第17話 波紋は広がる
クレハたちの治験が終わり、ようやく試せると思ったところで、治験者を含む使用人たちから販売はいつか?と言う問い合わせが殺到した。
スキンケアの概念がない世界だが、治験した5人が広告塔となってしまったらしい。
個人的に楽しむつもりだったが、こうなってしまうとそうもいかない。
「奥様、とりあえず工房へ連絡し追加の器具の作成とランベルト様へ連絡して作業場を作りましょう」
早速有能な秘書のようにジルバが助言してくれた。
おかしい、本来ローズウォーターは副産物なのだが。
「もちろん奥様が考えておられた石鹸への香り付けも同時にできるように連絡しておきますね」
こっちも覚えていてくれたようである、
特産物を作りたかっただけなのに、一大ブームを巻き起こしそうな気がする。
いや、気のせいよね。
「面白い事になっているな」
気のせいではなかった。
ヴィーとの夜のティータイム。
「思った以上に大掛かりでこっちもびっくり」
ちょっと流石に疲れたのよ、と頭をぐりぐりを押し付けるとギュッと抱きしめられる。
そんなヴィーからはお試しで使った石鹸のバラの香りがする。
使用人の中にたまたま石鹸を作り方を知っているものがいたので試しに作ってもらった。
こちらも侍女たちの治験申込が殺到したため、使用人用の浴室に置く事にしたら、まぁ好評である。
薔薇が落ち着いたら他の香りもつけてみたいな。
もちろんこちらも領地に作成のための施設が出来上がったらしい。
結果的に領地は雇用なども増えオッケーなんだろう。
もっともランベルト殿の苦労はいかほどのものか計り知れないけど。
思ったよりも大事になってしまったので申し訳ない。
「逆に迷惑をかけたのではないかしら?」
ジルバとか親方とかランベルト殿とか。
「うれしい悲鳴だろう。
リコが領地のためにやってくれたことも分かっているし、忙しいかもしれないが楽しそうにやっているようだ」
チュと頭や頬に優しくキスが落とされる。
慰めてくれているのが分かる。
相変わらず優しい。
「奥様、この入れ物もっと可愛くなりませんか?」
ミリアから声をかけられたのは翌日。
手にはローズウォーターの入ったガラス瓶。
とりあえず出来たものを入れるために出入り業者からガラス瓶を発注したまでは良かったのだけど。
良くも悪くもシンプルな瓶。
「悪くはないんですけど、せっかくの化粧品なので可愛い瓶に入れたいって言うかですね」
確かにそうよね、でもどこに頼んだら良いかしら。
「それならランベルト様に相談しましょう。
近日中に会えるように手紙を出しておきますね」
ジルバはそう言った。
「え、でも今かなりランベルト殿忙しいんじゃないかしら?」
「それはそうでしょうが、おそらくすぐ来てくださることでしょう」
だから大丈夫ですよ、とにっこりジルバが笑った。
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