可愛い子は旅をする、愛する親と自分のため
あれから、フォレストウルフが何体かこちらに集まってくれたため、倒れた黒装束達の処理をそのまま任せた。
ママとワタシはその後談笑しながらゆっくりと家に戻った。
その会話の中で、ふと気になることがあったため一つママに質問をした。
「そういえば、ミケさんは来なかったんだね?自分で言うのもアレだけど、ママが止めても無理やり来てるものかと。」
「ああ、それがどうやらフォレストウルフの話じゃあの黒装束共はどうやら二手に分かれてこの森に侵入していたらしくてのぅ、さすがに家を空けてしまうのはまずいと思ってミケに留守を頼んだんじゃ。」
「へぇ~、そうだったんだ。」
そっかそっか、じゃあミケさんがお家を守ってくれてるのか、へぇ………………………んん?
それって………………………。
「それワタシ達ゆっくりしてる場合じゃないじゃん!!!!!!!」
全然談笑してていい状況じゃないことに気付いたワタシは慌てて走り出す。
「お、おい!!待て待て!!ミコト!!!」
ワタシを制止するママの声も聞かずワタシは家路を急ぐ。この状況って要は、ワタシ達を襲ったあの黒装束の数と同じくらいの集団が、下手したらミケさん一人に向かっちゃってるってことでしょ!?
たしかにミケさんも強いんだろうけど、いきなりそんな数に襲われたら………!!!
そう思い何とか家までたどり着くと、そこには、
「おぉ!!!ミコト様!!!よくぞご無事で!!!」
「あ、うん、ミケさんも無事で何より…………です。」
家の扉の少し手前ほどには、倒れた黒装束達でピラミッドが出来上がっていた。
「すみませんね、ちょっと量が多かったのでお見苦しい光景となっていますが、もうすぐフォレストウルフ達がやってきて、コイツらを回収してくれますので………。」
「そ…………そう。」
「全く………急に走り出しおって………ミケがこのレベルの輩に負けるわけがなかろう?」
後ろから悠々と歩いて来たママは、その光景を当たり前の結果だと一蹴していた。
「それよりもじゃ、森の中を走ったせいで少し汚れてしまった、ミコトも疲れたじゃろう?ミケ、悪いがもう一度風呂を沸かしてくれ。」
最早黒装束には欠片も興味を示さず、ママはミケさんにお風呂を優先させた。
「フフフ、そう言うかと思いまして、キチンと沸かしてありますよ。」
「おお!!そうか、さすがはミケじゃ!!!じゃあ早速入らせてもらうぞ、ミコトもどうじゃ?」
「うぇ!?ワタシも!?」
「親子水入らずの風呂というのも、乙な物じゃろ!ほれ、行くぞ!!!」
「ちょちょちょ!?!?」
完全に気を抜いていたワタシは、強引にお風呂に一緒に入れられた。
汚れた身体をめちゃくちゃゴシゴシ洗われたのであった………。
失敗した…………………勝てるとは思っていなかったが、未だにあんな威力の魔纏ができるとは……………………………やはりクレア=ルドラは警戒しておくに越したことはなさそうだな…………。
ジジジジジジ……………。
『あー、あー、テステス。聞こえる?もしもーし。』
先程の一撃を受けた所とは別の場所にあったからか、壊れていなかった通信機器から、いつもの
「なん………だ。」
『あっれーサイコくん、どうしたの?元気無いねぇ?ハッ!?もしや道に迷っちゃった!?!?ごめんねぇ、お姉ちゃんがすぐに道案内したげるよぉ。』
「うるせぇ殺すぞ!ぐっ……………。」
くっそ、思ったよりキズは深いな…………。
「ひとまず伝えておいてやる、『ヴィーヴルの聖水』の確保は大失敗、僕以外全員やられた。」
『……………………アララ。サイコくんともあろうものが珍しい?』
「思ったより早くクレア=ルドラと衝突した。だがそれ以上に、見知らぬ魔導師に邪魔された。僕の魔法を何十発当てても耐えるレベルの魔纏と肉体を持っている、さらには他の信徒共の魔法は全て跳ね返すっていうバカみたいな技術も持っていた。あんなやつがいるなんて聞いてないぞ………。」
『フーン、その情報はその情報で収穫か……………まあ失敗したのはしょうがない。そっちに転移魔導師を送っておくから、帰ったらゆっくり聞かせてね~。バイバ~イ♪』
クソ!!あのオペレーター!!!いつも僕のことをガキ扱いしやがって!!!!帰ったらまずアイツから殺してやる…………。
翌朝、起きて朝ご飯を食べた後、本来なら修行の時間なのだが、クレアからストップが入る。
どうやら特別講義をするとのこと。
さすがに昨日のことが身に染みて、早くも身の上話をする気になったのかな?
