第3話
ロデとして、私は参加し驚く事に決勝戦にまで勝ち上がった。
相手は平民とは言え男子だったが、難なく勝ち進む。自分でも驚く程に相手が弱く感じた。
どうやらお父様の指導力は素晴らしかったみたい。
で、結局危なげなく優勝してしまったのです!
お父様も見に来ていて、拍手を送っている。みんな驚いていた。
そりゃそうよね。この時のお父様の所属は、国立騎士団特殊部隊だったのだから。特殊部隊は一般部隊・精鋭部隊で処理できない事件や国王自らの
大体班を組めば、班長を任せられるぐらいの力量があったとか。
その後私は、優勝者の特権として、『男爵』を授爵すると聞かされ焦った。
まさか優勝したら男爵になるなど知らなかったので、どうしようかと思いお父様に駆け寄って相談をしたかったのだけど、騎士団一般部隊隊長に呼ばれ色々と説明を受ける事になる。
このままだとまずいのよ!
本来は騎士隊から声を掛けられても、速攻逃げてその場をやり過ごし、行方をくらます予定でいた。
最初からいない人物なので、探されたとしても見つからない。罪人として探されているわけではないので、見つからなかったのならそもそもなかった事になったはず。
だけど男爵を賜るから、後日開催される式に出ないといけないと思うのよね。
まさか、これを勝手に欠席すれば、まずいでしょう。
ハラハラドキドキしていると、お父様からお声がかかった。
連れていかれたのは、国王の前だったので更に驚く。
人払いがされ、お父様は事の顛末を話した。
「ふむ。なるほど。で、メロディーナ、いやロデよ。お主は騎士として振舞う気はないのか?」
「可能なのでしょうか?」
国王は、こくんと頷く。
「私としても男子に負けない腕前を逃すのは惜しい。それに、今回はかなり注目された。辞退したとなれば、色んな憶測が飛び交うだろう」
「それは、ロデとして騎士を全うしなさいという命令でしょうか……」
私はおずおずと聞いた。
まさかこんな事になろうとは思いもよらなかったのだから仕方がない。
「そうではないが、辞退するというのであれば、真相を話すまでだ」
えぇ~。それでは男装して参加した意味がなくなるのですが。しかも優勝したのが私だとわかれば、お父様が言うように結婚する相手がいなくなるかもしれない。
それならロデとして騎士になっちゃう?
「陛下、お願いがあります」
「聞こう」
「はい。今回の件は、私の不徳致すところ。私が指導したのならば優勝するかもしれないという、考えが欠如しておりました」
凄く自慢げな言い方なのですが、大丈夫なの?
「今回の事をお許しいただけるのなら、かつてから打診があった騎士団一般部隊の移動をお受けします」
「おぉ、よいのか? 彼女……いや彼が除隊したとしても配属は変らないがよいか」
「はい。心得ております。どうか、騎士隊ではロデとして置いて下さい」
「ふむ。よいだろう」
「ありがとうございます」
本気なの? お父様。
というかまさかお父様、私が参加のお願いをした時から打算があったのではないのかしら? どうせ移動させられるのならと。あり得そうで怖いわ。
「では、失礼します」
その時は、この後の詳細を詰めると言う事で、私は先に帰宅した。
リリナに優勝してしまって、ロデとして騎士隊に所属する事になったと話すと凄く驚かれる。まあそうよね。令嬢が剣術大会に身分を隠したとしても、参加しただけでも驚かれるなのだから。
それが優勝して、騎士になったのだから驚かない方がおかしい。
後日私は、騎士団入隊式にてメンデスと言う家名を頂き、めでたく? 男爵になった。その日から最低五年間は、ロデとして騎士団で働く事となる。
お父様も一般部隊の副隊長に任命された。
出来るだけ素性がバレない様に、リリナに協力してもらって屋敷内でも家族とリリナ、そして執事長のみが知っている事実となった。
それからは、ドレスを着ている様に見える膨らみを帯びたコートを作り、屋敷を出る時はその出で立ちで出かけ、馬車内でそれを脱ぎ隠してある剣をそこで装備して、職場に通う日々となったのだった。
思ったより楽しい日々を過ごす。
私は、ドレスよりズボンの騎士の恰好の方が楽で好き。
大抵一般部隊の騎士になった者は宿舎に入るが、私は家から通った。
まあ一応、令嬢だから男子の宿舎で生活は出来ない。ロデは男だから。
もちろん女子用の宿舎もある。メロディーナとして参加して騎士になったとしてもやっぱり、家から通ったよね。うん。
そして16歳になった今は、一日の大半をロデの姿で騎士として活動している時間の方が長い。
今までバレていないって、凄いと思う。まあ優勝した者が令嬢だとは誰も思わないか。
お陰様で、身に着けた令嬢らしさが段々と男らしくなっていっていますが……。
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