第14話 御神体現る。

 今日は休日、やることもなく部屋で暇を持て余していた。


「主殿、部屋の中は平和じゃな」

「ああ、今日は天気がいいな」


 俺は部屋の掃除を片手に暇を潰す。すると窓を叩く音がする。


 とんとん……。


「誰かいませんか?」


 何だろう?ここ二階だぞ、かなり怪しいが窓を叩く音が続く。俺は仕方なく開けてみる。すると、頭がキツネ耳で尻尾も生えた。着物姿の男性が現れた。


「え?妖怪?」

「違います、これでも稲荷神社のご神体の片割れのテンです」

「その、ご神体さんが家に何の用?」

「ピアノが聞こえたので、ここなら頼れる人が居ると思いまして」

「また、風夏のピアノか」

「いいえ、主殿それは違いますぞ、風夏殿のピアノはきっかけでしかなく、たぶん、主殿に引かれてきたはず」

「俺に?」

「主殿は気づいていないかもしれませんが、すごい霊能力を秘めています」

「そうなのか」


 今更、何処が優れているのか言われても、どこがすごいのか分からないと思う。


「それで、何が困っているの?」

「はい、私の相方さんが行方不明でして、ぜひ、手伝ってください」

「つまり、俺らにそのご神体の片割れを探して欲しいと」

「はい、お願いします」

「仕方ない、手伝うか」

「で、どうやれば良いのだ」

「我に任せよ、霊的結界を張り、それに引っかかれば、いいのじゃ」

「つまり霊的なレイダーみたいなものか」

「まあ、良い、行くぞ、主殿」」


 そして街をぶらぶらと、俺と宮姫とテンが三人で歩いている。実際やってみると、かなり暇である。何か虚しくなってきたので、休みを入れるか。


「宮姫、そこの喫茶店で休まないか?ブルーマウンテン・ブレンドがあったら飲んで良いぞ」

「そうか、分かった、休もう」


 そうして、一行は喫茶店に入る。宮姫は具現かしているがテンは見えないらしい。


「テン、大丈夫か?ここに居ても何もすることがないぞ」

「かまいません、手伝ってもらっている身ですもの」

「そうが、なら遠慮なく、俺たちは珈琲を頼む。この店はアメリカンとブレンドしか


 無かったので、宮姫の機嫌が悪い。まったく贅沢な奴だ。


「それで、何で相方さんが行方不明なの?」

「え、それは、少し言いにくいです」


 言えないほど深刻なのか。そして、珈琲を飲み終わり、捜索再開。また、ぶらぶらと街を歩くだけ、これはいつ終わるかと途方に暮れる。


「おったぞ、ここから、1キロほど北の方角じゃ」


 宮姫が声を上げる。早速、俺たちは急いてその場所に向かう。そこは、小さな公園であった。


「コン?出てきてください」


 コン?そうか相方の名前か。しかし、どんな理由で行方をくらませたのだろう?


「なんで、ここが分かったの?」


 頭がキツネ耳で、尻尾も生えて、着物姿の女性が現れた。


「五月蠅い奴だな、そんなに大体、俺を拘束するな」

「何言っているの、もともと、あなたが悪いじゃない」

「何よ、若い女性の参拝客にデレデレしちゃって」

「良いだろ、少しくらい」

「私という者が居ながら、何が不満なの?」

「そうゆう、拘束したがるところだよ」

「ま、開きなおりましたね」


―――――


 このような言い争いがしばらく続いた。要は夫婦喧嘩だった。


 よくやるわと気持ちがめいる。


 しかし、ホント天気もいいことだし、何が楽しくて喧嘩をしているのであろうかと


 呆れる。


 そして、数時間後……。


「私も言い過ぎたわ、ごめんなさい」

「もともと。俺が悪いのだから」

「言い過ぎたこと、許してくれるの?」

「当たり前じゃないか」


????


 何時の間に仲直りしている。


「さあ、神社に帰りましょう」

「はい、あなた」

「え?」


 本当に迷惑なご神体だ、こんなのが神社に祭られていると思うと悲しくなる。


「西澤さん、宮姫さん。ありがとう」


 テンとコンはそう言うと空へと消えて行った。


 俺の休日を返せよと心の中で大声をあげる。


 あぁぁぁ、疲れた、帰って。寝よう。


 それから数日後。


 とんとんと窓を叩く音が聞こえる。嫌な予感がする。どうしよう。



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