Day17「砂浜」(伊勢美灯子)
暇なら一緒に海にでも行こうよ。言葉ちゃんにそう誘われた。
どうして砂浜を選んだのか……それは私には分からない。まあ、特に理由などないのかもしれない。
だって、そう言われて付いて来てしまった私も、特に理由は有していないから。
「あ、見て見てこの貝殻、すごい綺麗」
「……そうですね」
「もー!! 折角の海なのに、テンション低くない!?」
「貴方が高すぎるだけだと思いますけど……」
海に来た、たったそれだけでここまで元気になれるなんて、羨ましいことである。もちろん皮肉だ。
私は靴も靴下も脱ぎ、砂浜を素足で歩く。まだ7月、夏になったと言えど、まだ夏本番というには早い。足裏から伝わる温度は、ちょっと熱いな、くらいで済んだ。
さく、さく。歩くたびに、指の間に砂がめり込む。
顔を上げると、言葉ちゃんも私と同じように靴も靴下も脱いでいた。ただ私と違うのは、波打ち際で海を蹴り上げて遊んでいることくらいだろうか。……1人であそこまで遊べるのも、まあすごいな。
転ばないでくださいよ、と声を掛ける。分かってるよ! と答えた瞬間、彼女がよろめいて。……でも流石の体幹で、倒れることはなく。私はため息を吐いた。
……これじゃ、どっちが年上か分かったもんじゃない。
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