Day25「報酬」(床崎さゆり)
今日も生徒たちはとても賑やか。本当はここは賑わってほしくないというのに。……まあ、元気が良いのは良いことだけれどね?
放課後になると、保健室も一旦落ち着いてくる。そこで私はようやく、一息をつくためのコーヒーを飲むことが出来た。
だけどノックの音が響き渡り、私はため息を吐く。そして、どうぞ、と告げた。
「床崎先生」
「あら、絹斗くんじゃない」
一体どんな生徒が来たのか。そう思って引き締めた心は、すぐに解かれた。……何故なら、保健室に入って来たのは私の同僚……服部絹斗くんだったから。
「床崎先生、せめて学校では先生呼びをしてくださいと何度も……」
「あら、いいじゃない。今ここに、生徒はいないもの」
そうですけど。と彼は、少し困ったように眉をひそめた。……ふふふ、彼の困り顔は可愛くて、好き。
「それで、何の用かしら? どこか怪我でもした?」
「ああ、いえ。職員室でお土産が配られたのですが、貴方の姿がなかったので。私が届けに来ました」
「あ、やった。クッキー」
彼が差し出してきた物を見て、私は思わず手を叩く。上に甘そうなジャムが乗っている、とても甘そうなクッキーだ。今飲んでいるコーヒーに、とても良く合いそう。
「では私は、これで」
「待って、良ければ一緒に食べましょうよ。コーヒーを淹れるわ」
「え? いや、私は……」
「良いじゃない。今生徒はいないし、日頃の功労会ってことで」
ねぇ、服部先生? なんて言うと、彼は小さくため息を吐いた。そして私に譲る気はないと分かったのだろう。そうですね、さゆりさん。なんて微笑みながら彼は言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます