Day4「触れる」(小鳥遊言葉)

 何かに触れるのは、とても恐ろしい。だって、壊してしまいそうだから。

 小鳥を手に乗せて去っていく人の後ろ姿を眺める。僕は一生、あれにはなれない。


 自分で言うのもアレだけど、僕は強い。明け星学園では最強なんて言われてるし、自分でもそう思ってる。というか、そうじゃないといけないと思ってる。

 自分を守るためだし、それは後悔していないけれど。


 ……守るための力を、壊すことに使ってしまうのではないか。そう思うと、怖くて仕方がないんだ。


「……いつまで固まってるんですか、言葉ちゃん」

「え」


 声を掛けられ、顔を上げる。そこには、相変わらず仏頂面の灯子ちゃんがいて。

 僕が変わらず動けないでいると、彼女は大きなため息を吐いた。


「……帰るんでしょう。行きますよ」


 そう言って、僕の手を取る。そのまま、ゆっくり歩き出して。


「……手を繋がなくても、大丈夫だよ」

「青い顔で言われても、説得力無いです」


 そんなに青くなっているのか、僕は。

 目の前にいる頼もしい背中を見つめ、僕は思わず少し笑う。


 ……他の子より強い、この子になら……迷いなく触れても、いいのかな。


 そう思いながら僕は、彼女の手を握り返した。

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