第10話 袖振り舞と青紫
私は神社にやって来ました。
龍舞村にある神社は村にしては規模は大きく、何よりも龍神様を祀っています。
龍神様はこの村を守護してくれています。
姿を現すことはそうそうないのですが、私は常に見守っていてくれると思います。
「一度会いましたからね」
私は薄ら笑いを浮かべます。
それから神社の境内に入り、隣を見ると待合所が開いています。
如何やらこちらでやっているようです。
「少し覗いてみましょうか」
待合所の扉の開いているので、こっそり中を覗き込みます。
太鼓の音や笛の音が響き渡り、反響しているようです。
(うわぁ!)
私が覗き込むと、そこには少女が二人も居ました。
二人とも青紫色の装束を身に付けています。
不思議な色合いですが、おそらくコレがこのお祭りのイメージカラーなのでしょう。
(それにしても綺麗な青紫色ですね)
しかもそれを身に付けている少女達も、とっても可愛らしいです。
黒い髪に黒い目。この辺りには東の島国の血を持つ人達が多く流れ着いています。
その影響もあり、独特な雰囲気と色合いを持っています。
舞もとても美しい。
袖振りと評する通り、装束の袖を巧みに操り奥行きを生みます。
和を思わせる音色に合わさり、全身を使った運動。
どちらも崩れてはいけない。欠けてはいけない。
一糸乱れぬ連携に、ついつい私の目は奪われてしまいました。
「綺麗ですね。これが龍神様に送る……あれ?」
『気が付きましたか』
急に頭に声が響きます。
つい頭を抑えそうになりますが、この声を私は知っていますので、拒むことはしません。
むしろ気が付かせてくれました。
「おかしいですね。さっきまで、あんなもの……」
最初見た時には一切ありませんでした。
艶のある綺麗な肌がありました。
ですが舞を続ける傍ら、徐々に疲労感が滲み出ます。
汗が全身から吹き出します。当然です、全身運動ですから。
ですがそれに呼応して、痣が濃くなります。
しかも病魔的に苦しんでいて、少しずつ足がもたれ始めました。
指先の繊細さが嘘のように消えていきます。
硬く、鈍く、躓き、転びそうになる。
明らかにこれは異常です。私は止めに入ろうと、待合所の中に入ります。
ガラガラ!
引き戸を引きました。
すると私が入ったせいでしょうか、それとも音楽が止まったせいでしょうか、はたまた少女の一人が倒れたからでしょうか。
場が騒然とします。
「あ、アクアス様!」
「大丈夫ですか。しっかりしてください」
私は倒れた少女に寄り添いました。
顔色は悪く、息も荒い。おまけに青紫色をした痣が出たままで、意識が朦朧としていた。
「しっかりしてください、意識を保ってください! くっ、息が荒いですね。気道が狭まっていますね、如何して……急に……しかも汗が」
私はパニックになりました。
しかしそれでも冷静に分析をします。
汗が尋常じゃないのできっと発熱。
しかもこの痣はおそらく病魔の証拠。
でもこの病魔を私は知りません。一体何が起こって……
「とりあえず症状を和らげるために、コレを飲んでください」
私は聖水を飲ませました。
頭と首が痛まないよう気を付けながら飲んで貰います。
ゆっくりゆっくり飲んで貰うと、顔色が少し良くなります。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
「顔色が少し良くなりましたね。それにしてもこの青い痣は一体……」
私は少女の頬に触れてみました。
如何やらこの青は着ている装束の青らしく、もしかするとこの青が関係しているのかもしれません。
何となく私は想像し、村長さんに尋ねることにしました。
「村長さん、これは如何いうことですか!」
「アクアス様……」
村長さんは事態の深刻さを知っています。
顔色は悪く、如何やら以前から知っているようでした。
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