第5話 マジカルメイド参上

そして、翌朝。スマホのアラームが鳴る。もう、起きる時間が来たようだ。


「うーん、もう少し……」

「早く起きぬか」


 この声―――うーん、夢じゃ無かったか。


 そう『陰陽の髪飾り』の主になったのだった。朝、可愛いい人形の様な存在に起こされるのは、悪くは無いのだが、もう少し素直になってくれると嬉しいと言った方が良いか。


 細かいことを言っていても仕方ない。起きて学校に行くか。俺の通う高校の伝統が有り。その名も城北高校、城の北つまり城下町の北にあるからでそのままの名前である。朝のしたくを終え出かけようとすると宮姫が付いてくる。


「お前も行くのか?」

「何か問題でも。どうせ誰にも見られることもない」


 確かに霊体の時は誰にも気づかれないみたいだ。


「また人型になって騒動をおこすなよ」

「分かっておる」


 少しというか、かなり不安な気分だが仕方あるまい。


「くれぐれも。突然話かけるなよ」

「了解した」


 そして、自転車に乗り出かけようとする。


「我はかごの中で良いか?」

「好きな所に乗ってくれ」


 俺がそう言うと宮姫は自転車の前かごに乗り、上機嫌で出発を待っている。


「それ、出発じゃ」


 何か気になる点があるがここは深く考えるのは止めておこう。


「おーこの乗り物、気持ちが良いな。もっと速度はでぬか?」


 すごく気になる点があるが。まあ、本人が楽しいならいいだろう。そんなことをしているうちに高校に到着。駐輪場に自転車を止め。昇降口に向かい教室に着く。


「ここが学校なる場所か、我は少しわくわくしてきた」


 教室に入るといつもは大人しい『竹野彩萌』がこちらに近づいて来る。


「あなた、臭うわ」


 竹野はまるで野生動物が獲物を狙うように声をかけてくる。どうやら宮姫に気が付いたようだ。


「はい?」

「シラを切ってもダメ、何かに取りつかれているでしょう」


 やっかいなことになった。竹野は宮姫を感じることが出来るらしい、どうする?


「放課後5階の空き教室に来なさい」


 竹野の真剣さに戸惑いを隠せないでいた。確かに『陰陽の髪飾り』という宮姫にとりつかれたとも言えるが。


 別に害は無いし、困ったものである。


「どうやらこの娘、我のことを感じる能力があるらしいな。ここは大人しくしたがった方がよさそうじゃ」


 俺は宮姫のアドバイスに従い放課後。呼び出された教室に行くことに、そこには竹野がすでに来ていた。


「竹野さん―――で……何の用ですか?」


 俺は慎重に言葉を選び話かける。


「十分間待ってなさい」


 と、言うと竹野彩萌は教室を出ていく。呼び出していておいて、待っていろとは普段はあんな人ではないはずなのに、何も起きなければ良いのだが。


『十五分後』


 まだ、来ない何をやっているのやら。すると、入口が突然開き……。


「マジカルメイド彩萌ちゃん参上」


 それは竹野彩萌の変わり果てた姿だった。具体的には怪しいステッキを持ちメイド風エプロンにメイド帽……それは衝撃的な光景だった。


「薄い生地に短いスカート、恥ずかしくないですか?」


 人間不思議なもので、直ぐに冷静さを取り戻し普通のことを言ってしまう。


「大丈夫です、私はマジカルメイドだから」


 しかし、校内でこの格好は不味いだろうに。


「で、これからどうするの?」


 何か同情的なものを感じ早く終わらせてあげたくなった。


「えー君は何かに、憑かれている。この私が救い出してあげる」


 ここはシラを切るか。


「いや、要らないから」

「ダメです、このマジカルメイド彩萌ちゃんが……」


 某イベント会場でもないのに、この本格的な姿は先生に見つかったら不味かろうに。


「それで、これからどうするの?」


 竹野は顔色が悪くなり、何かが限界のようだ。


「いや、少し用事を思い出したわ―――えーと、ただいま交渉中なので許可が下りるまで我慢してね」


 竹野彩萌は、急いで教室を出て行った。


「あの娘、我を感じることはできてもそれ以上のことはできないと見たが。うむ、本当に霊能力があれば我が無害だと分かるはすじゃ」


 何か無駄な時間を過ごした気分だ。仕方ない、教室に戻ろう。


「宮姫帰るぞ」

「うむ、そうするとするか」


 宮姫が来て、学校一日目にしてこの騒ぎ先が思いやられる。

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