265

「春ちゃんの?」

 もらいもののCDを流し始めてすぐに、空がそう尋ねてきた。振り向けば、 ベッドの端に腰かけた空が、足をぶらぶらさせながら、首を傾げている。大きめの白いシャツの袖を肘が見えるまでまくり上げて、細い腕が、白い腕が、ベッドの上で体重を支えている。

「そうだよ。昨日、春が置いていったやつ」

「ふうん」

 そうなんだ、と続けて、空は天井を仰いで目を閉じる。多分、かかっている音楽に集中しようとしてるんだろう。俺も、それに倣って目を閉じる。もたれる場所がないから、床に寝転がって目を閉じる。

 ピアノの音、よりも気になるのは、CDの回転する、さあさあという軽いノイズだ。記録媒体に収められたデータを再生しているのだから、ある程度のノイズ、劣化は仕方がないとは思うが、音を聞くものに音のノイズが入ってしまうのはいかがなものだろうか。もっと別な媒体、例えばフラッシュメモリなんかに入っていれば、こんなノイズを煩わしく感じることはないのかもしれない。

 ノイズを横に置いて、流れている音に意識を向ける。ぽろぽろ鳴っているピアノと、一定のリズムを刻むパーカッション。腹に来るような低低音は、ウッドベースというやつだろうか。それとはまた別な弦楽器の音が多分二つ、鳴っている。

「ねえ、理人。このピアノの音、泣いてるみたいだね」

 空がそんなことを言うので、俺は目を開けた。空の方を向こうと思ったが、やっぱり、床の上で寝返りを打つだけにする。ベッドに腰かけた空の素足が、見える。瞬きをしても変わらず、空の足はそこにある。だからきっと目をつむってしまっても大丈夫だと信じて、俺は目をつむる。

 ピアノの音が泣いている。空の言葉を胸の底において、もう一度、CDの音に耳を澄ませる。ぽろぽろと鳴るピアノは低いところから高いところへ音をつないで、また低いところへ戻っていく。ピアノの動きを追うように、弦の鳴らす音も変わっていく。不協和音が聞こえたと思った次の瞬間、協和音へ戻っている。パーカッションのリズムはその間もずっと、一定だ。聞き取れたけれど、空の言った意味はちっとも分からなかった。ピアノの音が、泣いている?

「空の言ってること、分からない」

「そう? そうかもね、その方が理人らしいや」

 空がくすくすと笑った。何が可笑しかったのか、自分が笑われているということは分かるが、原因までは分からない。ちょっと腹が立ったので、目を開けてもまだそこに見える空の脚へ背を向けるように、 寝返りを打つ。気を抜くと、楽器の音よりもさあさあという軽いノイズの方が、どうしても耳につく。CDが、小さな銀色の円盤が回転している音。古いラジカセだから、余計に目立って聞こえるんだろうか。

 楽器の音が消える。ピアノの高い音の余韻だけが長く、残る。それも消えて、本来ならまったくの静寂がやってくるのだろうけど、軽いノイズがそれを乱してしまっている。ぷつ、ぷつと乾いたノイズがいくつか入って、ついさっき終わったばかりの曲が、もう一度始まる。あれ、と空が言うのが聞こえた。

「リピートになってる?」

 そう言う空が確かめに行けないのは分かっているから、俺は寝転がるのをやめて、立ち上がる。ベッドの枕側の壁沿い、机の横の本棚の上に置いてある、ラジカセの液晶画面をのぞき込む。1、という数字の横に、リサイクル可能な物質で作られていることを示すためのマークと似た、矢印が楕円をつくっているマークが、表示されている。多分それが、リピート再生になっているという意味なのだろう。同じところをぐるぐる、ぐるぐる、繰り返し回っているという意味。

 再生ボタンのすぐ横に「リピート」と説明の添えられたボタンがあるので、それを押す。かち、と一回押すと、矢印のマークが明滅する。かち、ともう一回押すと、マークは消えた。暗い液晶画面には、数字だけが表示されている。

「これで、次に行くと思うけど」

「ありがと、理人」

 そう言って笑った後、俺には変えられないから、と空はつぶやく。ベッドの端に腰かけて、裸足を自由にぶらぶらさせて、そこから少しも動かずに、俺が触ったラジカセを見ているようだった。そばにいると、薄い円盤が回る軽いノイズの音が、やっぱり耳につく。俺は多分、音楽鑑賞とやらには向いていないんだろうと、思う。

 理人、と俺の名前を叫ぶ、すぐ上の兄の声が聞こえた。

「呼ばれてるよ」

 壁の時計を見ると、もう七時になるところだった。今日の夕飯当番はすぐ上の兄と、上から二番目の兄だから、メニューはなんだろう。また、凝った料理が出てくるのかもしれない。大きい方の兄は、未だ、各国の料理を作ることに熱中して、凝っている。

