オバチャン集団、冒険者になる・前編
本を読んで、知識やスキルを獲得する。
ちなみに、何故スキルだとわかるのか?と疑問に思うかもしれないが、最初に本を読んで知識を得ていた私には錬金術を覚えたことで「完全鑑定」という、見たものの鑑定をすることが出来るようになったからだ。
見え方はこうだ。
◯基本情報◯
氏名:(神崎真悠) 年齢:45歳
職:魔導士 種族:ハイエルフ
◯ステータス◯
体力:充実
魔力:無限大
気力:いい感じ
身体異常:なし
◯スキル◯
短剣・創造魔法・魔導知識・薬草知識・錬金術・世界知識・完全鑑定
◯称号・加護◯
異世界からの旅行者・創造神の加護
もっと細かく見ることも出来るけど、プライバシーは守らないとね。名前が括弧なのは何故なんだろう?加護とか称号も…ゲーム内では何かしらの恩恵があったりしたけど、良くわからないな。
ちなみに、高橋さんの人物鑑定では、病院のカルテのような項目が並ぶらしい。流石の看護師長である。
裏庭で魔法を試していると、スマホが鳴った。またメッセージが来たようだ。
《異世界生活二日目です。
昨晩は良く眠れましたでしょうか?本日の予定表をお送りいたします。日程表はアプリでもご確認いただけますのでご活用下さい。
◆本日の予定表
朝食
ゴルの丘にて案内人と合流。
ジョブ・スキル等の獲得。
冒険者ギルドにて冒険者登録を行う。
昼食
依頼を遂行
夕食
自由行動
就寝
※ゴルの丘は地図にてご確認下さい。
※案内人からお声がけしますので到着後はそのままお待ち下さい》
「あら、先にやっちゃったわ」
「いいんじゃない?特に困らないっしょー」
「本を読むだけなんだから、先にやっても構いやしないわよ。それより、ゴルフの丘?へ行かないと。」
「佐藤さん、ゴルの丘だよ。ウチはこのまま出掛けられるけど皆さんダイジョウブ?」
「ワタシは大丈夫。お二人は?」
「私も大丈夫よ」
「アタシちょっとお手洗い行ってくるわ!」
「んじゃ、ウチはタバコ休憩〜」
ゴルの丘。街のハズレにあり、近隣住民の憩いの場。丘の上には精霊樹が植えられており、魔素の濃い日には精霊たちの姿を視ることが出来る。デートスポットでもある。
ガイドブックを読みながら丘を目指す。やっぱり屋台を覗きながらなので歩みは遅い。お煎餅のようなものをバリバリと食べながらようやく丘まで辿り着いた。
丘にはチラホラとピクニックする家族や恋人達がいる。私たちは精霊樹を目指して丘を登っていった。
「気持ちいい風だわぁ〜」
「ねぇ、さっき買ったお菓子美味しいわよ!」
「あー、タバコ吸いたい」
「あらっ、あの子達こんなところで…」
「まーっ!大胆!」
「ちょっとタバコ吸ってきていい?案内人来たら呼んでー」
「あっ危ない!あの子派手に転んだわね。大丈夫かしら…ちょっと診てくるわね」
「真悠ちゃん、これ材料なにかしらね?」
こんな調子で精霊樹の下で寛いでいると上の方から声が聞こえてきた。
『あのぉ〜、異世界からの旅行者さんですかぁ?』
「はいー…って、どこかしら?」
『ここですぅ〜、今そちらへ降りますねぇ〜』
上からガサガサッと音がして、バスケットボール大の光が降ってきた。
ビックリしながら光を眺めていると、丸い光が人の形になってきた。
薄緑のフワフワとした髪に深緑の瞳、白いワンピース。背中には光る蝶の羽。
『初めまして。案内人のリュカといいます。よろしくお願いします!』
「えっ、あぁ、よろしく…」
「あらま、ずいぶんと小さな案内人さんねぇ」
「あらー!これホンモノ??まーっ、すごいわ!!」
「うわ、虫(こら!)」
『それでは、これから冒険者登録をしに冒険者ギルドへ行きますねぇ〜。』
「「「「はーい」」」」
妖精が街の中をウロウロしていいのか?と思ったら、珍しくはあるけど騒ぐほどではないらしい。「わぁ!妖精さん!」「あら、珍しいわね〜」くらいの反応だ。
冒険者ギルドは中央広場沿いに建っている。かなり大きな石造りの建物だ。入口は大きく開かれていて、冒険者たちが出入りしている。中へ入ると、左手は食堂のようになっていて右手にはカウンターと掲示板がある。カウンター横は階段だ。
椅子に座って談笑する人達、掲示板を熱心に眺める人達…なかなか活気のある場所だ。
リュカに先導されて、カウンターへ。カウンターには女性が2人座っている。こちらに気付くとニコっと笑ってくれた。
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