1番初めの頃、あの昔話、『ルドラの破壊神』を聞いた時のように椅子がワタシとママの前に置かれる。
「さ、座って良いぞ。」
「うん、ありがとう。」
「さて、話すことが多いな。何から話そうか………。」
やはり話したくないことは多いのか、どこか不安そうな目をするママ。
「あのさ!!ママ!昨日は思わず教えて教えてって駄々こねちゃったけど、本当に言いたくないことなら全然言わないで良いからね!?」
昨日は感情的になり過ぎてああ言ったが、今は落ち着いている。頭もスッキリしている。お腹はまだちょっと痛いけど。
「ハハハハ!!心配するな!!!何も無駄な思い出話までは話はせんわい!!そうじゃな、ミコトには色々と話すことがあるのじゃが、一番言いたいことは先に言っておくか。」
ママは一呼吸置いて、そして力強く、ワタシに……………頭を下げてきた!?
「ミコト!!!突然ですまんが、お主にはワシの妹達、そしてワシの母様を探して来て欲しい!!!」
………………考えること5秒、言葉の意味を理解、考えること15秒、内容を理解、考えること30秒、ワタシは言葉を放つ。
「なんでワタシが!?」
ママが指す人物、それはそれぞれ……。
妹達=『ルドラの破壊神』に出てきた『四賢者』の次女、三女、四女
母様=『ルドラの破壊神』に出てきた『預言者』
ママ同様全員歴史に名を残す人達にワタシ一人で会ってこいと?
「ダ………ダメかのぅ?」
昨日のあれが響いているのか、いつもの威勢は無く今日はすでに涙目になっている。
「ハァ………ママはいつも言葉が足りないんだよぉ。なんでワタシにママの家族に会って欲しいのか理由を教えてよ。はい分かりました行ってきますなんて人、早々いないから。」
「う…………うむ、そうじゃな。すまんかった。」
そう言うと、ママは先程から手元に置いてあった、例の予言書をペラペラと捲りつつ話し始めた。
「昨日も話した通り、この予言書にはおそらくミコトが介入することで起こるような未来がいくつかあるんじゃ。以前ワシが一番最初に教えた封印された時空が動き出すという予言もその一つじゃな。そして昨日はお前が巻き込まれる予言があると色々言ったな、あの中にはたしかに悪い予言も多くあるが、全てがそうじゃない。」
そして、あるページを開きワタシにも見えるように予言書を見せてくれた。
そこにはこんなことが書いてあった。
『異世界人、繋がれぬ賢者達の懸け橋』
「………ワタシが
「その予言にも書かれているが、ワシら家族はこの予言書を手に入れたあとは一度も顔を合わせていなくてな、二度と会わない約束すらしている。そんなワシら家族はコミュニケーションすらまともに取ることができていないのじゃ。そこを取り持つために、ミコトを使いたい!!」
なんでそんなめんどくさい家族になってんだか!!!
