Day8「こもれび」(小鳥遊言葉)
昨日の雨が嘘のように晴れ渡っていた。この天気が昨日だったら天の川も見えたのかな、と思うほどの快晴で、でも過去のことをとやかく言っても仕方ない。
木陰で本を読む、なんてなんとも粋なことをしている灯子ちゃんを見つけると、僕はその隣に腰かけた。彼女は一瞬顔を上げて訝しげな表情を浮かべたが、僕に読書を邪魔する気はないと分かると、すぐに興味を本に戻した。
……静かな時間が流れる。風で木の葉が揺れて、小鳥は軽やかに歌っている。日陰にいたら、この季節でもまだ涼しかった。
隣に座る灯子ちゃんを見る。彼女には木漏れ日が降り注いでいた。その光は一点、本にも降り注いでいて、風に合わせてふらふらと照らす場所が変わる。……まるで、今灯子ちゃんが読んでいるところを教えてくれているようだった。
自分の発想に思わず小さく笑ってから、「何読んでるの?」と聞く。
すると彼女は、遂に話しかけられてしまった、とでも言いたげな表情を浮かべた。そしてめんどくさそうに教えてくれる。冬になると必ず夏へ繋がる扉を探す猫と少年の話だと。
知ってはいたけど、読んだことはなくて、面白い? と聞くと、彼女は黙って次のページをめくって。
「……読み終わったら、貸してあげますよ」
やはり面倒そうな声で告げる。でもその言葉が嬉しくて、僕は大きく頷いた。……顔を上げて僕を見つめた彼女の表情は、日差しのお陰か微かに笑っているように見えた。
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