「夕飯、かな」

「多分。今日、ちい兄とあきが当番なんだ。ちょっと、不安」

「不安? ああ、ちいちゃんのせいか」

 空はそう言って、腕組みをして目を閉じ、うーんとうなりながら天井を見あげる。眉間に皺が寄っている。何を思いだしているのか、考えているのか。おそらくちしゃの料理のことなのだろう。真っ赤なスープはトマトの味じゃなかったし、黒いソーセージは血から出来ていた。材料からして、ちしゃの作る料理は本当にこちらを驚かせるようなことが多い。

「食べれるから、大丈夫だよ」

「自分が食べないから、そういうことが言えるんだ」

「でも、理人だって出されたものは全部食べるでしょ?」

 空の問いに、一度頷く。アレルギーのあるものは別にして(家でそれが出されることはないが)、出された食事は残さず食べる、というのは小さい頃から身にしみた、習慣といって良いものだと思う。今食べたら次はいつ食べられるか分からないのに、一度一度の食事を疎かに出来るはずもなかったのだ。

「えらいね」

「どうだか」

「えらいよ」

 そう言ってやわらかく微笑むと、空は俺を手招きする。すぐそこで、ベッドの端に腰掛けている、空の前へいく。ぶかぶかのシャツ、袖をまくり上げたシャツ。そこから伸びる白い腕は、いつまでも驚くほど細いままだ。空は食が細かっただろうか、決して、そんなことはなかったと思うけど。

 空が、自分の左隣を指さす。誰も腰かけていない、空いたベッドの上を示す。俺はそれにしたがって、空が示したところへ腰掛ける。柔らかめのマットが、少し沈み込むのが分かった。隣から空の顔をのぞきこもうとすると、空の右手が俺へ伸びてくる。どうやら、少し身を乗り出した俺の頭へと、空の手は伸ばされているようだった。

 俺はじっと動きを止めて、空の手が俺へ触れるのを待つ。俺へ近づくにつれておそるおそる、動きがゆっくりになる、指先を見る。あと少し。俺は目を閉じて、ゆっくりと息を吐いた。——空の手がどこにあるのか、もう分からない。

「理人!」

 ドアが慌ただしく開く音の後に、怒鳴るように俺を呼ぶ声がする。目を開けると、あきが、中途半端に開けたドアの隙間から、顔だけ部屋の中へのぞかせて、眉間へしわを寄せている。唇も、不機嫌そうに尖っていた。

「呼んでるのに、何やってんだよ。寝ようとしてたのか」

「……別に。ごめん、呼びに来させて」

 あきへ答えながら、俺は腰かけていたベッドから立ち上がる。掛け布団が少しだけ乱れている。CDの回転する軽いノイズの音は、変わらず聞こえている。

「CD、消さねえの」

 電気代が勿体ないぞ、とあきは続けて言って、でも、俺が部屋を出ようとあきの肩を押すと、それ以上は文句を付けずに、引き下がる。不思議そうな表情だったが、説明できることもなかったので、俺も黙っていた。

 廊下に出て、ドアを閉める前に一度、部屋の中を覗く。ベッドの端へは誰も腰かけていない。誰もいない部屋に、CDを再生した音楽と、軽いノイズが響いている。

「良いんだ、これで」

 あきへ答えるためか、自分へ言い聞かせるためか、はっきりしないままで、そう口にしてみる。ドアノブを手前に引いて、音だけがある空っぽの部屋のドアを閉じた。


 津守が俺の机の上へ、茶色いビニール袋を放り投げる。ビニールがこすれるのとは別に、固いもの同士がぶつかったような音がした。

「何だよ」

「借りてたCD。長いことサンキューな」

 長いこと、という津守の言葉へ、そんな貸し借りをいつしたものかを、思い出そうと考える。ビニール袋の口を開けて、中身を取り出す。ケースに入ったCDが三つ。そのどれにも見覚えはある。

「俺、津守に貸してたっけ」

「おう。休みに入る前に借りてだから……二ヶ月ぐらいか?」

「もっと早く返せよ」

「いつでも良いぞ、って言ったのはお前」

 人差し指を俺の鼻に突きつけながら津守が言うが、俺の方はちっとも、その言葉に思い当たる節がない。CDを貸したという事実すら覚えていないのだから、当然か。

 三枚のCDは、同じアーティストのものだ。それはすぐに分かる。俺が見覚えのあるCDなんて、種類はひとつに決まっている。

「サイン入りのCD持ってるとか、お前意外とミーハー?」

 可笑しそうに聞いてくる津守へ、首を横へ振って答える。一番上のCDケースを開けると、その右側へ収まっているCDの表面には、黒いサインペンで いくつかの走り書きがしてある。何と書いてあるのか判別しづらいそれらから、目当てのひとつを見つけ、人差し指で押さえる。

「兄」

 しばしの沈黙の後「え」と津守が声をあげる。素っ頓狂なその声にそちらを向いてみれば、表情もまた面白おかしかった。目を丸くして、魚のように口をはくはく動かして、俺の指さした先と、俺の顔とを見比べている。

「あに」

「で良いと思う、扱いは」

「マジで」

「そんなしょうもない嘘はつかない」

「マジか」

「そんなに驚くことか?」

 なかなか表情を戻さない津守が面白くて、口の端に笑いが浮かぶ。こらえきれずに息だけで笑って、指をCDから離してもまだ、津守は頓狂な顔をして俺が指していたひとつのサインを見つめている。

「spring、て、本名?」

「ほとんどそんなものだ」

 それ以上を告げて良いものだろうか、迷って、口を閉ざす。禁じられたことはなかったが、だからといってむやみやたらと口に出すことははばかられる。幸いにも、津森は俺の曖昧な返事へ納得したようで、すごいな、と熱のこもった声で言い、頷き、CDケースの蓋を閉める。

「まあ、お前が音楽聴くなんて珍しいと思ったんだよ。そーいうことなら納得、納得」

「別に、自分で買ってくるんじゃないからな、兄が置いていくんだ、家族分、勝手に」

「はいはい。でも、すぐ出せるところに置いてあるんだから、聴くんだろ?」

「一応、ひととおりと」

 一通り、と、せがまれたときに。と続きかけたのをすんでのところでこらえ、口を閉ざす。せがまれたって、誰に。そう聞かれることは予想が付くが、聞かれたときのはっきりとした答えを俺は準備できない。事実は事実として曲げようもなく存在するが、それがそっくりそのまま、誰にでも通じるわけでなく、通じない可能性の方が高いと分かっているものを、敢えて準備することはいささか、徒労の感が強い。しかし本当のところ、俺はそれが通じることを望んでいるのだろうか。了解され、相手のうちに俺が見ているのと同じ像が結ばれることを、果たしてよしとしているのだろうか。否、俺は理解を望んではいない。これもまた曲げようのない事実だった。何をそうと呼ぶか、人によって差はあろうことだが、俺は俺の世界を他人が了解可能とすることを、どうにも拒んでいる。相手が友人であろうと、家族であろうと、同様に。

「——そういえば」

 黙り込んだままの俺へ不平を呟くでなく、津守がそうつぶやく。3枚のCDケースを一揃えにして、はじめそれを入れてあったビニール袋へおさめなおしている。

「もうすぐ、新譜出すんだってな」

「誰が」

「このグループだよ。265」

 ニイロクゴ、と津守は三つの数字を読み下す。俺は、学校で身についた癖だろうか、津守と同じく数字をひとつずつ読み下す。くう姉もそうだ、それもおそらく仕事のためだろう。死体の計測値を読み上げるなんて、ぞっとしないが。けい兄やちい兄や、さや姉は、すべてまとめてニヒャクロクジュウゴと読み上げる。一番合理的だろうと思われた。亜子さんは「惜しいなあ」とつぶやいた後に、一文字ずつを読み下していた。理由を尋ねれば「十の位と一の位が逆だったら、二の八乗だね」と答えて、くすくす笑った。亜子さんの思いつきにはなるほどと、見事に納得せしめられたものだったが、しかし、名付けた当人の答えがやはり一番腑に落ちる。「読み方はどうでもええねん」と春は本当にどうでも良さそうに、ピアノの弦を弄りながら、答えた。理由を尋ねれば「その数字を使うてることがね、 大切やから。読み方は何でもええよ、ほんま」とこちらへ顔も向けずに、そう答えたのだった。

「楽しみだ、お前から借りて、好きになった」

「兄に伝えておく。たぶん喜ぶ」

「おー、おー。無理して伝えなくても良いけどよ」

 まだ何かを言いかけている津守の唇が、予鈴の音を聞いてすぐさま閉ざされる。朝礼の五分前の、録音した鐘の音は、津守だけでなく教室の中の人間を動かしているようだったが、津守は特別、まずい、とでも言いたげに顔を歪めていた。CDをいれたビニール袋を、改めて俺に押しつけてくる。

「どうした」

「提出課題やってねえの思い出した」

 この時間にやろうと思ってたのに、と頭をかきながら言い、津守は自分の席へと戻っていく。とぼとぼとした歩き方になっているのは、もうすでに諦めているせいだろうか。そんなに切羽詰まっていたなら、先に課題を片付けていれば良かったのに、急いでCDを返す必要もなかったのに。ため息を吐いて、津守に手渡されたビニール袋の中をのぞく。見覚えのあるCDケースが三つ、斜めになっている。ビニール袋の口をくしゃりとまとめて、机の横に置いた鞄の中へと入れ込んだ。


 昼休み、携帯に入っていたメールにしたがって、駅前の広場に愛車を押して入る。ここで待ち合わせ、というか俺が一方的に待ちぼうけを食らわされる、という算段だった。

 残暑も厳しい折なのに、広場には影が少ない。ベンチに影を落とすはずの木の枝は、早々とやってきた台風に落とされてしまって久しかった。台風、野分。屋根瓦が飛ばないようにビニールシートで覆ったり、雨戸の上から木の板を打ちつけたり、家族総出で作業したのは、偶然にも家族の夏休みが一致したからであった。足らなかったのは、仕事に切羽詰まっていたという、そのときは大阪に居たらしい春だけだ。「残念だったねえ」と、空がその話へ相づちを打っていた。「春ちゃんが台風が好きなのに」と、風が窓を揺らす音を聞きながら、ベッドの端に腰かけた脚をぶらぶら遊ばせて、空は笑っていたのだけど、それ以上を聞き取ることはできなかった。あれもあきが、俺を呼びに来たからだったか。

 何と声に落とし込んだものか決めかねる、蝉が鳴いている。愛車の黒い塗装に触れてみると、長くは指を押いておけないほどに熱かった。額から流れ落ちてくる汗を、顎の下で拭う。日差しが、ひどく眩しい。

「暑うないん、理人」

 関西弁が聞こえた方を見る。春がバイクの側に立ち、荷物を肩に掛けて、片手を挨拶代わりにか掲げている。ひどくびっくりしたような表情で、俺をまじまじと眺めているようだった。

「黒づくめやん。夏やのに」

「……冬なら良いんだ」

「少なくとも、暑いことはないんちゃうかなあって。いっそ暖房代わり」

「それなら、今もだよ」

 言い返すと、春はすぐに、手を打って笑いながら「暑いんやん」と言う。実際、春の指摘した通りではあったので、せめてシャツの袖をまくってみる。日焼けしていない手首を露わにしてバイクに乗るのは、少し心許ないような気もしたが。

「ヘルメットあるのん?」

「学校で先輩に借りてきたのがある」

「ありゃ。そりゃ、悪いことしたなあ」

 あまりそうは聞こえないのんびりとした春の声が言った。愛車のハンドルへひっかけていた、慣れていない方のヘルメットを差し出せば、春はヘルメットのこめかみの辺りを両手で支えて、胸の前でくるり、と一周させてみせる。

「あ、そうや。寄り道ええ?」

「いいけど……どこに」

「昌浩さんとこ」

 気軽に告げられた場所は、なるほど、俺にも馴染みはある場所だった。どちらかといえば俺よりはあきの方が親しいのだし、あきよりは春の方が親しい。最上級を探し始めるときりがないからそれはこのあたりまでにしておくとしても、昌浩さん、は俺たち家族にとってよき隣人、とでもいうべき存在だ。遠くの親戚よりも近くの隣人を頼れ、という言葉にまさしくあるような隣人。それへ対比させるものを、生憎俺たちは持ち合わせてはいないのだが。

「やってるかな」

「やっとうやっとう。確認した」

「何で。まさか、電話?」

「そりゃまさかやな。モールス信号でも使うほかあらへん」

 春が可笑しそうな表情で言うので冗談とは分かるのだがこつ、こつと二回、バイクのボディを叩く。続いて、長めに間隔をとって、ツー、ツー。それからまたこつ、こつと。そうして唯一知っていモールス信号を鳴らせば、春は「学校で習わへんの」と言い、いっそう可笑しそうに首を傾ぐ。

「習わない、モールス信号とか。春は習ったの?」

「まさか。独学や、独学。ああ、でも……きっかけは慧やったかな、確か」

「けい兄?」

 出て来るのが分かっていたような、そうでもないような名前をオウム返しすれば、春は「うん」とうなずいて、ヘルメットを高くかかげる。どうやらもう、それを被ってしまおうとしているらしい。早く連れていけ、ということなのだろう。しかしその前に、春の出した名前の意味を聞きたくて、春をじ、っと見つめる。春は俺と目を合わさないまま、「だって」と言いかけて、ヘルメットをかぶろうとしていたのを、額まで下ろして止める。

「どこに居ても助けが求められるように、そのための手段は知っておくべきだ、って」

 それを説明するけい兄を、想像する。ひどく真剣なまなざしで春をのぞき込んでいるだろう。たぶん、それは夏の終わり。蝉の声がそろそろ遠くなるような頃のことだったに違いない。きっと、春がはじめて俺たちと出会った夏、のことであろうから。