いつものワタシならそう言っていただろう………だが今は違う。そこら辺の事情は、ワタシはフェデルから聞いている。
何でも、『ルドラの破壊神』の話にはまだ続きがあるらしい。グラナディアから去った神々の一族、つまりママ達の家族は、母親である預言者の予言により、これから先神々の一族が顔を合わせると良からぬ事が起きるという未来を予言されたため、破壊神を封印した後、それぞれに予言書を託されてからは一度も顔を合わせていないそうだ。
にしても神々の一族、ルドラの一家の話は洗脳でも受けてるんじゃないかと思うくらい預言者の予言を信じすぎていて怖い。
四人もいるんだから一人くらいは不信に思う家族が居ても不思議じゃないけどなぁ。
「ハァ………ワタシが四賢者と会ってくるのは良いよ、問題は会って何をして欲しいかでしょ?」
「おぉ!!話が早いな。」
ワタシの心配は他所に、ママはキラキラと目を輝かせて、何をして欲しいか喋り始めた。
「一番最初にお前には、破壊神の封印の話をしたじゃろう?実はお前が来てからすぐ、ワシは気になって封印の確認をしてみたんじゃ。するとなんということか、封印はあと数年で解けるであろうくらいに弱体化していたのじゃ。」
「えぇ!?」
今まで何も言わなかった割に結構重要な問題が起こってない!?!?
ワタシが焦っているのを察したのか、ママは冷静に話し始めた。
「と言っても、破壊神の封印は数十年単位で段々と弱まっていくものなんじゃ。今回もそれに近いものじゃった。」
よくあることだ、ママはそういうように冷静にワタシを諭した。
「だから今回も封印を補強しようとしたんじゃ、いつもならワシの魔纏だけでも事足りるくらいじゃったから今回もそれで済むだろうと思っていた、だが、結果は失敗。ほんの少し封印の魔力が補充されたのみで、封印の強度はほぼほぼ変わることは無かった。」
「え?なんで?いつもの封印の弱まり方と似てるんでしょ、だったら行けるはずじゃない?」
「そう思っていたが出来なかったんじゃ、原因も詳しいことは分かっていない。だから、今回ばかりはワシ以外の、ワシ並に封印に精通して且つ魔力の精度が高い者たちが必要なのじゃ。」
つまりワタシの役目は、四賢者と預言者を探し出して封印を強化し破壊神の復活を抑えて欲しいってところか。
「妹達と母様と言ったが、最悪優先すべきは実際の封印を施して且つ魔法に特に精通している次女か母様、どちらか二人に会うことが望ましい。できれば数年以内じゃ。どうじゃ?頼めるか?」
…………まあ正直やるかどうかと言われたら、めちゃくちゃやりたい。ここまでお世話になったママの頼み事っていうのはもちろんだけど、何より………色々なファンタジーな香りがする………。
ついに明かされる四賢者や預言者のご尊顔、森林を抜けた先の剣と魔法の世界…………破壊神が封印されし大国『グラナディア』…………オタクのワタシがこれを聞いてワクワクしていなかったわけがない!!!
「分かった!!任せて!!!必ずママの妹達とお母さんを探し出して、キチンと破壊神を封印してくるよ!!!」
明らかにメインの目的以外のことでワクワクしていたワタシは一通り詳しく聞いたところで迷いも無くオーケーを出したのであった。
1ヶ月ほど、森林の外に出るための準備や勉強をすることになったワタシは、暇な時間にフェデルに外に行くことを報告することにした。
「…………改めて見ると酷いなぁ。」
途中、いつもの聖水域を通ってみたは良いが、周りの大木は尽くえぐれていて、丸太の何本かは池に浮かびっぱなしだった。
周りにフォレストウルフがいる様子を見る限り、彼らがそれなりに修復に当たっているようだ。
近くを通るフォレストウルフ達にお礼を言いながら、ワタシはフェデルの縄張りまで進んで行った。
縄張りである、大木を中心とした平原には、いつものようにぐでぇっと寝そべる森林王の姿があった。
『ムゥ!?おぉ!ミコトではないか!!先日は大変だったな!!!』
全く心配していない顔でワタシを心配する森林王、意外と死にそうだったのを力説してやろうか?
