第80話 美春、果てる
「
どこぞの屋敷の外廊。
そこから両足をぶらつかせ、石庭を眺めながら誰かさん。
獣さんな俺、誰かさんの両膝に頭をのせて、夢現のままに耳を傾ける。
駆けることも、吠えることも、ちかれた。
今は休憩タイムだ。
わふぅん。
「誰しもが望むことを、
緩やかに流れる時の中、誰かさんは絵物語を聞かせる様な声音で語り、優しく俺の頭を撫でて梳く。
力加減も撫でる場所も完璧。
これは零さんを超えるかも。
心地よきかなぁ~……うひひ。
「美春の母、榊白帆が望んだ未来は、まさに
何だか母が褒められてる。
うれちぃなぁ。
もっと褒めてあげて?。
獣さんの母は頑張り屋さんなんだぁ。
「いつの世も、母は偉大なり、ってね」
―――ポタ、ポタッ。
常に閉じられた瞳から流れる雫。
のほほ~んとした表情に、微笑む口元。
悲しくなさそうなのに泣いている。
誰かさんはいったいどうしたというのだろう。
獣さんは不思議に思うも、ペロンと頬に伝うそれを舐めとってあげる。ちょっぱい。
「美春も将来、偉大なママになるのかなー」
男がなれるのは父。
たまに
男の中の漢を目指す男、それが雄として目指すべきところ。
偉大な父こそが成るべき姿。
偉大な母にはなり得ない。
何をいっとるんだぁ、あほんだらぁ。
将来、立派なお嫁さんをもらうんじゃぁぼけぇ。
「立派なお嫁さん、それは夢野祈、SKって子かな?」
……わぅ?。
なんで立派なお嫁さんがSK?。
急に何をいいだすんだってばよ。
ばかにゃろう、こんにゃろう。
「とぼけなくていいさぁ、初めてだったもんね~、ちゅうするの」
初めてじゃないですけど。
獣さんは経験豊富なんですけど。
勝手な憶測やめてもらいたいんですけど。
ばぅばぅっ。
「男っていうのはえっちぃことが大好きなのさぁ、下半身が疼いたのならそれはもう恋、愛だよ愛」
どこからか「下半身で愛を語るんじゃねぇよッ!!」という声が聞こえてきそうな台詞だぁ。
誰かこの人の間違った認識を正してあげてください。
恋愛は理屈や性欲無しに、心でするものだッ、と。
「SKのことを考えると下半身がドキドキするんでしょ?」
ドキドキするのは心で下半身は…そのぉ……。
「あそこの場合は、びくん、びくん、だったね♪」
卑猥、この人、卑猥です。
下ネタばっかり、最低です。
ばぅばぅッ。
「そうさ、
下ネタは嫌いです。
えっちぃ人は大嫌いです。
えっちぃ目で見てくる人はもっと嫌いですぽい。
「えっちぃ目って、
そういってクスクス笑う誰かさん。
笑いながら獣さんのお尻をなでなでしてきた。
伸びてきた卑猥な手の首を噛む(勿論甘噛み)。
傷がつかないように最後は噛んだ手首をペロペロ。
痴漢、だめ、絶対。
再発防止に、「わんっ」としっかり注意しておいた。
がるるるるっ。
「まぁ、なんにせよ、運命の人が一人とは限らない、SKのことも存分に愛でてあげればいいさ、
何を勘違いしているのかわからないけど、別に獣さんはSKが好きとかじゃないんですけど、SKはただの友達なんですけど。
あんな乱暴で全然優しくなくて甘えさせてくれないSKのことなんて別に、好きでも何でもないんですけど。
勝手な解釈止めてもらえますか?。
けどけどけどけど。
「因みにだけど、子を作れば回避できるものじゃない、美春が孕まない限り、親しい者達の死はやってくる」
獣さんのお友達がみんなちぬ?。
そんな不思議は嫌ですたい。
比較的に平和な日本で、どうして獣さんのお友達が?。
獣さんを怖がらせてたのちぃ?。
誰かさんは意地悪。
この、うそつきッ。
ばぅばぅッ。
「二成の神は、
そもそも二成の神ってなんなの?。
誰かさんの言ってること、よくわからない…。
