Day24「ビニールプール」(伊勢美灯子)
きゃー、わー、と、奇声が響いている。
そのうるささに目を細めて、しかしそれは咎めるべきものではないということは、分かっていた。……だけど。
流石にこの声には、ツッコミたい。
「何してるんですか、言葉ちゃん」
「あ、灯子ちゃん。……見ての通り、ボランティア~」
見ての通り……? と私は首を傾げる。
ここは幼稚園。言葉ちゃんは園児たちと一緒に、ビニールプールで水を浴びて遊んでいた。いつも着ている服が、びしょ濡れである。ちなみに私は、フェンスを挟んで彼女に話しかけていた。
彼女が遊んでいる様子は、何と言うか、彼女も園児と言って差し支えないというか。それほど違和感がないというか。大きいお友達がはしゃいでいるのを見ると……。
「……おい君、今失礼なこと考えてるだろ」
「……考えてません」
「嘘吐け!!!!」
やはりこんな見え見えの嘘はすぐにバレた。まあ、貴方も5歳児に見えますね、なんて言ったらブッ飛ばされそうなので、口が裂けても言わないが。
……まあ、昨日の取り乱した様子を見ているので、元気になって良かったなとは思うが。
そこで、視界を塞ぐように何かが飛んできた。それと同時、服が濡れて、風が吹き抜けると涼しくなって。
……視界が晴れると、こちらに水鉄砲を構えている少年が。
「……」
「……」
「……灯子ちゃん、一緒に遊ぶ?」
「……まあ、一度濡れましたからね……」
ここ、着替えありますか。と聞くと、貸してもらえると思うよ。と彼女は笑って返した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます