Day11「飴色」(伊勢美灯子)

 とーこちゃん、と呼ばれ、顔を上げる。すると目の前に迫る影があり……条件反射で口を開いた。するとそこに、何かが勢い良く差し込まれる。危うく喉にぶっ刺さりそうだったので、私は恨めしげに前にいる人物を睨んだ。


「……突然飴を差し出すの、やめてください」

「大丈夫大丈夫、ちゃんと怪我しないように計算してるから」

「何の計算ですか……」


 はぁ、とため息をつく。いつかこの人の飴に殺されそうだと思いながら、私は棒を摘み、口の中にある飴を舐めた。……甘い。

 口から出して、色を確認する。……それは綺麗な、飴色だった。


「……はちみつ味ですか?」

「え、分かんない。大量に持ち歩きすぎて、自分が何味を持ってるのか……」

「……分かりましたから、出さなくていいです」


 証拠だと言わんばかりにポケットから大量の飴をポンポン取り出し、積み上がって山になっていくのを眺め、私は再びため息をつく。


 飴を口に戻した。……やはりこの甘さ、はちみつかな。なんて思いながら。

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