海動く

松木 夜鷹

二十句連作


一月七日、熱帯魚も仕事


水仙や懺悔と告解との違ひ


クレープの焼ける匂ひや残る雪


花韮のうなじに雨のふることよ


寒戻る投函口に鉄の蓋


積ん読の塔を揺るがし地虫出づ


この街は中央分離帯に薔薇


駐車場は「くるまのおうち」薔薇に雨


電柱に仙人掌くくりつけてあり


黒揚羽魔球のやうに寄りてくる


平仮名で書けばいうれい涼しげに


陸橋の上を雀と夕立と


私書箱に顔近づけてゐて涼し


台風圏ボトルのふたを右回し


梨ばかり詰まつてゐたる野菜室


金風に乗りてココアの香の届く


干す物の万国旗めく冬日和


十二月三日の音のでる積木


塗る前のぬり絵のやうな兎かな


冬雲のぶ厚き下に海動く



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海動く 松木 夜鷹 @y-matsuki

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