第13話 初めてのデート

その後は領地のお店をいくつか周り、ドレスや靴など、あとはローラへのお土産を購入した。


普段はあまり買わないようにしているのだが、領地にお金を落とすのもまた夫人の仕事だと家庭教師から教わったのだ。


ただハイネックのドレスばかりをオーダーしたのでドレスデンの店主は不思議そうな顔をしていた。


結婚してから首の空いたドレスは着たことがないので持っていないのだ。


そのうちまた着れる日が来るだろうか。


ただ莉子としては胸元が開いたドレスもまたなかなかハードルが高い気もする。


キャロラインはスタイルも良いので似合うだろうけど。





「ガラス工房に行ったそうだな」


部屋でヴィーとお茶をする。


屋敷での習慣はそのまま領館でも続いている。


「作りたいものがあって」


ただ完成は見る頃には領地には居ないと思うので、執事のフィーノに連絡をくれるように伝えていた。


「出来たら教えるね」


上手く出来る保証もないので、とりあえず内緒にしておく。


「楽しみにしている」


ヴィーは大した音も鳴らさずにソーサーにカップを置いた。


それに合わせて私も手を止める。


彼が飲み物を飲みきるのは寝る合図なのだ。


「ん、楽しみにしてて」


いい報告ができるように頑張るから。


両手を伸ばすとふんわりと抱き抱えられる。


「明日は一緒に出かけよう」


そう言えば新婚旅行だものね。


ヴィーったら仕事しかしてないわ。


たまにしか領地に帰ってこれないので致し方ないのでしょうし、私も特に不満には感じなかったけど。


「嬉しい」


ぎゅっと首に抱きつく。







次の日に起きれたのは日がずいぶん高くなってからだった。


正確には朝起きたのだけれど、いつも早く出仕するヴィーがまだベットの中で寝ていたのが珍しくて、嬉しくて思わず抱きついてしまった。


「・・・朝から誘っているのか?」


と寝起きの低音ヴォイスで言われて陥落したのである。


うちの旦那がカッコ良すぎる!!!


もちろんそんな色気に陥落した私はなす術もなく翻弄されたわけである。


「今日の外出はやめておくか?」


ブランチを部屋で食べているとヴィーが言った。


正確に言うともはや自分では食べることもできず、食べさせてもらっている状態である。


「楽しみにしてたのにぃ、ヴィーのばか」


「煽ったお前が悪い」


じとっと見た私にしれっと返ってきた言葉。


「煽ってなんかない!・・・少し休めば動けるようになると思う」


しんどい、しんどいが行きたいのだ。


「分かった」


そう言ってヴィーは甲斐甲斐しくもお世話してくれるのである。






昼を過ぎて、少し日差しもマシになったティータイムの時間に馬車に乗った。


部屋から馬車まで行くのにお姫様抱っこされた私の気持ちをわかって欲しい。


領館で働くみんなの目がこれでもか!と見開いていた。


チラッとしか見えなかったがランベルト殿もいた気がする。


ちなみに王都のお屋敷ではみんなもう見慣れた景色である。



・・・穴があったら入りたい。


「恥ずかしい、辛い」


「侯爵夫婦が仲が良くて何の問題がある?」


思わず場所に入ってから顔を覆って隠す私を膝に乗せヴィーが言う。


何気なくこの人スキンシップが激しいのである。


恥ずかしいのは慣れないけど、触れられる事には慣れてしまった。


「人前は嫌ぁ」


「なら今は良いな」


ニヤリと笑って口を塞がれる。


人前ではないけど、御者は前にいるのだけれど。







「見せたかったのはこれだ」


馬車で30分ほどの距離で着いたのは一面の薔薇だった。


「凄い!」


ちょっと腰が抜けた私はヴィーに支えられるように立ってる。


「ここから王都などに出荷している、薔薇が欲しいのだろう?」


薔薇の花びらが欲しいとフィーノに伝えたのがヴィーにも伝わったようだ。


「すぐにはまだ、ただガラス工房からの品物ができたら、分けてもらっても良い?」


「いつでも言えばすぐに送らせる、王都の屋敷にもここ程はないが薔薇は植えているから使えば良い」


何が作りたいとかどうしたいかとか言わないのに許してくれるこの人は優し過ぎじゃなかろうか?


「あんまり甘やかさないで、我儘になっちゃう」


甘やかされてダメになりそう。


「我儘?どこがだ、宝石の一つも強請られた記憶はないが?」


強請ってませんが、宝石はなぜか出てくるんですよ、必要な時に必要な分だけ。


「だって沢山あるじゃない」


ああ、でも宝石じゃないけど一つ欲しいかも。


この世界にはなくて前世にはあって当たり前のアクセサリー。


「じゃあ一つだけ強請っても良い?


一緒に買いに行こう?」


「いくらでも」




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