Day28「方眼」(小鳥遊言葉)

 目を覚ました灯子ちゃんの意識がはっきりするのは、僕が思うよりずっと早かった。さっきは寝ぼけて僕の手を握って来たくせに。

 突然手を握られたせいで乱れてしまった字を消していると、灯子ちゃんの視線が僕のノートに注がれていることに気が付く。


「これね~、夏休みの計画書」

「計画書……?」


 聞かれる前に答えると、彼女は訝し気にこちらを見つめてオウム返しをしてきた。本当は仕事をしていたんだけど、そんなものは早々に飽きてしまったので、計画を立てることにシフトしたのだ。

 だから僕は方眼ノートに線を引いて、自由に文字を書き込んで、この夏はどうしようかな~、と、考えているのだ。ほら、方眼ノートだと見やすいからね。小学生ぶりに買ったわ。


「……スイカ割り……海……線香花火……」


 灯子ちゃんは静かに、僕が書いた言葉をさらっていく。そして何故か最後に、僕がでかでかと書いておいたものを。


「……勉強」

「受験生ですから」

「……」

「すごい『そういえば』って感じの顔だね……」


 まあ確かに、僕は学校で勉強熱心なところは見せてないけどさ……。そう思いながら僕は、苦笑いを浮かべる。


 そして君にシャーペンを差し出した。君も書いてよ、という言葉と共に。

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