Day15「解く」(持木帆紫)
「帆紫!! こっちこっち!!」
校内をうろうろしていると、聞き慣れた声が聞こえた。声のした教室を覗くと、そこには俺の義妹──心音の姿が。
そう、俺は心音と一緒に帰るため、彼女を探していたのだった。だから彼女の方から声を掛けてもらえてこうしてすぐに見つけられてラッキー……。
「ちょっと待って、今このアイス食べ終わっちゃうから」
「……お、おう……そのアイス、購買で買ったのか?」
「うん、やっぱり今日も暑いからかなー。これ、ラスイチだったよ」
そう言ってソーダ味のスティック型アイスを食べる心音。その髪は……珍しく、一つに結ばれていた。たぶん、暑いからだと思うけど。
いつもは下ろしているというのに。こうして見ると心音の綺麗な顔がよく見えて、流れ落ちる汗も、その瞳もしっかり見えて、何だか、何だ……心臓が落ち着かないというか。
「……あのさ、帆紫。そう見られると……食べづらいんだけど。……言っとくけど、このアイスはあげないから」
「え、あ、あぁ。悪い」
その声にハッとなる。彼女の頬は真っ赤になっており、鋭い目つきでこちらを見つめている。あ、照れているのだな、とすぐに分かった。
やはり、落ち着かない。そう思った俺は、心音の後ろに回った。そして。
「えっ、何!?」
「いや……こっちの方が似合ってる」
その髪を、解く。
俺を振り返ったその顔は、やはり赤くて。髪を下ろしたから、きっと角度的に、俺にしか見えない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます