だ。手にあるのは8ミリ程の魔石。このサイズで出来るのはロウソクくらいの大きさの火を出す程度だ。その魔石に自分の魔力を慎重に注いでいく。通常、魔石にキャパ以上の魔力を注ぐと割れてしまうが、手元の魔石は割れていない。空気を圧縮するように魔力を圧縮して詰め込んでいるのだ。しばらくすると赤黒かった魔石が虹色に変化した。圧縮魔石の完成である。


革のケースには先に作っていた銀細工を貼り付けてある。四隅の補強を兼ねていて蔦の模様の細工だ。ケースの前面は透明になっていて中に入ったカードが見えるようにしてある。裏面には蓋付きポケットを付けた。蓋の部分に銀の装飾を施す。そこに魔石をはめ込んで魔法を付与していけば完成となる。

今回使うのは、空間魔法・GPS機能・防火防水・盗難防止・落下防止・防御魔法だ。圧縮魔石なら余裕で魔法を付与できた。余裕がありすぎて他にもいろいろ盛ったのは秘密。


人数分のケースを造り終える頃、3人も戻ってきた。何をしていたか話しながら夕食をとってから部屋へ集まってリュカを喚んだ。


『みなさん、自由行動は楽しめましたか〜?明日の予定をお伝えしますね〜。

朝食後、冒険者ギルドにて依頼を受けて街の外へ向かいます。依頼をこなしながら一晩街の外で過ごし、翌日のお昼頃に街へ戻る予定です〜。

なので、明日の夕食と明後日の朝食は断っておいて下さいね〜。』

「街の外でキャンプって事かしら?キャンプ用の食材とか買わないと…」

『その辺に関しては、現地調達するので心配はいりませんよ〜。飲み物やお菓子類は各自でご用意下さい〜』

「「「「はーい」」」」


翌朝、太陽が完全に顔を出す頃。ワタシ達は冒険者ギルドの前にいた。この時間のギルドは冒険者でごった返している。特に掲示板の前はすごい人だ。バーゲンセールで鍛えた私達なら問題なく前まで行けると思うが、リュカが選んでくると言うので飲食スペースでコーヒー(ここではカッフィと呼ばれている)を飲んで待つことにした。

暫く待つとリュカが掲示板から数枚の依頼を持ってきた。薬草採取・魔物退治・街道整備の3つだ。


依頼書の確認をしていると、数人の男達がニヤニヤしながらコチラへやってきた。


「おいおいおい、依頼を選ぶのも精霊任せってホントに冒険者かぁ?」

「お綺麗な格好しちゃって…お嬢さん達、パパとママのおつかいでちゅか〜〜??」


ギャハハと下品に笑っている。何がしたいんだコイツら…と、3人を見ると完全に呆れた顔をしてる。


「オッサン達なんか用?ウチら忙しいんだけど」

「やだぁ〜ナンパはお断りよぉ〜」

「なっ?!おま…」

「も〜、サティったらこんな時間からナンパするような暇人いるわけないじゃな〜い」

「それな〜(笑)」

「んだと?コ…」

「あら、この豆菓子美味しいわね。買っていこうかしら?」

「リュックの中にまだあるから、分けましょうか?」

「おい!きいてん…」

「うぅん、他にも種類があるなら選びたいからどこで買ったか教えてくれる?街を出る前に買いにいきたいわ」

「そうね、ついでにお酒とか買っちゃう?」

「さんせ〜〜」


あらま、さっきの男達真っ赤になってプルプルしてるわ。可哀想に。そんな男達を無視して立ち上がる。すると、男の1人がアーヤの目の前に立ち塞がった。


「何だよ。邪魔すんな雑魚が」

「はぁ?!チョーシに乗ってんじゃね〜ぞ?俺様達は銀ランクパーティだぞ?逆らったらどうなるかわかってんだろうなぁ…あぁ?!」


男達が凄んでくる。しかし元ヤンなアーヤは怯むどころか更に煽る。


「しらねーよお前らの事なんか。女ばっかの集団にデカい顔してっけど、自分より弱そうに見えっから余裕こいてんだろ?そんな雑魚相手してられっかよ」

「んだとぉ?!」


まー、顔が赤から赤黒くなっちゃってるわ。血管切れないのかしらね?サシャとシラユキは飲み終わったカップを片付けたり机を拭いたりしている。リュカは受付の方へ飛んで貰ったのでそのうちスタッフも来るだろう。

こういう場所は大抵揉め事禁止なはず。

しかし、アーヤも今はだいぶ落ち着いたけど、昔は目が合うだけで殴りかかるくらいの荒れっぷりだった。いつ乱闘が始まるかわからない程、相手のボルテージは上がっているようなのでサクッと拘束させてもらうことにした。


指をパチンと鳴らすと、彼らの足元から頑丈な蔦が伸びてあっという間に男達を拘束する。あっ、アーヤったらドサクサに紛れて腕をつかんだ男の急所蹴り上げてるわ。


フーっと息を付いていると、後ろでバチンッと音がした。振り返ると男が1人引っくり返っている。この男達の仲間のようだ。ワタシを襲おうとして防御魔法に弾かれたんだな。ちゃんと機能してることを確認できたのでホクホク顔になってしまった。


忘れずこの男も拘束すると、奥からドスドスとすごい勢いで向かってくる足音が聞こえた。

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