 何も言わないでいれば、春が「早よう行こう、理人」と俺を促す。その声にうなずいて、バイクのスタンドを跳ね上げて、重たい車体を押す。ゆっくり前へ進み始めた車体に、変わらず体重をかけながら歩けば、春が後ろからついてくる。蝉の声がやかましいのを、思い出す。


 氷、の小さなのれんが揺れている下へバイクを停めて、ヘルメットをはずすと、わずかな日陰の下、吹いてくる風が心地よかった。風を感じながら、ぼうっと軒下の影を見上げていれば、後ろから思いきり頭をはたかれる。振り向けば、春はもうこちらを向いていなくて、店の中へ入ろうとしているところだった。バイクから降りて、スタンドを立て、ヘルメットをシートの上へ置いて、俺も春の後を追う。戸をくぐると、近いところでいくつも風鈴が鳴っているのが聞こえる。見当たらないのは、二階の窓にあるからだろうか。

「風鈴新しくしたん?」

 春がそう聞いている、相手はレジの奥へ腰かけている。台へ頬杖をついた、禿頭のご隠居。隠居する前を知らないが、そう言うのがもっとも適当であるように思われる。いつ見ても険しい目つきは、春に問答を求められても険しいままで、唇が音を発さないまま動く。「や、俺のせいちゃうし。言うただけやん」と、春が憮然とした様子で答え、レジの方へ歩み寄る。ご隠居は声のないまま、可笑しそうに大きく笑って、大儀そうにゆっくりと立ち上がった。俺たちの方へ背を向ける。何かの戸を開ける音の後、ガラスの器がそっとレジの台の上へ置かれ、続いて、氷の塊が抱え上げられている。氷の方は、レジの奥の、いかにも年季が入っていそうな機械の上部へ、ねじを回して固定された。

「不協和音やけど気にならへんのって聞いただけやし……」と、春はぐずぐずと言い募る。狭い店内を物色するでなく、まっすぐに奥の小上がりに進むと、完全には上がり込まず、その縁へ腰かける。ご隠居がそちらを向いて数瞬、「ごめん……でも早よう気付けて良かったね」と、まだ拗ねている声で春が呟いて、背中を丸めた。ご隠居はどうやら呆れた笑いを浮かべ、俺の方を向いた。

「お久しぶりです、昌浩さん。春がいつもご迷惑おかけしてます」

 言って会釈をすれば、昌浩さんは大きく頷いている。「ちょお、理人」と俺を咎めるように春が言い掛けるが、昌浩さんが春の方を向いたので、黙り込んだ。声のない会話がまた、交わされている。俺はそれを眺めている。風鈴がちりんちりんと音を鳴らす、外ではきっと、湿り気を孕んだ熱い風が吹いている。この店の中は薄暗くて、風もないからじとりと、暑い。

 昌浩さんが春に背を向け、氷を固定した機械に向かう。可笑しそうな表情をしているのが見えた。対して春の方は憮然として、何にも納得がいっていない、という様子だった。ガラスの器が機械の下へ置かれて、昌浩さんがハンドルを回して削る氷が、器の中へ降り積もっていく。思わず喉が鳴った。がりがりという音が妙に涼しげに聞こえるのに首を傾げながら、春のいる、奥の小上がりへ近寄る。春が昌浩さんの様子をじっと見つめながら、黙ったまま、からだを壁側へ少し寄せた。余裕の生まれた縁へ、春の隣に腰かける。

「むっちゃ笑われてんけど、理人」

「事実だろ。相変わらず仲、良いね」

「色々よしみやし……まあ確かに世話にもなっとうけど」

 腕を組み、眉間に皺を寄せながら、春は先ほどの俺の言葉を首肯して、けれどもまだどこか納得がいかないと言いたげに、低く息を漏らす。俺には何がそんなに春の意識に引っかかるのか分からず、ただただ、隣で春の眉間の皺の深さを目測するばかりだ。

「あー、もう、ええわ」

 唐突にそう言って、春は両腕を上へと掲げる。そのまま腕を天井へ向けて大きく伸ばして、丸めていた背筋もぴんと伸ばす。言葉になっていない声を出しながら、伸ばした背筋をゆっくり、左右へ曲げてから、組んでいた両手を外して、腕をおろす。そうして息を吐いた春の表情は、先ほどまでとは一変している。眉間のしわはどこへやら、すっきりと清々しそうに、そしてわくわくとした様子で、氷を削る昌浩さんを見つめている。

「単純だよね、春」

「仮にもオニイサマに向けて、失礼やなあ。あ、そういえば、僕だけ呼び捨てやん」

「そういや、そうだね。……変えようか?」

「どういう風に?」

「はる兄?」

 他の兄や、姉にしているのと同じように呼び方を変えて言ってみれば、春がくすぐったそうに笑い声をあげる。「それは」と、一度言葉をとぎれさせて、何にむせたのか、軽い咳払いをする。乾いた咳の音の後、「むずがゆうて、かなわん」笑い混じりの声がそう呟くので、それじゃあ今までのままが良いんだろう、と了解する。しかし、呼び方を変えただけでこんなに笑うなんて、そっちの方が失礼じゃないだろうか。

 ごとん、と重たい音がして、そちらを見れば、レジの横、青い氷の山が、器の上に出来ている。わ、とうれしそうに春が、声をあげる。

「ありがとう、昌浩さん」

 春の声に、昌浩さんは軽く、首を横に振る。やっぱり声なく動く唇を見て、春が「ちゃんと払うよ、そない、気い遣うてもらわんでも」と言うのだから、おそらく、氷代の話でも持ちかけたのだろう。しばらく春と見つめ合った後、昌浩さんは俺のことを見て、大きく、ゆっくりと、唇を動かす。おまえは。そう、読み取れる動きだった。

「ええと、じゃあ、同じものを」

「ええやんなあ、ブルーハワイ。真っ青で!」

 春が機嫌よく、そうはしゃぐ。立ち上がって、こちらへ背を向ける昌浩さんの方へ近付くと「スプーンは?」と、ハンドルへ手を伸ばしたところに催促する。きっと、こちらに聞こえない言葉で。文句を言ったのだろう。春がまた「ごめん、ごめん」と笑うのへ、のっそりと大儀そうな動きで、昌浩さんの体はレジの奥の狭い空間を行き来する。しゃがみこんで、背を起こした皺だらけの手から、銀色のスプーンをふた振り手渡されて、「ありがとう」と春は変わらず、機嫌よさそうな声で呟いた。

 受け取ったスプーンの一本は青い山へと突き刺して、もう一本は、昌浩さんが向き合う氷を削る機械のそばへ置いてから、春は片手でひょいと、青い氷の山の器を持ち上げて、軽い足取りで俺の隣へと戻ってくる。青い氷の表面はもう溶け始めているようで、滴がつうと、山の表面を流れ落ちようとしている。

「理人、先食べる?」

「いいよ、別に」

「でも、同じもん頼んだんやから、同じやで?」

「だから、いいって……それ、春にって、昌浩さんが作ったんだから」

 唐突な気遣いを退ければ、春は少し残念そうに、と同時に少しうれしそうに「そうか」とつぶやいて、山に突き刺してあった銀色のスプーンを、右手にもった。スプーンの先をそうっと、氷の山へとさしいれて、青い塊をすくう。にわかに溶け出しそうになる青い氷の小山を、春は素早く口へ入れた。おいしい、と小さい声がつぶやくのを合図にしたように、がりがりと氷を削る音がし始めた。


「じゃあ、春ちゃんが帰ってきてるんだね」

 うれしそうに声を弾ませながら、空がベッドの端に腰掛け、足をじたばたとさせている。そうだよ、と声を出して答えるのも面倒といえば面倒で、声を出してみればそんなこともないのだろうけど、ひとまず春を向いて口を閉じたまま頷く。春はやっぱり、楽しそうに笑い声をあげると、「ねえ、理人。CDかけてよ」とCDプレイヤーを指差した。俺自身の意志ではほとんど使われないそれ。春のCD以外が入ったことはほとんどない機械の電源を、入れる。解像度の低い荒い液晶に、細切れの「HELLO」が映し出されて、明滅して消える。トレイの中でCDが高速に回転する音が聞こえてくる。

「それで、十三番目まで早送りして?」

「十三、って、最後だけど」

「うん、そうだよ。それでいいの、さ、早く。急がないと、また夕飯に呼ばれちゃう」

 いきなり空が急かすのに従って、右に頂点のひとつを向けた三角形がふたつ重なっている図のあるボタンを押す。一、二と数えながら、液晶のオレンジ色の文字を確認しながら、トラックを飛ばしていく。十二回、かちかちとボタンを押せばようやく、液晶の左端に「13」の数字が表示される。続けて、曲の題名らしい文字が流れてくる。アルファベットの、そんなに長くない文字列だった。それは、「Requiem aeternum 」という、見慣れないふたつの単語からなっている。スピーカーから流れてくるのは、今のところ、音量をひどく絞ったピアノの音色だけで、全く静かなものだった。

「これを、聞いてればいいの?」

「ううん、聞き終わった後」

 春は首を横に振って、そう言う。その意味が分からなくて首を傾げる俺を見ながら、笑っている。それ以外の春の表情を、見たのはいつが最後だったっけ。昔から、空はよく笑う人だったけれど、それだけじゃないはずだった。そのはずだった。でも、今の俺には空の笑顔以外が、思い出せない。

 もうとっくに見慣れた穏やかな笑顔で、空が俺を手招きする。近付いていく俺と目を合わせながら、自分の隣のベッドのシーツを叩いている。そこに座れと、そういう要求なのは分かっていた。浅い呼吸で胸を空っぽにしてから、勢いよくベッドの端へ腰掛ける。空の隣だ。白いシーツが、たわんでいる。

「理人」

 空が俺を呼んだから、そちらを向く。空もこちらを向いていて右手を持ち上げて、ゆっくり、俺の方へ伸ばそうとしている。その手が何をしたいかも、俺はもうとっくに知っていて、ゆっくり目をつむる。それでもまだ、空の指先は俺へ触れない。

 暗闇の中で、音だけが鋭敏に聞き取れる。CDの回転する軽いノイズ、それから、スピーカーから流れているピアノの音。いくら耳を傾けても、そうやって聞こえてくるのは、ピアノの音だけらしかった。これならば、俺にも何とか音楽というのが理解できそうな気がした。単一の音色が次々に音をつないでいく、その全体を捉えて音楽を聴くということが出来そうに思われた。

 音が移る度に「ああ、これはもう終わるのだ」と、そんな気配が濃くなっていく。次第に音が大きくなって、迫ってくる。こんなにも迫られても、どうせ逃げ場はないんだろう、と思った。ピアノの音が近づいてくる。刻々と日を告げる時計の鐘の音のような予定調和を覚えさせるように。がむしゃらに鍵盤へ指を叩きつけているようにも聞こえる。土砂降りの雨が屋根を叩くときの音の様々にも似ている。うるさいだけになってしまうぎりぎり一歩手前のところで、ピアノの音が紡がれている。

 息を呑むような空白の後、一際甲高く、大きく、ピアノの音が叫んだ。音が叫ぶなんて比喩は自分には似合わないとつくづく思うが、そうと表現するしかないような音だった。空が言っていたのはこういうことだろうかと、推測する。叫び声は中空に尾を引くように余韻を残して、消えていった。心臓の音がまだ速い。生温い風が鼻先と、頬を掠めて、耳の横を吹いていく。ああ、空が俺に触ったのだ。

 空の方へ体を向けてゆっくり目を開けると、空が居る。膝を揃えてベッドの端へ腰かけて、腿の上に両手を置いて、こちらを覗き込みながら、ゆるく首を傾げている。軽く握られた両手がいつからそうして腿の上へ置かれているのかは分からない。果たしてどちらの手が、本当に俺へと触れたのかだって分からない。空の両手へ自分の手を伸ばしたく、重ねたくなるのをこらえて、自分の拳をぎゅっと握る。この逡巡だってもう何度目になるだろうか、分からない。それでもまだ繰り返すのは、分かってしまうことが恐ろしいからだと思う。だから、くり返す。できる限り、同じ毎日を。同じ時間を、くり返す。

「ねえ、理人。よく聞いていて」

 空が言うので、俺は思わず瞬きする。……リピート再生にもなっていないのに、ピアノの音を流さなくなったCDは、まだ回転を続けて、軽いノイズを生んでいる。 すべての曲を流し終えれば、勝手に止まるはずなのに。

「故障した? 叩けば直るかな」

「違う、違うよ理人。だって、俺は昨日聞いてるもの。機械が故障したんじゃなくって、これはこういうもの。だから、聞いていてって」

 まだおかしそうに、空は説明をする。俺は故障であるという説を自分の喉の奥へ引っ込めて、大人しく、空の言うとおりにする。軽いノイズに耳を傾ける。変わらないその音と一緒に、液晶の時間表示は淡々と積み重ねられていく。

「理人はこのCDを聞き続けたらこうなるってことを、知らなかった。けども、俺は知ってた。理人が部屋に戻ってくる前から知ってたんだよ。ねえ、理人」

「なに、空」

「俺が聞きたいこと、知ってるね」

 空が、瞬きもせずに俺を見ている。真っ黒な大きい目が俺を映している。問いかけはその実の疑問を伴っていなくて、ただ確認のためだけに口に出されたものだった。その通り、俺は空の聞きたいことをすでに知っている。けれどもそれは、俺の考えていることを空が知っているからこそ、俺が考える空の聞きたいことを、空が尋ねようとしているのかもしれない。分からない。誰にも、空にだって聞きようがなかった。だって、空は俺の知らないことをすでに知っている。俺は、空の知らないことをたくさん持っている。

 呼吸の音なしに、空の薄い肩が少し、持ち上がる。ゆるく微笑んだままの唇が薄く開いた。それを見ながら、俺もつられて口を開く。

「俺は誰だろう」

 空と自分の声が重なって、滲んで聞こえる。俺はそれがどうしようもなく耐えられなくて、口をきつく結んだ。空は、眉間に少し皺を寄せながら笑って、開いたままの唇を動かす。そこから聞こえてくる声に耳を澄ませているのに、的外れな方向から、こつこつと固いノックの音が邪魔をした。

 はい、と返事をすると「理人? 入るよ」とはきはきとした声が告げる。「春ちゃんだ」と空が騒ぐ。それから「きっと、恥ずかしがるね、春ちゃん」と続けて、小さく、くすくすと笑った。その声の消えないうちに、ドアが部屋の内側に、開く。

「あれ、ひとり?」

「に、決まってるだろ」

「……せやんなあ、おっかしいわ」

 ドアを閉めながら首をひねって、春は呟く。「もう一人居るか思うた 」と本当に不思議そうに、きょろきょろと狭い部屋を見回す。それで疑問を解くよりも早く、春の視線はCDラジカセにぴたりと、吸い寄せられたようだった。近付いていって、液晶をのぞき込んで、変な声をあげる。さっきまでの苦しかったのを忘れて、思わず笑ってしまいそうになる。

「聞いてるん」

「そのために置いてったんじゃなかったの」

「そうやけど……最後まで聞かれる思うてなかった」

「だって、終わらないから。流しっぱなしにしてるんだけど」

「……ただのお遊びやから、真面目に聞かんといて」

 こちらを振り向いた春は、決まりが悪そうな笑みを浮かべていた。成るほど、さっき空が言っていた通りだ。またひとつ、空は俺の知らないことを知っていた。心臓の辺りがつきんと痛んだ。

 春がラジカセの前を離れて、ベッドの端の床に座り込む。あぐらをかいて、指先が床を叩く。固いけど軽い音。それへ合わせて鼻歌が聞こえる。俺も知っている曲だった。

「理人は、就職どないするん」

 鼻歌が止むのと同時に、春がそう尋ねてくる。床を叩く指先も止まっている。唐突な問いかけだったから、自分の中で答えをまとめるのに、少し、時間がかかる。

「……はっきりは決めてない。まだ、二年あるし」

「ああ、そうか。高専て五年あるんやったなあ。そうかあ……」

 春がひとりで納得していることへ、一応頷いておく。大多数の同級生とは異なって、俺にはその件について、まだ猶予があった。大幅に選択肢の狭められた猶予だが、その間に考えることは充分すぎる程にある。就職もだが、卒業研究も、その前に幾度もやってくる試験も、やることは次から次へやってくる。それだけは間違いなかった。

「はじめてここに来たときの僕と今の理人が、同じ年」

「ふうん」

「いうことは、空に、追いつくんやね。理人は」

 言い終えるときの春の声は遥か昔を懐かしんでいるようだった。俺はまた、春の言うのへ頷いておく。春の言うことは紛れもない、動かしようもない事実で、俺がいくら足掻いたって、どうやら変えようがないらしかった。俺は直に空の歳に追い付く。そして二度と追い越されることはない。離れていくばかりだ。

 つまり、このベッドの端に腰掛けて柔らかく微笑む兄は、いつまで経っても変わらない姿でいる。俺にしか姿を見せない兄は死んだ歳と変わらぬ姿を保ちながらここにいる。そういうことだった。そういうことであってほしかった。今は姿の見えない空がさっきしていった質問への答えを頭の中で呟く。空は、空だよ。俺がそう信じたいから、俺はそう言う。

 ピアノの音がした。ラジカセからだ。同じ高さの音が、不規則なリズムで繰り返されている。それから、笑い声。うちの一つは春のものだったので、春を見るが、 うまい具合に目を逸らしている。決まり悪そうに、唇を尖らせていて、頭の後ろ、雀の尻尾のように束ねた髪の根元を、くすぐったそうに指でかいている。

 笑い声が聞こえなくなって、一呼吸、ふた呼吸と置いてから、もう一度ピアノの音がする。その音は今度は、俺も知っている歌を弾き始める。さっき春が床を叩いていた、鼻歌で聞こえてきたのと同じ歌だ。その音を、俺も鼻歌で追ってみる。ゆっくりのテンポだから、合わせることは難しくなかった。

 みんなのことを、そらからみてる。

 きらきらひかる、おそらのほしよ。

 確かそんな歌詞だったように思う。

「理人、C(ツェー)が低い」

「ツェーって何だよ」

「一番はじめの、ドの音やから……」

 春が目をつむって、鼻歌で正しいらしい音を鳴らす。自分が鳴らしていた音との違いはちっとも分からない。同じ音にしか聞こえなかった。目を閉じたまま、春は鼻歌を続ける。その隙に、そっと自分の隣のベッドの端を見てみるけれど、そこには誰もいない。俺が腰掛けた部分から伸びた皺が、少し残っているだけしか、見えなかった。

 二人だけの部屋に、ノイズ混じりのピアノのと、それに合わせて誰かの鼻歌が、きらきら星を歌っている。

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