「よく歴史のなかで傾国の美女とかいう単語出てくるでしょ?、二成の神っていうのは、極論を言ってしまえばそれと似た様なものさ、規模はまるで違うけど」
だから?。
それと親しい人が死ぬっていうところになんの関係があんじゃい。
適当なこと言ってまた獣さんを怖がらせようとしてるんでしょ。
いい加減にしないと、怒るよ?。
ばぅばぅッ。
「要は嫉妬さ、美春」
shit?。
「嫉妬で人はいくらでも箍を外し、人を殺す。己より劣った存在を蛆虫と蔑む者達なら尚更に、その頂に立つ者であれば言わずもがな」
えーと、つまり…?。
「嫉妬深くて差別的な思想を持った暴力団に、美春のお友達は狙われてるってことさー」
嫉妬深くて差別的な暴力団。
そんなのが獣さんの近くにいて、お友達を狙ってる?。
嘘ペコじゃん。
「理屈の通じないものは世の中に幾らでもいる、それらを黙らせ、大人しくさせたいのなら、孕むことが一番手っ取り早い」
獣さんと仲良くするだけで嫉妬して命を狙うような人達にとってそれは悪手なんじゃ……。
というか獣さんは雄。
まず孕めないんですけど。
…いや、孕むつもりは微塵も無いんですけど。
「二成の神がその身に子を宿した時、陰陽の定が断ち切られる」
引用のさだめ?、なんじゃそりゃ。
わけわからん。
いきなりどしたの?。
「
よく分からないことをなんで急に?。
「子を宿せば絶対的な力を得られ、『白』や『黒』と等しい存在、真なる神――
絶対的な力…真なる神……。
厨二病乙。
「真ノ神と成れば、有象無象の掌握なんてきっと容易い、いちいち小事に囚われることも無く、自由に過ごせる」
だから孕めと?。
雄である獣さんに?。
それはちょっと無理が過ぎるのでは…。
「いいや、美春、君は男でも女でもない―――二成だ」
―――むちゅっ。
……。
また唐突にちゅうする。
獣さんは今、獣なんですけど…。
あんまりえっちぃことすると、動物愛護団体から苦情殺到だよ?。
「兎の耳と尾が付いただけで見てくれは変わらない、二成が何たるかを教え、慰めてあげるには充分だと思うけどなー」
そう言ってニヤける誰かさん。
またシュルシュルと白い衣を脱ぎだした。
兎の耳と尾?、獣さんは犬さんじゃなくて兎さんだった?……わぅん?。
「そろそろリエルノも
限界?、リエルノは何かしてるの?。
「美春の代わりに、ちょっと現世を満喫してるだけさ」
現世で満喫……、もしかしてまた勝手なことしてる?。
お尻ぺんぺんした方がいいかな?。
「あの子が現世でどう満喫したのか知りたかったら、戻った時に神気を使って記憶を紡ぐといい、蓋をされてないところまでは観れるはずさ」
記憶を神気で紡ぐ…、どうやってやるの?。
「それは本能が教えてくれるさ、えっちぃ事をするときみたいに、ね」
衣服をはだけさせ、誰かさんは妖艶な笑みを浮かべる。
そして、押し倒した獣さんの体を上から下へ、チュッチュ、ハムハム、ペロペロしていく。
「ふふ、美春、かわいい……、いただきまぁーす」
ナメクジさんがアソコでチロチロ、上と下を行ったり来たり。
数秒後、初めての快楽に堕ちた獣さんは、頭がパーになった。
意識が景色に溶ける。
もう、にゃにもかんがえられにゃい。
獣さんは空気さん。
その辺を無心に漂うことが、お仕事。
ふわふわ、ゆるりゆるり、ぷかぷか。
漂うのたのちぃなぁ~。
「……過敏な体を持つと苦労するよぉ、じっくりやってる暇もない。……ごめん、リエルノ、もう少し
―― 後書き ――
【今週の木曜日の朝、次話を投稿します】
自分自身で童〇も処〇も失う主人公とか。
色々と狂ってる。作者の頭が。
ちょっとこの先の展開に難儀。
内容がヤバ過ぎたので、改善していきます。
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