第15話 レイヤー祭
今日も科師部から召集がかかる。なんだろう?また厄介なことには間違いないが……。
「寺田さん、こんにちは、先に来ていたのですね」
「あぁ、まあな」
すると佐藤先生が女子生徒を連れてくる。
「美術部の吉川さんだ」
「よろしく、お願いします、困っているのです」
「それは私から言おう、実は彼女は母子家庭なのだが、母親まで急死してね。お金に困っているのですよ」
「そんな相談、自分たちにされても、困ります」
「まあ、最後まで話を聞け、彼女の母親は資産家の娘らしいく古い洋館所有しているのですが、そこには幽霊が出るという話で処分出来ないでいる。そこで君たちにそこを調査してきて欲しいのです」
「分かりました、要は幽霊退治ですね」
「まあ、そんなものだ、危険が無いようダビンチを護衛に付けるよ」
「で、寺田さんは行くますか?」
「分かったわ、たまには、活動しないとね」
そしてその洋館に行く途中、吉川さんは母親について語り出す。
「私は幼いころに父を亡くし、母親だけで育て―――いや、母親は仕事に忙しく、私は一人ぼっちで生きてきた。私はそんな母を許さない。洋館という資産がありながら、忙しく仕事だけをやっているなんて、きっと私の事なんてどうでも良いに決まっている」
うーん、なんか母親に対する養護の使用がないね。その話が本当なら母親を恨んでも仕方ないか。
そんな話をしているうちに洋館にたどり着く確かに大きいこれなら土地だけでもかなりの金額になる、吉川さんが独り立ちするためのお金は困らないだろう。
「よし、中に入るぞ」
「別に怖くなんてないけど、西澤君先に行ってよ」
要するに怖いのね。寺田さんはホントある意味素直な人だ。そして、奥に進むと大きな扉がある部屋にたどり着く。
「なんか、いかにもという感じ」
どれ、開けてみるか、扉に触れた瞬間。バチと静電気が流れたみたいな感覚が襲う。
「これは、霊的結界が張られている、どれ吾輩が解いて見せよう」
ダビンチは扉に体当たりをして、結界を破る。すると、自然と扉が開く。
「これで、大丈夫、中に入れる」
結局ダビンチが先頭に立って進むことに。そこは、油絵のキャンバスがずらりと並んでいた、モデルはすべて吉川さんだ、小さい頃から最近のものまで。
「これは」
「絶句する吉川さん。たぶん、母親が描いた物だろう、どうやら吉川さんの予想は外れたらしい、きっと母親も死期を感じて少しでも多くのお金を残す為に働き、そしてこの洋館とキャンバスに描かれた絵を残したかったに違いない」
「お母さん……」
「吉川どの、これで分かっだろう、そなたは愛されていたのじゃ」
「はい」
泣き崩れる吉川さん
うん?空中に浮かぶ女性がいる。女性は少し微笑んで消えていく。俺はあえてこのことを言わなかったそれは言う必要が無かったからだ。そして、洋館は取り壊され更地にされ売りに出された。吉川さんの描かれた絵は学校の美術室に置かれることになった。少女には大きな目標が出来た、画家になり何時が母親の絵を描くという夢が。
***
竹野彩萌に呼びだされて、今日は隣町まであるイベントに行くことに、すっかり友達になっている。
竹野は基本良いやつだし、コスプレ趣味も慣れれば問題ない。
目的の駅の改札で待ち合わせである。少し早く来すぎたか……。
すると、竹野彩萌が大きな荷物を持って現れる。大体荷物の中身は分かるが。
「すまない、少し遅れたか」
「気にするな、俺も今着いたところだ」
こうゆう友人に対する気遣いをするのは俺の中では当たり前であり。ある意味、竹野を異性として見ていない証拠である。
しかし、本当のデートだったらどうだろう。
「では、行きますか」
こうして二人で歩いているとカップルのようだ。竹野彩萌は普段は化粧もしないほど地味だが可愛い方だと思う。しかし、この辺が異性として感じられない原因なのかもしれない。
電車に乗ると……。
「何だ、この乗り物は!」
宮姫は電車に乗るが初めてのようなのでやたらとはしゃいでいた。今回は霊体での移動なので、どんなにはしゃいでも大丈夫である。
「この動き、何か癖になりそう。他の種類の電車なるものも有るのだろう?」
「一番、この電車と違うのは新幹線かな。あれはスピードも違うし乗りが良いからね」
「なに、これよりもすごいものがあるのか、是非乗せてくれ」
「無理をいうな、いくらかかると思っているのだ」
「そうか、やはり、すごいのは高いのか」
そして、目的の駅に到着。
「着いたね、さて、行きますか」
「おう、で、何のイベントなのだ?」
「それはもうすぐわかるぞ」
竹野は不敵な笑みをうかべる。建物の中に入ると明らかに派手な制服を着た人やピンク、グリーん、パープル色のウイックを付けた人とすれちがう。これはひょっとして……。
「西澤、十分待っていてくれ」
やはり、あれをやるのか。
そして、十五後
「マジカルメイド彩萌ちゃん参上」
竹野は決め台詞を何時ものように言う。やはり、何度も見ると人間とは不思議なもので慣れてくるのであった。竹野彩萌が、この格好をしても不思議に思わない、時点で俺も毒されたのか?いや、俺はオタ趣味を否定しないので、慣れただけと思うことにしよう。
「さあ、会場に行くぞ」
ある部屋に案内させられるとそこは、完全なコスプレ会場だった。
うん?あれは科師部の寺野舞ではないか、普段はギャル系ファションなのでコスプレ姿はかなり目立っている、隣にいるのは『陰陽の髪飾り』の光君ではないか、光君も実体化して緑のツインテールでテクノ的な衣装を着ている、確か有名なキャラでボーカロイドある。
こっちに気付いた、そして近づいてくる。
「西澤君。奇遇ね、こんな場所で会うなんで」
寺野さんは得意げに光君を見せびらかす。たぶん、光君のサイズだと手作りなのかな?待てよ。『陰陽花嫁』はその姿を自在に変えることができると聞いたことがある。
実際、宮姫はその姿を自在に操っている。つまり、『陰陽の髪飾り』の持ち主が、コスプレ趣味があればとてもお得なのである。特に寺田さんのように男の子に女装させるのが趣味の人はたまらないだろう。
「あぁ、こんにちは」
しかし、光君は男の子なのに女装させられて嫌じゃないのかな?
本人を少し呼び出し聞いてみるか。
「光君そんな恰好させられて苦痛じゃない?」
「いえ、自分はマスターの命令は絶対ですから」
光君は自信をもって言い、それが当たり前だと思っているようだ。どうも『陰陽の髪飾り』は本来、主人に忠誠を誓うはずらしいのだが。何故、宮姫はあのように態度がでかいのか不思議でしょうがない。
「そうなの、頑張ってね」
ホント、宮姫に見習わせたい。あの毒舌を何とかしたいね。
「ねえ、このボーカロイド声が少し変じゃない?」
竹野彩萌が不思議そうに尋ねる。
「いや、男の子だから」
「え?この可愛い子が男の子?」
竹野の驚き方は尋常ではない。よほどのショックだったようである。
「負けた、いろんな意味で負けた。私より濃い人がいるなんて……」
その表情は青くなり、小声でブツブツ言い出す。
「主殿、我もせっかくじゃ具現化してこの祭りに参加したいのだが」
「良いが、いつものと違う姿にしてくれよ」
「分かっておる」
「そると、宮姫はポンと前転して実体化したのであった」
それは背の高く胸ははちきれんばかりの巨乳でスカートはギリギリのナース服で合った。どこで、そんな恰好覚えたのだろう、しかし、厳密にはこの会場のコスプレとは違うが。
「どうじゃ?気にいったか、主殿」
確かに、すごく綺麗な大人の女性である。すると、周りの様子が、ざわざわしてきた。
カメラを持った、男の人たちがだんだん集りだしたのである。
「お姉さん、一枚良いですか?」
「俺も、俺も、お願いします」
なんかすごいことになってきた。男たちは何人も集まり撮影会が始まる。
「主殿、この撮影されるというものは、気持ちの良いものしゃな」
絶好調の宮姫を見て寺田さんが寄ってくる。
「何か、悔しい」
宮姫を見て、寺田さんが何か感情的になったようだ。
「ねえ。光君、バニーはどうかしら?」
「マスター、体型の分かるコスは自分にはむかないのでは?」
「たしかに……」
なんか寺田さん、むきになっているがコスプレで目立たないのはそんなに悔しい物なのだろうか。
「うん?」
いつの間にか竹野彩萌が私服に戻っている。
「男に負けた、男に負けた、男に負けた……」
こっちも何か大変そうである。とかく、コスプレとは奥が深いものである。
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