『ハッハッハ!!冗談だ!そんなに怒るでない、もっと近くで話そうではないか…………ム?案外本当に怒っているのか?』
「そりゃ結構危なかったからね!!ま、もう良いけど。それよりも、今日は他に大事な用があるんだよね!」
いつもの手土産の魔纏肉を渡しつつ、ワタシは早速フェデルに森林を出ることを伝える。
いつものように肉をかじりながら話を聞いていたフェデルは、少し真面目な顔つきで返事を返してきた。
『…………そうか、事情は理解した。だが、本当にお前程度が通用する世界だとでも思うのか?』
「ウッ……………そ、それは!!」
『我はあの程度の魔術師共にすら苦労する様な半端者を、外に出そうとは思わんぞ。』
あの戦いアンタも見てたのか…………。
どこか不安を感じる声でフェデルはワタシに返事を聞いてきた………。
………たしかにワタシはあの時、ショタ装束に負けた。ママが来なかったら死んでいただろう、だがもうあの時のワタシとは違う。
もう慢心も諦めもしない!
「次は油断も、諦めもしない!一人で旅を始めても修行は止めないし、中途半端なゴールは目指さない!!」
『……………………そうか。』
すると、フェデルはそっぽを向きながら返事をした。
『ならば何も言うまい。この森林の出入りは自由にするのだな。ただし、そう言ったからには、半端な成果で戻ってきたらタダじゃ置かないからな?分かったなミコト!』
「……はい!!ありがとう!!フェデル!!!」
何だかんだ、この森林王は心配してくれているのだ、5年間、ワタシの遊び相手となってくれ、森林内でのワタシのある程度の自由と安全を見守ってくれた、優しい狼なのだ。
無事森林王の許可を得たワタシは、また家へ帰るのだった。
そしてそこから1ヶ月間、ワタシはクレアにより詳しく戦闘のイロハを学んだ、
ミケさんからは社会に出た時のマナーや、どんな施設があるかなどを学んだ。どうやら、世界には
フェデルからは、それなりに世界の危険な生物について学んだ。フェデル以外の
そう滅多に遭遇するとは思えないけど、覚えていて損は無いだろう。
今までよりもより濃密な1ヶ月を過ごしたワタシ、そしていよいよ、出発の日は前日となった。
「いよいよ、出発じゃな。」
「あ、ママ。」
旅立ちの前夜、ワタシはなんとなく家の屋根に登っていた。魔法で飛べるようになった今はすでに高所恐怖症は多少克服していた。
そこに、やはり心配なのかワタシを探していた様子のママが訪れたのだった。
「本当は、断っても良かったんじゃぞ?こんな突然のお願い。」
「ウーン、まあ正直断ろうかどうかちょっと考えたよねぇ。けどさ、せっかく自分の知らない世界に来たんだからさ、自分の目で、耳で、色んなところを見てみたいって思うのが人間じゃない?」
不安や恐怖は少なからずある。今まで見守ってくれていた人達の元から離れ、何もかも自分で決めなくてはならないのだから。
だがそれ以上に好奇心が大きい。まだこの世界で見ていない物がたくさんある。見たことない生き物、魔法、
そんなの全部自分で見つけてみたいし行ってみたくなっちゃう。
