Day30「握手」(????)

 君が、光の門をくぐって去って行くのを、私はただ見つめていた。見つめることしか出来なかった。


 だって本来、私と彼女は会ったらいけない。それが許されない。たまに、神の気まぐれなのかな? こうして会うこともあるけど。


 でもやっぱり、一緒にはいれない。願うことも出来ない。

 私に出来るのは、突き放すことだけ。


 私は、あの子には幸せに生きてほしいのだ。私のことなんて忘れて。私といたいなんて願わないで。君には、君の人生があるんだから。私たちは、もうたがえてしまったのだから。

 私だって、寂しいよ。でもこれが、きっと運命なの。


 ……あの時、私と彼女は手を繋いだ。


 私が手を差し出したら、君は、嬉しそうに握って来たね。私も、嬉しかったよ。君に触れられるんだもん。例えそれが一瞬だとしても。儚い星の瞬きみたいに、君はすぐにいなくなってしまったから。……あれ、私が渡したんだっけ? あちゃー。もうちょっとあの機会にあやかっておけば良かった。


 後悔しても、もう遅いけれど。


 星の川を上っていく。この先に何が待ち受けているのか。

 時間は十分にある。ゆっくり、享受していこうじゃないか。


「またね。灯子」


 次はもうちょっと長く、手を繋ごうね。

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