第23話 元気になってくれましたか?
あれから三日。
私とシュナさんは少し不安に苛まれています。
「はぁー」
「如何なさいましたか、アクアス様」
シュナさんはそう問いかけます。
とは言えシュナさんも気が付いているので、私は「シュナさんも分かっていますよね?」と逆に問い掛ける。
するとシュナさんは「はい」とはっきり答える。
ティーポットからティーカップへと紅茶を注ぎ込み、温かい湯気が立ちました。
「どうぞ、アクアス様」
「ありがとうございます」
私は不安ながらにティーカップを受け取ります。
今日の紅茶も美味しくて、甘い香りがして、とってもリラックスできます。
如何やら私のために調合してくれたようで、私は心から感謝しました。
「ありがとうございます、シュナさん」
「いいえ。それとアクアス様、差し支えなければ一言宜しいでしょうか?」
「はい、何でしょうか?」
私はシュナさんに許します。
するとシュナさんはこう言いました。
「きっとですが、アクアス様は間違ったことはしていません。ですので今回も上手くいきます。そう信じましょう」
あまりに漠然としていました。
しかし私はその言葉に安堵して胸を撫で下ろすと、「そうですよね」と返します。
考えても仕方ないのです。
私は今一度紅茶を飲みます。とっても美味しい。
そう思った矢先のことでした。
急にシュナさんの目の色が赤く灯り、ピクンと何かを捉えたような動きをします。
「如何しましたか、シュナさん?」
私はシュナさんに尋ねます。
するとシュナさんは朗らかな表情を浮かべます。
とは言え目元だけはいつもと変わらず無表情でした。
「シュナさん、上手く行ったようですよ」
「えっ!?」
私は椅子の上から立ちあがりました。
シュナさんがこう言うのは間違いないです。
私は嬉しくて、シュナさんと一緒に、急いで龍舞村まで行くことにしました。
支度などは必要はありません。
靴だけを履き替えて、シュナさんと一緒に、森の中の一本道をひたすらに走りました。
「シュナさん、私の聖水が上手く効いたのでしょうか?」
「おそらくですが」
「それはなりよりです。早く行きましょう!」
「はい」
私はシュナさんに抱き抱えられました。
シュナさんの足の方が私よりも断然速いです。
なのでお姫様抱っこをされたまま、龍舞村にやって来ました。
龍舞村はいつもと変わりません。
今日も長閑で平和。静かなものでした。
畑を見てみると農作業に勤しんでいる高齢のお爺さんとお婆さんが居ます。
さらには子供達が村の中を駆けています。
何も病魔に侵されていない。
そんな光景が広がる中、私達は怜那さんの元へと急行します。
早く無事な姿を拝みたいのです。
その一瞬で家へと向かうと、コンコン! と扉を叩きました。
「すみません、アクアスです。誰か居られませんか?」
コンコン! ドンドン!
激しくノックしました。
しかし返事がありません。私は怖くなります。
「何かあったのでしょうか?」
一歩離れて、腕を組みました。
もしかしたら聖水の効果がシュナさんの言うものとは別の意味で上手く……などと、嫌な予想が脳裏を渦巻きました。
とは言えそんなもの考えてはいけません。
私は自分で振り払い、もう一度ノックしよっと前に出ます。
その時でした。突然扉が開き、引き戸が開放されました。
「アクアス様?」
「玲奈さんのお母様ですね。あの、玲奈さんは?」
私は恐る恐る尋ねます。
すると玲奈さんのお母様は少しだけ顔を背けます。
私は最悪の事態を想像してしまいました。
「えっ、もしかして、私は……」
愕然としました。心が砕けそうになります。
無言ではありましたが、何かを感じ取った私は、よろけてしまいます。
しかし、次の時にはにこやかな笑みを浮かべる、玲奈さんのお母さんの顔がありました。如何いうことでしょうか?
「アクアス様?」
「えっ?」
振り返るとそこには玲奈さんの姿がありました。
しかと頬にできていた青紫色をした痣はもう影も形もありません。
とは言え少しこけてしまって元気はありませんでしてた。
「玲奈さん、大丈夫ですか?」
「はい。アクアス様達のおかげです。この通り、元気ですよ」
玲奈さんはそう言ってはくれます。
如何やら聖水の効き目は確かだったようですが、私は「まだ要安静ですよ」と念押しするのでした。
ですが無事で何よりです。
私は心から安堵しました。
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