第19話 弟の気持ち
「ローズウォーターを商会経由で販売したいとおもっています。
タイガーリリー商会はまだ領地にしかお店がないけどこれを機に王都にもお店を出せたらと考えているそうです」
ヴィーと一緒にランベルト殿に呼び出されるとそう告げられた。
ちらりとヴィーを見ると思案顔。
「エレナ嬢が王都の店の責任者になるのか?」
「そう聞いています」
さらに思案顔になるヴィー。
私としては元々販売するつもりのなかったローズウォーターなので、どこを経由しても良いし。
それが領地のお店ならなお良い。
「ランベルトはそれで良いのか?あの娘に惚れているのだろう?」
ヴィーの言葉にハッと息を呑むランベルト殿。
それから視線を膝に落とした。
「すでに振られていますよ、兄上。
身分が違いすぎると」
代理とは言えランベルト殿はマーガレット家が持っている伯爵位を受け継いでいたはずだ。
そうなると商人の娘さんとは確かに釣り合わない。
けれども確かマーガレット家には他の爵位もあるはずだ。
思わずヴィーの腕に縋り付くと、掴んだ腕から手を重ねられる。
「問題は身分だけか?」
「さぁ、私には分かりません。
ただせめて力になれればと思うだけですよ」
これはまだまだ未練が残っている感じがする。
そしてそれはヴィーも察している。
「ローズウォーターの卸先はタイガーリリー商会で構いませんわ。
おそらくこちらの貴族へのツテが無いでしょうから、私の方もお手伝い致します」
なら私も援護射撃をしてみよう。
未来の義妹になるかもしれないし。
「っありがとう!義姉上」
ランベルト殿が勢いよく立ち上がってお礼を言った。
「領地のお屋敷の使用人からの話を聞く限り、エレナ嬢も憎からず思ってくださっているようです」
身支度を整えているとクレハから告げられた。
「問題はランベルト殿の爵位と商会の規模の話ね」
すっと頭を下げてクレハと共にミリアとアリアも部屋から出る。
入れ違いで別のドアが開いてヴィーが入ってきた。
いつも通りソファに座る。
「何か言いたそうだな?」
紅茶を持ちながら思案顔の私にヴィーが楽しそうに言う。
どうせ私が考えている事なんて分かり切っているんだろうな。
「うーん、なんで言ったらいいのか難しい。
ランベルト殿とエレナ嬢の事、私がぐるぐる考えてもどうにもならないような気もするし。
うまくいって欲しいとも思うし」
「本人たちの気持ちはこちらではどうも出来まい」
それはそう。
でもお互いの好意はあるっぽい。
「貴族って大変なのね」
ポツリと溢すとヴィーは一緒固まった後クツクツと笑い始めた。
「リコからすればそうかもしれないな。
私としても弟の幸せを願っていないわけでは無いがな」
ことりとヴィーがカップを置いたので、私もカップを置いて両手を大きく広げる。
ヴィーの手が伸びてぎゅっと抱き上げられる。
「うん、知ってる。
2人が幸せになれると良いね」
なんだかとってもヴィーを甘やかしたい気分になって、いつもより近くに居たくて、次の日にベットから起き上がれなくてもそれはそれで仕方がないかな。
ランベルト殿はその後すぐに領地へ戻り、エレナ殿は新しいお店の立地などを調べるために街へ出ている間、だいたい数人ずつルカス殿の元へ通い大体のデザインが完成したのがだいたい半月後だった。
「侯爵夫人長らくお世話になりました!
また兄の作ったものができたら見せに参りますね」
イキイキしていたエレナ嬢とは反対に来た時よりもやつれているルカス殿。
ただ目だけは輝いているので領地に帰ったらすぐに作り始めるかもしれない。
ローズウォーターは今のところ出来たものを王都の屋敷と領地の邸でも希望者に使って貰っている。
定期的に領地の方からも感想が届く。
概ね好評なので、ガラス瓶が出来れば販売に持っていけるかと思う。
ガラス工房の方は器具の作成に追われているらしい。
特別手当出した方が良いかもしれないとジルバに伝えておこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます