第14話 領内でのお披露目

あの後宝石店に寄ってオーダーしてきた、店主もヴィーも不思議そうにしていたが、帰ってから伝えると納得してもらったようだ。


出来上がりにしばらくかかる私とヴィーのマリッジリングは出来次第、屋敷に届けてくれるそうだ。


リングにはベタだけれど二人の名前を刻印した。


莉子の頃結婚指輪って憧れてたのよね。








「ご結婚おめでとうございます」


今日は領内や近隣の領地の方を招いてのパーティ。


いわゆるキャロラインのお披露目である。


今日のドレスはヴィーの瞳の色がふんだんに使われ、耳元にもアメジストが光っている。


もちろん今日もハイネックである。


先程まではヴィーと一緒に挨拶を受けていたが、今は御夫人達と歓談中である。


「お若い方なのでどうかと心配しておりましたが、侯爵様とは仲良くされているようですわね」


「ええ、本当に仲睦まじいですのね」


そう仰る夫人の目は首元に集中している気がしなくもない。


「有難くも良くして頂いておりますわ」


当たり障りなく返す。


おそらくはキャロラインの前評判は知っているであろう皆様だが、近隣や領内の方なので、基本的にはそこそこ友好的なのである。


王都のお茶会よりも断然楽である。


「やはり侯爵様が戻られるとお屋敷も活気が出ますわよね」


「いつまでこちらにいられますの?」


「おそらくはあと数日かと、主人の仕事もありますので」


「そうですわよね、宰相閣下ですものね」


むしろよくここまでの休暇を取れた方である。


かなり無理したのではないだろうか。


もっともここにきてもずっと仕事している気もする。


チラリとヴィーの方を見れば、若いご令嬢とその父親と思わしき男性と話している。


一見いつも通りだけど、なんか機嫌悪そう。


相手は気づいてないのかご機嫌に話をしている。


「あの方、第二夫人を狙われているのよ。

お気をつけあそばせ」


コソッとお隣のご婦人が教えてくれる。


「まぁ、まさか」


「いえいえ、キャロライン夫人が来られる前から打診していたようなの」


まぁ、あり得る話だろうなぁ。


しかも後妻がキャロラインなら簡単にいけると思われたんだろうなぁ。


助けに行きますか。


ご夫人達に挨拶をして席を立った。






「あなた、こちらの方々をご紹介頂けませんこと?」


一方的に話している親子を見ながら、ヴィーの腕に手を滑らす。


途端に値踏みするような視線の中年男性と、睨みつける若い女性。


あらあらそんなにあからさまだと社交界はやっていけないんじゃないかしら。


「ジキタリス伯爵とご令嬢だ」


なるほど、近隣の方なら無下にはできませんね。


「妻のキャロライン・マーガレットですわ」


こちらから挨拶をすると、令嬢の顔がさらに険しく変化した。


キャロラインは子爵令嬢だから下に見ていたのだろうけど、今は後妻とはいえ侯爵夫人なので当然彼女よりは身分が上になる。


それがまた気に入らなかったようだ。


「もしよければご夫人、ダンスを一曲いかがですかね。侯爵その間娘とダンスでも」


メインは明らかに後者ですよね?


「断る。


妻以外も踊るつもりも、他の誰かと踊らせるつもりもないのでね。


失礼する」


そう言って私の肩を抱いて歩き出す。


先程までお喋りをしていたご夫人達はニンマリとこちらを見ている。


踊らなくていいのはありがたいけど、良いのだろうか?


「ダンスくらい断っても困りはしない」


伺うように見た私はヴィーはそう言って、会場にいたランベルト殿の方に顔を向けた。



ヴィーがちらりと見ただけなのに、分かったと言うふうにランベルト殿が頷いた。


よくは分からないまま私はパーティ会場を後にした。


え、主役が居なくなって良いの?!






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る