「そう……か。フフ、そうか。なら良いわい。好奇心旺盛なのは結構じゃが、ワシのお願いは忘れてくれるなよ~?」
「だーいじょうぶだいじょうぶ!そんときはきっと、都会の美味しいお菓子持ってきて、新しくできた友達とか連れてきながら話してあげるから!!!」
そうそう、ママの家族を探すっていうメインミッションは忘れずにね。
「さあ、明日の出発は早いぞ。忘れ物が無いか確認して、早めに寝るんじゃぞ。」
「はぁい。おやすみママ。」
そして、いよいよ出発の日となった。
「ちゃんと渡した物は持ちましたか?着替えは?お金は?良いですか、知らない人には着いて行かないようにしてくださいね?」
「もうミケさぁん、これ四回目だよ!大丈夫、全部持ってる。」
いつになくミケさんが心配し、すでに三度も確認した持ち物を確認してくる。まるでミケさんがお母さんみたいだ。
「全くミケは心配しすぎじゃ。ミコトじゃぞ?ちょっとした暴漢なんて全部ぶっ飛ばすもんじゃっていう勢いで送り出せば問題無いわい。」
「あなたはもうちょっと心配してくれないかな?ママ?」
ママの方は相手が何をして来たってお前なら大丈夫だろうという目でこちらを見つめてくる。
「とは言え、外の世界はそれなりに曲者が多い。ミコトにはこれらを渡しといてやろう。」
そう言って渡されたのは、見た目やサイズがマイクっぽい様な、杖?それと、こちらはまた見覚えがある書物、そういつもクレアが気にしている予言書である。
「ちょちょちょえぇ!?このマイクっぽい物はよく分からないけど、これ預言者の予言書じゃん!?貰っていいの?」
「ワシは別に内容は全て暗記しとるし特にいらん。お前が持ってた方が良いじゃろう、それがあることでワシの家族達と話しやすくなるかもしれんしな。」
たしかにそこまで厚さは無いとはいえ、百ページ以上は間違いなくありそうな予言を暗記………さすが数百年生きてるロリは違う。
「えーと、ちなみにこのマイクっぽい杖は?」
「まいくというのが何かは知らんが、ソイツは昔
「ああ、それですか。科学王国で珍しく魔法能力を向上させるものでしたので、数少ない生産品だったのを無理に購入したものでしたが、我々では持て余していたので丁度良かったです。」
「へ、変なマイク。まあ、ありがたくいただいておくね。」
一応両方ともリュックにしまっておく。これでなんとか準備はできた。
髪型はポニーテールでまとめ、服装も魔力精度が向上しつつ動きやすいママお手製の魔道服、少しゴシックさのあるブラウスに、少し短めなフリルスカートを合わせた感じ?全体的に深めの青で構成されていて、うん、可愛い!
「よし!それじゃ、早速行ってきます!!!」
「お気を付けて!!!くれぐれも、知らない人間には注意を払ってくださいね!!」
「手紙出すんじゃぞ~。後いつでも帰ってこーい!」
言いたい言葉は昨日済ませたため、あっさり風味で出発である。あ!一つだけ忘れ物!
「忘れてた!!」
「ム?どうしウギュ!」
ワタシは急いでママの方へ走っていき、お別れのハグをした。親子ならコレはしておかないとねぇ~!
