オバチャン集団、スキルを得る

屋台飯を堪能し、宿に戻って翌日の予定を決める。いつもなら数時間はお喋りするが、流石に異世界へ飛ばされてからのアレコレだったので、皆も早めに就寝となった。

早朝、日が昇り始めた頃に目を覚ます。木村さんはまだ寝てるので、起こさないように身支度を整えてから荷物に入っていた本を読む。


冒険者の手引・魔法大全・極めよ錬金術・世界の薬草・これさえ読めば安心!戦闘基礎編・世界の常識非常識

…なんとも言えないラインナップである。冒険者の手引は一旦置いといて、他の本を読もう。まずは魔法大全から。

1ページ目には「今日からアナタも伝説級魔道士!」と大きく書いてあった。どうにも胡散臭いが、読み進めていく。ペラペラと捲るだけで内容が頭に入っていく。5分ほどで読み終わったが中身はちゃんと記憶できている。

(こんなに速読得意だったかしら…中身も覚えていられるなんて。これも異世界だから?子供の時にこの能力ほしかったわぁ)

そんな事を思いつつ、他の本も同じように読んでいった。


読み終わると試したくなるのがニンゲンってやつだ。裏庭へ出て、早速魔法から使ってみる。

(えーと、まずは深呼吸して…魔素を感じるんだったよね)

大きく深呼吸をする。朝のヒンヤリした空気が肺に入って気持ちがいい。何度か深呼吸をしているとフワフワとしたものが漂っているのを感じた。同時に、身体の中にグルグルと何かが巡りだしたのも感じることが出来た。

(お、これが魔素と魔力ね。次は…魔力を手のひらに集まるように動かす。うーんこうかなぁ?)

身体の中でグルグルとしているものを手のひらへ集まるよう意識してみる。ホースから水が出るように…と念じてたら、グルグルと巡っていた魔力が腕を通って手のひらに集まり、水が出てきた。

(うわっ、水が出た!!!えっ、なにこれ!魔法?!やだ、どうやって止めるの〜〜????)

ホースから水と想像したせいか、手のひらからジョボジョボと結構な勢いで水が出ている。焦って手を振るが止まらない。

(ホースの水なら蛇口をひねれば止まるのに!)

と、心の中で叫ぶと水がピタリと止まった。想像が大事なようだ。何となくコツがわかったので、指先から水鉄砲のように出してみたり、手のひらに水の塊を出してみたり、色々と試した。


「真悠姉、散歩でもしてきたの?」


部屋に戻ると、木村さんも起きていてベッドでスマホを見ながらゴロゴロとしていた。

メイクはしっかり終わっているのは流石だ。佐藤さんと高橋さんも支度を終えていたので、4人で食堂へ向かう。

日本での感覚だと、まだ起きたばかりの宿泊客が浴衣姿で朝食を摂っている頃だとおもったが、異世界の人はもう働き始める時刻らしい。旅の準備を済ませた冒険者達がボリューミーな朝食を食べていた。

「朝から食べるのムリ〜」な木村さんは、フレッシュジュースを。他のメンバーはパンとベーコンエッグとサラダのセットを食べる。

店の人が「それじゃ後から腹が減るだろ?」と、サンドイッチを紙で包んで持たせてくれた。


朝食後に部屋へ戻ると、今朝の話をする。


「えっ、真悠姉すごいじゃん!ウチも本読めばつかえるんかな?何が入ってたっけ…」

「あら、アタシのはちょっと違うみたい。高橋さんは?」

「私も違う本が入ってるわ。なんだか、それぞれの得意なものが選んであるみたいね」


本を読んだ結果、簡単な魔法は皆が使えることがわかった。

佐藤さんは戦士。一通りの武器が扱えて、索敵・敵情報取得・戦略立案のスキルを得た。

高橋さんは白魔道士。怪我や病気を治したり敵の弱体化や味方の強化をする。人物鑑定・悪意察知・結界・医術知識のスキルを得た。

木村さんは拳士。高い身体能力を持ち、体術と棒術で敵を倒す。急所看破・威圧・口八丁手八丁・罠知識・魔導具知識のスキルを得た。

ワタシは魔導士。魔法全般を得意とする。短剣での戦闘も可。創造魔法・薬草知識・錬金術・世界知識・完全鑑定のスキルを得た。


何ともバランスの良いパーティである。

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