第2話 喫茶店にGO

 俺も外行きに着替えて宮姫と出かけることにした。そして、俺たちは外を歩き始める。宮姫はあたりをと興味ぶかそうに眺めている。


「ほ~う、この辺もずいぶん変わったものだな」


 しかし、1キロほど歩くと、宮姫は汗をかき呼吸が乱れる。かなり苦しそうだ。


「少し休まぬか?この姿はお気に入りなのだが体力が持たないのが弱点」


 さらに顔色が悪くなり、汗が出ているようだ。ここは一休みするか、俺もここのところは運動不足でいけない。宮姫ほどではないが疲れた。


「なら、すぐそこに行き付けの喫茶店がある。もう少しだ、我慢してくれ」

「あぁ、頑張るぞ。しかし、こんなことでバカにされるのもしゃくじゃな。ホント、霊体なら疲れないのだが」


 そんな事を話していると喫茶店『T&T』に着く。


 扉を開けると『カラン、コロン』と音がなる。


「ほう、これがこの時代の茶店かなかなかだ」


 宮姫は上機嫌であたりを見回す。やはり、この時代の物は色々珍しいようだ。


「分かったから、席に着こう」


 席に着くと、おばちゃんがメニューを運んでくる。


「こんにちは。おばちゃん、また来たよ」

「ありがとうね、ゆっくりしていってね」

「はい」


 ここのおばちゃんの見た目はキツイのだが性格は良好。常連になってしまえば、気持ち良く挨拶をしてくれる。


「この中から、選ぶのか?」


 宮姫は興味深げにメニューを見ている。


「では、このブルーマウンテン・ブレンドなる物を飲んでみたい」


 はぁ?一番高い珈琲選びやがった。まあいいだろう。俺はブレンドを頼むか。


「すいません、注文が決まりました」

「はい」


 おばちゃんがオーダーを取りにくる。


「ご注文は以上でよろしいですか?」

「奥方、この自家製チーズケーキも頼む」


 おい、何故チーズケーキまで頼む?お金が無い高校生にチーズケーキまでか、勘弁してくれよ。


「はい」


 おばちゃんはメモを取ると戻っていく。そして、しばらくすると注文した品が届く。


 宮姫は珈琲を一口飲むと……。


「美味いな―――この飲み物気に入った」


 当たり前だ。この店の珈琲は高級で有名であり。しかも、一番高い物を頼んだのだから。それに比べてブレンドは一番安いが、それなりの美味しさがある。それがこの店の良いところだ。


「このチーズケーキなる物も美味」


 そうですか―――この宮姫は美味い物に鼻がきくようだ。


「満足したか?」

「うむ、満足じゃ、さて帰るとするか」


 『陰陽の髪飾り』確かに何の役にも立ちそうも無いのだが、この宮姫を作った人の気持ちが分かる気がする。


 生意気だが何故か可愛く思える不思議な存在だ。そして、散歩の帰り。宮姫は霊体化し俺の肩に乗っている重さは感じないのだが、何とも複雑な気分である。すっかり慣れた恋人の様な扱いだ。


「どうした、顔が赤いぞ、まさか照れているのか?」

「そんなことないよ、ただ少し暑いだけだよ」


 本当に変なことに良く気が付く。


『陰陽の髪飾り』か……本当に不思議な存在だ。


「そうか、せっかくじゃサービスとして、この姿はどうじゃ?」


 そう言うとくるりと前転して、8等身で胸元が大きく開いたお姉さんに姿を変える。


「どうじゃ、可憐であろう」

「すごい、胸が着物からはみ出しそうだ。だがその恰好は目立ち目立ちすぎないか?」

「大丈夫じゃ、いざとなれば姿を隠せば良い。それ、この胸はどうじゃ」


 そう言うと腕を組み大きな胸を押し付けてくる。やわらかくて気持ちが良い。


「どうした、さっきよりさらに顔が赤くなったぞ」

「うるさい、暑いだけだ」

「これでも殿方の気持ちは分かる方じゃ」


 しかし、この大人びた立ち振る舞い、この『陰陽の髪飾り』こと宮姫は年齢はいくつなのだろう?少し、聞いてみるか。


「宮姫、お前の年齢いくつだ?」

「我をその辺の式神と一緒にするな、我は陰陽師に仕える『陰陽の髪飾り』という特別な存在なのじゃ、分かったら覚えておけ」

「そんなことではなく年齢を聞いているのです」

「だから我は『陰陽の髪飾り』で年齢など無い。無理に言うなら、あのお方に術をかけられた年齢かのう」


 答えたくないのか、これ以上は聞かない方が良いな。


 『陰陽の髪飾り』とはいえ少女、いや女性か……。


 しかし、やはり気になる。


「宮姫が『陰陽の髪飾り』で特別なのは分かった。それでどこが特別なのか?」


 少し、いじわるな質問だったかな。


「それはこうじゃ」


 そると宮姫はさらに胸を押し付けてくる、これは少し危険こんな公衆の面前で何を考えているのだ。すると後ろから声が聞こえる、振り返ると自転車に乗った警官だった。


 これはまずい。


「宮姫、この時代の役人だ。早くその恰好を何とかしろ」

「役人か仕方ない……」


 すると突風が吹き警官が一瞬目を閉じると、宮姫は幼女の姿に変わっている。


「あれ、そこの君、確か公衆の面前でイチャイチャしてたろうに?」

「はい?これは妹の宮姫ですけど」

「どうしたの?おじちゃん」


 宮姫も幼女になりきっている。これなら何とかなりそうだ。


「見間違いか―――疲れているのかな―――兄妹仲良くて良いね」


 そして、警官は自転車に乗って去って行った。


「ふうー危なかった、宮姫あの恰好は外ではするなよ」

「はーい、お兄ちゃん」


 だから、その『お兄ちゃん』は恥ずかしい、本当に何時まで猫かぶっているのだ。


「分かったから帰るぞ」


 私が少し不機嫌になる。すると、宮姫はそれを察して元の霊体に戻ると、俺の肩に再び乗り帰路につくのであった。

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