「ママ、行ってきま~す!!!」
「ムー!!ムーーー!!!プハァ!!!早く行かんかい馬鹿者!!!」
ワタシの胸の中に数秒埋められたママは、ちょっと怒り気味に、けど満更でも無い様子で見送ってくれた。
それでは、本当に……。
「じゃ!行ってきまーーーーす!!!!!!」
手を振って見送るママとミケさんを背に、ワタシはいつもの森林の奥地とは反対方向、家の裏手側、森林の出口に向かって歩き始めたのであった。
森林の入口側には普段はあまり来ない。
外の世界が気になるワタシにとっては、他の人間が通るかもしれないここは何度も通ってみたいところではあるが、いつもワタシが昔話を聞きに行っているフェデルはこちら側には滅多に姿を現さないこと、そもそも家を抜け出す時間が普段から少なかったことを踏まえるとこちら側は全然来れないのだ。
とはいえ、それでもよく見る生き物達が多いし、来れる時には入口まで来たこともあるため迷わず来れている。
「ここら辺は、『ビーバード』の巣、その近くにはハチミツのおこぼれを狙う『ハニーモンキー』の群れ、その近くにたしか………あったあった。」
かなり特殊な目印ではあるが、こんな目印でさえ覚えておかないと迷ってしまうのだ。このヴィーヴル森林、普通に住んでるから気にしてないけど、世界的にも『大迷宮森林』って言われてる程広くて迷いやすい森林らしいし。
今の目印を近くとした地面を見渡すと、ようやく沿道が見えてきた。
フェデルの話では、かなり昔はフェデルも人間たちとは友好的で、目に見える沿道をフェデルの縄張り辺りまで伸ばすのを許可していたらしいんだけど、いつの間に欲にしか目が行かなくなった人間が嫌いになったフェデルは、沿道を配下達に綺麗さっぱり消させてしまい、今のような迷宮森林にしてしまったらしい。
「ようやく、出られるんだなぁ。」
今までも、強引に抜けようと思えば抜けられた。けど、何度も何度も注意されていたせいで怖かった。そんな森林の外の世界、そこには一体何が広がっているのか、ちゃんと見てみたい。
沿道を1歩1歩進み、周りの鬱蒼とした大木も視界から消えていき、ついに世界はワタシの目の前に来た………!!!
視界に広がったのは、金色に光る草原と、見たことがあるようで見たことがない動物、沿道には馬車に乗る人やバックパックを背負いながら歩く商人のような人達、何より凄かったのは、遠目に見えるレンガ造りの巨大な塀に囲まれる大国。
あれこそThe.ファンタジーとでも言えるような西洋風な大国、森林と競っても負けないほどに広そうなあの国こそきっと…………。
「あれが…………グラナディア………世界一大きい国………。」
森林の入口でワタシは思わず世界に見惚れていると、ワタシにいきなり誰か話しかけてきた。
「おい、おーいアンタ!そこだよ!そこの魔導師のお嬢ちゃん!!」
「へぁ!?ワ、ワタシ!?何ですか!?」
どうやら馬車の運転手が遠くから降りてきたようだった。
「何ですかっつったって、アンタそんなとこにいたら森の魔物に食われちまうぞ?入口とはいえそこは
そうだった、家の人間(もとい人間じゃない人達)含めて、ヤバい強さの人しかいなかったから忘れてたけど、迷いやすさだけじゃなくここ魔物の強さも上澄みのヤバい場所だった。
「あ、アハハ!すみません、ちょっと観光で来てたもんで、あまりの大きさにビビっちゃってました。………あ、そうだオジサン、もしかしてあなたの馬車ってあのグラナディア王国行きですか?」
来た道から見てもおそらくはグラナディアに向かう馬車である。
「ああ、そうだよ。お嬢ちゃんもそうだったか。帰るついでだ、駄賃さえもらえりゃ乗せてっても構わんぞ。」
「本当!?えっとじゃあ、はい!これだけあれば足りるでしょ!!」
そう言ってワタシは、ママから貰ったお小遣いから、
すると、馬車のオジサンは目を丸くし叫ぶ。
「バッバカ野郎!?どこから持ってきたこんな大金!?足りるどころじゃねぇだろ!?こんだけありゃ酒場に行ったらそこらの飲んだくれ全員に酒奢れちまうぞ!?」
「多かった?まあまだまだあるしもらってよ。門出だし、大盤振る舞いで払ったげる。」
どうやら
しかし、このオジサン人が良いのか、1枚の金貨を受け取り、残りの9枚はこちらに返してくれた。
「
「おお!ありがとう!!あぁ、じゃなかった、ありがとうございます!」
無事馬車に乗せてもらったワタシは、何とか迷わずグラナディア王国に迎えそうです。
まずは冒険者登録、いやその前に宿探し?街ゆく人みんなに、四賢者の居場所を聞いてみるのもアリかも?
こうしてワクワクドキドキの異世界の冒険は、ついに幕を開けるのであった…………。
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