第10話 ~親友との別れ~

「おい!だいじょうか?おい!」

「だれか、救急車呼んでくれ!」


当時は携帯電話もスマホもない時代である。


「いやぁ~!!!」


親友の母が通りの向こうから、取り乱し、叫びながら駆けてきた。

腕と足が変な方向に曲がったままで、頭が血まみれのわが子を抱きよせてうずくまった。

その足は素足だった。


しばらくすると、遠くから救急車の音がした。

母の腕の中で、まだ見開いたままの彼の両目と目が合ったとき、ほんの微かに声を感じた。


「ごめん」


後悔と懺悔、親友の最後の思念だった。


救急車が到着し、親友と母親が病院へと運ばれた。


「こんな事故してしまって」

「ほんとうにすみません」

「なんて謝ったらいいか」


車は道路の脇に止められて、運転手が警察官から事故の状況を聞かれている。


「俺が悪いのか?まったく、飛び出してくんじゃねぇよ」

「急いでるのにさぁ~」

「あぁ~あ、近道なんてするんじゃなかった」


運転手からは、そんな思念が伝わってきた。


僕は、目の前で起きたことを警察に話すため、母親と一緒にパトカーに乗せられた。

その日は学校も休みになったという。


夜、緊急連絡網で彼が交通事故で亡くなったということと、通夜と告別式の日時が伝えられた。

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