第9話 龍舞村の袖振り舞って?
私は村長さんの家を後にしようとします。
病魔に侵されている人が居るのに、部外者が長いしてはいけないと思ったからです。
しかし村長さんは私を引き留めました。
何か話したいことがあるようです。
「アクアス様、少しお待ちくだされ」
「は、はい。なんでしょうか?」
私が振り返ると、村長さんはこう言ってくれました。
「アクアス様、実は三週間後にお祭りがあるんですよ」
「お祭りですか?」
「はい。龍舞村のお祭りの一つで、この近くにある神社で袖振り舞を行うんですよ」
「袖振り舞?」
聞いたことがない名前でした。
しかし村長さんは簡潔に教えてくれます。
「実際に見た方が早いですな。村の若い巫女が数人で舞を披露することを、この村では昔からこの村で祀る龍神様に感謝を伝える、纏ったを派手やかに使うことから、そう呼ばれるようになったんですよ」
「なるほど。それは美しいですね。是非一度見てみたいです」
私がそう言うと、村長さんはこう言ってくれます。
「でしたら、明日本番前の稽古があるので見に来ませんかの?」
「えっ、良いんですか?」
「はい。アクアス様に見て貰いたいのです」
そう言ってくれるのは嬉しかったです。
ですがそれでは神様が嫉妬してしまいます。
私はそのことを注意しましたが、村長さんは「大丈夫ですぞ」と言ってくれます。
「アクアス様はこの村を救ってくださっ方。そんな方を無碍にはできません」
「村を救った? 私がですか?」
「はい。村で流行していた病を麗しき慈悲で感慨深く治していただいたこと。皆が覚えております」
そう言えば三ヶ月ほど前にそんなこともあひました。私からしてみれば大したことはしたつもりがなかったので、ついつい忘れていました。
それにアレは病気ではなく、単純に栄養失調でした。
まさかこんな優しい村で、モンスターが暴れるとは思ってもみなかったのです。
「是非、是非来てはいただけないでしょうか?」
「分かりました。明日は是非見させていただきます」
私はそう答えます。
すると村長さんは嬉しそうに「はい、はい」と頷きます。
「それでは伝えておきます故」
「あっ、そんなことはしなくても大丈夫ですよ」
私はそこまでのことはして欲しくありません。
なので村長さんにお願いします。
「私のせいで皆さんの舞が不十分で終わってしまっては困りますので」
「そ、そうですかな?」
「はい。それでは、私はこれで失礼しますね」
そう言い残し、私は村長さんの家を後にします。
足取りは以前軽やかで、楽しさのあまり心が弾みました。
「と言うことがあったので、明日は神社の方に足を運んできますね」
「承知致しました」
シュナさんは私に頭を下げます。
屋敷に戻って来た私に、シュナさんはいつも通りです。
「そうです、シュナさん」
「はい、如何なさいましたか?」
「シュナさんも、一緒に行きませんか?」
「私もですか? 嬉しいお誘いではございますが……」
シュナさんは困った様子です。
もしかして誘っては不味かったのでしょうか?
「その、私は誘われた訳ではないのですが」
「構わないと思いますよ」
そんなことでしたか。それなら何も心配ありません。
村の人達はシュナさんにも寛容的です。
「大丈夫ですよ。それにシュナさんも少しくらいは村の人達と交流を持っても良いと思いますが?」
「私は交流していますよ」
「い、いつの間にですか!?」
私は驚いてしまいます。
しかし考えてみれば、屋敷で振る舞われる料理の数々は、シュナさんが村の人達と交流している証でした。
「私は知りませんでした」
「申し訳ないございません、アクアス様」
「如何して謝るんですか?」
私はシュナさんを悪いとは思いませんでした。
なのでシュナさんには顔を上げてもらいます。
しかしせっかく誘ったものの、残念です。
「仕方ありませんね。明日は私一人で行きましょうか」
「……」
シュナさんは何も言ってくれません。
何か言い出しにくいのか、口をつぐんでいました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます