Day3「文鳥」(伊勢美灯子)

 学校から帰っていると……ふと、頭上に差す影があった。鳥だと思ったが、それは、真っ直ぐにこちらに飛び込んできて……。

 ……私の隣を歩いていた言葉ちゃんの頭の上に、ちょこんと鎮座した。


「……えっ、な、何っ!?」


 言葉ちゃんからは見えないが、何かが自分の頭上に乗ったと分かったのだろう。焦ったように慌てふためく。落ち着いてください、と言ってから、私は彼女の頭の上に乗ったものを凝視した。


 ……鳥だった。にしても、随分人に慣れている。言葉ちゃんの頭の上で、呑気にうとうとしていた。……にしてもこの鳥、どこかで見たことあるような……。


「鳥ですね」

「鳥……」


 私が答えると、彼女の動きが静止した。小刻みには震えているけど、でも極力動かないよう、努力しているような感じで……。

 どうしたんですか、と言うと、彼女は小さく。


「だ、だって、何か、僕が少しでも動いたら、鳥さん傷つけちゃう気がして……」


 何だそれ、と思いつつ、まあ、優しい人なのだな、と思っておく。


 しばらくすると飼い主だと名乗る人が来て、この鳥は文鳥だと教えてくれた。警戒心の強い子だから、人の頭に停まっているなんて驚いた、と語っていた。


 文鳥には、この人の優しさと、なんか文に親しい人だということが分かっていたのかもしれない。文鳥だけに。……いや、後者は戯言だ。忘れてほしい。

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