第24話 龍に捧ぐ舞
それから数日。
夜も遅くに私とシュナさんは龍舞村の神社にやって来ました。
たくさんの
おまけに特設のステージが用意され、龍を模した像が見守りました。
「凄いですね、シュナさん」
「はい。とても迫力があります」
私とシュナさんはこれから舞が披露されると知っているので、楽しみにやって来た観光客です。
ほとんどは村の人ばかりですが、噂を聞きつけてやって来た観光客もチラホラ居ます。
如何やら私がこの村に来て以来、少しは周りにも認知してもらえたようで、邪魔にならないように、村人達が屋台を始めていました。
如何やら盛況のようです。
一丸となって開催しているのが誰の目にも映り、私も嬉しくなります。
「おや、これはこれはアクアス様にシュナ様」
「村長さん、こんばんはです」
「こんばんは」
私達は村長さんに出会いました。
何処かいつもよりも朗らかに見えますが、私は村長さんと軽く話をします。
「村長さん、舞ができて良かったですね」
「これも巫女とアクアス様のおかげにございますな」
「そんな、私は何にも」
「そう謙遜されなくても良いではないですか。現に本人はそう思っておるようです」
村長さんが首を傾け、視線の先にいる誰かを見つめます。
そこには綺麗な装束に身を包んだ少女が居ました。
しかし青紫色ではなく、赤と白を基調にし、青い水玉を龍が巻き付いているような刺繍が胸に施されていました。
「あっ、アクアス様!」
「玲奈さん。もうすっかり良くなったみたいですね。安心しました」
そこに居たのは玲奈さんです。
治ったばかりの頃は、少しやつれていましたが、この数日で元通りの可愛らしい姿に戻っていました。
私は心底心配していましたが、良くなってくれて何よりでは。
ホッと胸を撫で下ろします。
「これもアクアス様とシュナ様のおかげです。あの、今日は舞を観に来られたのですよね?」
「はい、そのつもりですよ」
私がそう答えると、シュナさんもコクコクと首を縦に振ります。
すると玲奈さんはパッと表情が明るくなりました。
如何やら嬉しいらしく、私達もにこやかに微笑みます。
「が、頑張ります。ですので、その、最後まで見ていただけますか?」
玲奈さんは少し緊張気味です。
私は頬を軽くつねりました。
すると「い、痛いです」と無理矢理笑顔を作らされて痛がっていました。
それと同時に少しはにかんでいます。
「緊張してはいけませんよ。私のことなんて考えずに、玲奈さんは玲奈さんのまま、楽しく舞を披露してください。私だけが観に来ているのではなく、ここに居る人達は玲奈さん達を観に来てくださった人達ですからね。おっと、緊張させてしまいましたか?」
私は自分で喋っていて気が付きました。
しかし玲奈さんはあまり考えていないみたいです。
私のことをジッと見つめ、頬を赤くしています。何かあるのでしょうか? 私には分かりませんが、「頑張ってください」の気持ちは伝わったはずです。
「そ、それでは行ってきます! しっかり観ててくださいね!」
「はい。少し遠目から観させていただきますね」
私は玲奈さんにそう伝えました。
それから私達の前から姿を消すと、特設の舞台の上へと上がるため準備をします。
「無事で何よりでしたね」
「はい。シュナさん、本当にありがとうございました」
「いいえ。それより今は」
「はい。彼女達の舞を観させていただきましょうか」
それから程なくして舞が始まった。
私とシュナさんは少し遠目から観させていただきました。
とっても美しい。
真剣な表情で舞に取り組む姿には華があり、私は目を奪われてしまいました。
「綺麗ですね」
「はい。これが舞」
玲奈さん達が披露する舞はまるで龍を模していました。
私は何か感銘を受け、とっても心地の良い気持ちになりました。
まるで龍が空を踊るような派手な舞。
かと思えば今度は滝のそばで休むような静かな舞。
二転三転すると舞の奥深さに、私もシュナさんも魅了されて、この村の立派な伝統だと伝わりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます