第35話 舞台は乙女ゲームへ
「それでは行ってまいります、お母様」
伯爵家の馬車の前でローラが言う。
時は流れて今日はいよいよ学園の入学式、そのため婚約者のオスカーがエスコートをしにローラを迎えにきてくれたのだ。
この10年、オスカーとローラの関係はとても良好だったように思う。
ローラはオスカーに相応しくなるようにより淑女教育に力を入れていたし、オスカーもこまめにローラに会いにきてはお出かけやプレゼントを送ってくれたりもした。
「ええ、気をつけて。オスカーと仲良くするのですよ」
そこだけが母として心配です。
それ以外、成績とか評価とかはね全く心配してません。
ゲームでもそうだったけれど、アウローラは完璧な淑女と呼ばれているのだ。
成績も確か殿下よりも上位だった・・・それもまた殿下から冷遇される理由だったように思う。
まぁ一番はゲームのアウローラな性格みたいだけど。
それは今やあり得ないくらいに別人に育っている。
ゲームの攻略対象にはそれなりのエピソードがある。
その悩みに共感して味方になる事で恋が発展していく。
殿下の場合は、言うまでもなくアウローラである。
性格はワガママで自己中心的なアウローラは一方で殿下よりも優秀と言う面を持つ。
全ては殿下に依存しているが故の努力なのだが、そこは全く伝わらず婚約者よりも劣っていると言うコンプレックスを持っている。
オスカーは、複数人と浮名を流す女たらしなのだが、その裏では極端な女嫌いである。
だから特定の相手を作らずその場限りの関係で婚約を回避している。
その原因となるのは、彼が7歳の時に使用人に襲われると言う事件である。
それ以降家族には腫れ物のように扱われ、一時は女性恐怖症にすら陥ってしまう。
そんな女性たちを軽蔑したまま育つのである。
殿下もオスカーもヒロインの真実の愛(笑)でコンプレックスを乗り越えるわけだ。
もちろん、オスカーのトラウマは予めフラグを叩き割っておいた。
使用人はあらかじめご丁寧に計画を立てていたので、それらを先に伯爵家に開示したのである。
私1人がいきなり言っても信じてもらえない話ではあるが、ヴィーがジルバを始め使用人をフルに使って調査してくれたおかげですんなり話が通った。
もちろん彼女は解雇、当然罪にも問われるし紹介状も書いてもらえないから次の仕事も見つからない。
逆恨みする可能性も考慮して数年は経過を監視していたが、流行病で医者にかかれず亡くなったらしい。
と、言う事で今のオスカーは女たらしでも無いし、女性を軽蔑もしていない。
むしろ伯爵に似て随分とフェミニストになっている。
この10年ですっかり仲を深めた2人は多少の事では引き裂かれたりはしないだろうと思う。
むしろオスカーは溺愛の域に達している気がする。
ローラは賢いくせに鈍感なところがあるのであまり気がついていない。
オスカーの周りには奥さんに優しい男性しかいないためそう言うものかと思っている節もあるので心配だ。
貴族間の婚姻では、夫婦関係が良好ではないことも多い。
それでも妻に対して一定の礼儀を払う旦那様もいれば、蔑ろにされるケースも少なくない。
キャロラインも莉子の記憶を取り戻さなければ後者であったはずである。
そう思うとタイミングはどうあれ記憶を取り戻したのは良かったのだろう。
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