オバチャン集団、屋台飯を堪能
財布の中身を確認する。何種類かの小銭が入っているようだ。貨幣の種類がわからないので冒険者の手引を読む。
一番安いのが銅貨。それから半銀・銀・小金板・大金板・金貨・大金貨となるらしい。
一般的に多く流通しているのは小金板まで。それ以上は大商会や貴族など、大金を持つ人達が扱う貨幣になる。
お財布の中も銅貨と銀貨が大半だった。
物価は屋台飯が銅貨5枚ほど。野菜や果物も銅貨3枚〜が殆ど。手に入りにくいものや魔物素材は半銀貨1枚〜。小金板3枚で、家族5人が一ヶ月生活できるらしい。
「なるほど、とりあえず銅貨があれば買い物は出来るね。半金板とかあるし分けられるように小袋が欲しいな。」
「そうねぇ。外国だとスリや強盗もいるだろうし。」
「そのまえに宿探そうよ。イキナリ野宿はハードじゃね?」
「それもそうね。ガイドブックに何か書いてないかしら?」
高橋さんがガイドブックをペラペラとめくり、皆でそれを覗き込む。
ページをめくっていると《おすすめの宿5選》という文字を見つけた。その中から安くて安全そうな宿を選ぶ。アプリにナビがついていたので、宿の名前を入れてまずは宿の確保をすることにした。
最初こそ皆慎重に歩いていたけど、そのうちにいつもの調子でペチャクチャと話し始める。
「ねぇ、あそこに飾ってある家具素敵ねぇ!ウチは畳だから置けないけど」
「ほんと、素敵ねぇ〜。うちみたいなアパートには似合わないけど」
「「あっはっはっはっは!!!」」
「あっ、あれタバコ?ちょっと買ってきていい?」
「いってらっしゃい、あら?あのドライフルーツ美味しそうねぇ。ちょっと買ってくるわ!」
「まって!私も行くわ!」
そんな感じで寄り道するので、宿につくまで随分時間がかかってしまった。幸い部屋はまだ空いていたので2人一部屋で泊まることにした。お風呂やシャワーは無いのがデフォルトで、大抵の人は水やお湯で濡らしたタオルで身体を拭くか、魔法でキレイにするらしい。
宿にはキレイにする魔法を使う専門の人がいて追加料金でやってくれる。もちろん頼んだし、4人でわーきゃー騒いで変な顔をされた。
泊まる場所を確保したので、改めて屋台へ出かける。夕飯は屋台で済ませる予定だ。
空を見ると夕方に近いようで、仕事帰り風の人々が街を歩いていた。
オバチャンは集まると大声になる生物なのだが、流石にその辺は自覚しているので大声にならないように気をつけながらペチャクチャお喋りをしている。
「ねぇ、あの人なんで方に甲羅乗せてるのかしら…流行りなの?」
「あれ肩当てって防具だよ。何で甲羅かは知らないけど、映画で見たやつは金属だったはず」
「あらー、あの人のスカート素敵よ。なんの生地かしら?サテンのようなシルクのような…」
「やだ!あの女の子あんな水着みたいな服で…お腹冷やさないのかしら?」
「ちょっとちょっと!なんかライオンみたいなのがいる!!なにあれ!!キグルミ?!」
「獣人族って種族みたい。完全に獣の見た目をしてたり、人間に耳や尻尾が生えた見た目してる人がいるって書いてあるね」
「やべー…漫画とかアニメの世界じゃん」
「いやーっ!あの人すごいイケメン!!!」
「ほんと!ハリウッドスターみたい!!!」
そんなこんなで屋台村に到着した。中央にテーブルと椅子が設置してある。まだ座席は空いていたが、これから人も増えそうだったので、いつものように1人残って座席を確保しつつ、残りのメンバーで適当に食べ物を買うことにした。
しばらくして戻ってきた3人の手には大量の食べ物とお酒があった。
まずは串焼き。魔兎肉のタレ焼きとグレートボアの塩焼き串。ココ鳥の手羽先。野菜とフルーツをクレープのような生地で巻いたトゥーテルという食べ物。
揚げたポテトに太めのウィンナー。そしてワイン。
魔兎肉のタレ焼きは柔らかいのに弾力があって中から肉汁が溢れてきた。グレートボアの塩焼きは、塩加減が絶妙でスパイシーだ。すこしクセのある肉だがこれも柔らかくて美味しかった。
ココ鳥の手羽先は、ニワトリの手羽先と同じ。トゥーテルはフルーツの甘さと野菜が絶妙なバランスで、口の中にさっぱりとした甘みが広がった。ワインはぬるめだったけど、これも他の食事と良くあっていた。
最後に、レモンに似たサンの実のシャーベットを食べて口の中をサッパリさせて、大満足な夕餉だった。
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