第18話 ランベルト来訪
「義姉上、ローズウォーターのガラス瓶についてと伺いました」
ジルバの言葉から数日後、ランベルト殿は王都にやってきた、女性と男性1人ずつを連れて。
「ご紹介します、タイガーリリー商会のエレナ嬢とその兄上のルカス殿。
ルカス殿はガラス職人なんです」
「ガラス瓶を1から作るのね?」
商会経由で買うだけならエレナ嬢だけ来たら良いはず。
ガラス職人のルカス殿を連れてくると言うことは、1から作ると言うことだろう。
ランベルト殿は一つ頷き、エレナ嬢とルカス殿は目線を送った。
「公爵夫人におかれましてはご機嫌麗しゅうございます。
タイガーリリー紹介長の娘のエレナ、こちらは兄のルカスでございます。
領地の特産品を作るお手伝いが出来ると言うことで大変うれしく思っております」
話したのはエレナ嬢、ルカス殿はぺこりと一礼。
職人さんなので寡黙な方なのかしら。
「エレナ嬢、ルカス殿、王都までお越しいただきありがとう」
「早速ですが、いくつかデザインを考えてきましたので見ていただけますか?」
エレナ嬢がそう言うとルカス殿がスケッチを取り出す。
どれも素敵なデザインだが、これは私が1人で見るよりも・・・。
「アリア、ミリア。クレハと何人か手に空いてる人に声をかけて、あとはローズも」
「はい、奥様直ちに」
「ここはもうちょっと、細くしたほうが持ちやすいんじゃない」
「こっちなデザインの方が良いわよ」
「いえ、こっちね!で色は〜」
「ねぇ、こう言うデザインは可能なの?」
クレハと共にやってきたメイドたちがルカス殿を囲む。
たくさんの女性に囲まれて大変そうなルカス殿をエレナ嬢が助けに行っている。
そんな中、私とランベルト殿はソファでお茶を飲んでいた。
メイドがこぞってデザインに夢中なので私の後ろにはジルバが控えている。
「・・・凄いですね」
ちょっと鄙びたように言うランベルト殿。
ええ、正直私も彼女たちの熱量に引いています。
乳母と一緒に参加していたローズがとてとてとやってくる。
「おかあさま、これは一種類だけ選ぶのですか?」
ローズの言葉に一斉にこちらに視線が集中する。
ちょっと怖いのは内緒。
「そうね、一般的なもの、貴族が使うもの、あと特別な容器で3種類かしら」
「特別って何でしょうか?」
「お友達にあげようと思って」
アンネとか、アンネから紹介してもらった彼女の娘のロッテ。
2つ年上の彼女はまるで姉のように接してくれる。
「おかあさまのお友達?」
「義姉上のご友人というと?」
ローズとランベルト殿が合わせて聞いてくる。
その表情がそっくりで血のつながりを感じる。
「アルストロメリア公爵夫人とその娘のアロンソワ伯爵夫人よ」
その後さらに白熱した議論になったが纏まらずしばらくルカス殿とエレナ嬢は邸に滞在することになった。
エレナ嬢は宿に泊まると言っていたが今回参加できなかったメイド達により半ば強制的に客間は連れて行かれていた。
きっと彼はこれからしばらくメイド達に囲まれることだろう。
・・・悪いことをしてしまっただろうか。
「考え事か?」
ベットでぼんやり天井を見ていたら隣から声をかけられる。
振り向くと近くにヴィーの顔。
この整った顔を近くで見るのもずいぶん慣れたと思う、いやまだ完全に慣れてはいないけど、というか慣れる日はくるんだろうか。
グイッと引き寄せられてヴィーの上に身体を乗せられる。
何も身につけていないお互いの体温が混ざり合う。
すでに火照った身体は汗もかいているが不思議と不快ではない。
「ガラス瓶のことで」
「報告は聞いている、大変だったようだな」
クツクツと笑うヴィー。
家であったことで彼が知らない事はない。
きっと今日の部屋の様子もジルバから報告が言っているんだろう。
「・・・正直侍女達怖かった」
そう言えば、後頭部に手が回り優しくキスされた。
いや、優しいけれど長い。
だんだん反対の手も滑りながら動いている。
「はぁ。ヴィー、ねぇ」
息継ぎの合間に抗議の声を上げる。
「特別なガラス瓶はもう二つ用意してもらえ」
ぽつりと呟いたどういう事かを聞く事もそのあと考える事も出来なくなったのは言うまでもない。
久しぶりにベットから起き上がれなくなった私を残してヴィーは出仕した。
当然エントランスまで見送れず、寝室で見送った。
ほとんど寝ていないが大丈夫なのだろうか?とか思わなくもないけど、珍しい事でもない。
嫁いだ当初はほとんどこんなものだったし。
最近も頻度は多くないけど無いわけではない。
ただ当然私の方はそんな体力ある訳はなくベッドに沈んでいる。
アリアやミリアも慣れたもので対応してくれる。
今日は一緒に食べたくて、朝はヴィーとベットの上で食べた。
ほとんど動けない私に食べさせてくれながらも食べて彼は出仕した。
どうやら彼は私から微かに香るランベルト殿の香水の残り香が嫌だったらしい。
今日からは念入りに香油をつけて出迎えようと思う。
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