Day16「レプリカ」(伊勢美灯子)
特にすることもなく、図書館を巡り歩いていた。すると、今までに見たことのないスペースが増えていることに気づく。中を覗くと、そこは……美術館になっていた。様々な名画が等間隔に並び、壁に飾られている。
入り口には貼紙があった。期間限定、夏の名画展だと。レプリカではあるものの、名画の臨場感を楽しもうだとか何とか書いてあった。
もっと詳しく読むと、どうやら異能力で部屋を増やし、そしてこうして企画を開催したらしい。恐らく、期間が終わればこの部屋は消えるのだろう。……相変わらず、明け星学園はやることが違うというか……。
まあ、せっかくだし見ていこうと、私は本格的に中に入る。するとそこには先客がいた。……もう見慣れた背中だ。
「……言葉ちゃん」
「ん。……ああ、君か」
言葉ちゃんは中にある椅子に座り、のんびり絵画を眺めていた。部屋の中心に置かれた椅子から、全部の絵画が見られる。そのことに気づいた私は、言葉ちゃんの隣に腰かけた。
私も言葉ちゃんも、何も言わない。ただ静かに、偽物の絵画を眺め続ける。
美術館でいつものように騒がしく話すのは、厳禁だ。
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