Day14「お下がり」(小鳥遊言葉)

 僕は理事長室にやってきていた。そして異能力を使い、自分で書いた文字を螺旋状に敷く。それを踏み台にし、天井近くまで駆け上がった。


 僕の異能力──Stardust。文字を操る能力だ。ほんと、便利だよなぁと思いながら、僕は壁に掛けられた神棚の前に立つ。


 そこにあるものを拝借して、文字から飛び降りた。危なげもなく着地をし、文字を回収してから理事長室から出て……。


「……言葉ちゃん、何してるんですか? こんなところで」

「あ、とーこちゃん」


 聞き慣れた声がして、僕はそう反応する。そこには訝しげな表情を浮かべた灯子ちゃんがいて。その視線は、僕の手元に注がれている。


「……茶菓子を、泥棒?」

「違う違う。これ、理事長室にある神棚のお供えもの!」


 完全に犯罪者でも見るような軽蔑の瞳を向けられたので、僕は焦って弁解する。神棚、と灯子ちゃんは繰り返した。


「そ。でもずっと供え続けてても腐っちゃうから、生徒会長が取り替えてるの」

「……生徒会長って、本当にただの雑用ですね」

「……このお茶菓子食べていいっていう特典はあるけどね」


 まあこの仕事量に見合うなんて思ってないけど。と心の中で繰り返しつつ。


 一緒に食べる? と尋ねると、遠慮します。とはっきりと断られた。

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