第7話 ~理由無き理由~
彼が僕を無視し始めるようになって、1週間程が過ぎた。
その当時、何が彼の気に障ったのか理解できず、悶々とした日々を過ごしていた。
僕は、人の感情は読めても人の気持ちまでは理解できない少年だった。
でも、僕にとって、唯一の友達だった彼の存在は、とても大事だった。
だから、理由が知りたくて、なにより、元のように仲良くなりたくて、勇気を出して彼に話かけた。
「ねぇ、どうかした?僕、なにかした?」
「うるせぇ、近かよんな!」
以前とは明らかに言葉遣いが違っていた。
彼は、それ以上何も言わずに、クラスの頭のいいと言われる人たちの輪の中に向かって、走っていってしまった。
「あいつ、なまいきなんだよなぁ~」
彼らのうちの一人が、こっちを見て、わざと僕に聞こえるようにそう言った。
友が一瞬振り返り、僕と目が合ったその時に感じたのは、腐りの感情だった。
後日分かったのは、彼らは例のテストの日の放課後、僕の親友だと知っていた彼を自分たちの仲間に引き込んだ、ということだ。
彼らの理屈では、目立っていい人と、目立ってはダメなヤツがいて、目立ってはダメなヤツが目立つことは彼らにとっては「なまいき」なのだそうだ。
何であれ、自分たちが出来なかったことができた「なまいき」なヤツがいる事実。
それは、自分たちが理不尽に淘汰されるのかもしれない、という恐怖でしかない。
だから「なまいき」なヤツを孤立させて、その恐怖と一緒に不都合な事実を消し去りたい。
ただそれだけなのであろう。僕はそう理解した。
だからって「なまいき」ってなんだ。
僕にとって大事な親友を奪われる理由になんてなるわけがない。
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