第6話 料理
「京太郎、ジャガイモの皮の剥き方はこれでいいの?」
デニム生地のエプロンをつけたゆうきは包丁でジャガイモの皮を剥いていた。
「うまい、うまい。そんな感じであと2つ剥いてくれ」
「はーい」
少し動くだけで肩が当たるくらいの狭いキッチンで、カレーを作る。
なんか、彼女とやりたいことができている気がする。
「うわぁーん、京太郎。玉ねぎが目に染みる〜」
「おい、目を擦るな。余計に染みるぞ」
「先にいってよぉ〜」
瞑ったゆうきの目から涙が溢れていた。
「あとはやっておくから向こうで待ってろ」
「やだぁ〜、おれもやるぅ」
「わかった、野菜は俺が切るから、肉を炒めるのをお願いしていいか?」
「うん……」
ゆうきは目をしょぼしょぼさせながら、オリーブオイルを垂らした保温鍋に肉を入れてゴムベラで炒め始めた。
なんかこうしていると新婚夫婦みたいな……
俺はぶんぶんと頭を横に振ってその考えを振り払う。
「京太郎どうかしたか?」
「何でもない、本当に何でもない」
ゆうきはきょとんとした顔でゴムベラを持ったまま俺を見上げていた。
なんかその姿にこうグッと来てしまう自分がいる……
俺は視線から逃げるように目を逸らした。
「変な、京太郎」
ゆうきはそう言って口に手を近づけて笑った。
その、一つ一つの動作が女子っぽい。確かにゆうきらしい一面もあるんだが……女子校に行っていたせいか、男らしさが、表面上は女子らしさに包まれ、置き換わっている感じがする。
そのあとは特にトラブルもなく、カレーは出来上がった。
「うーん! うまい!!」
皿に盛られたカレーをゆうきは頬張り、美味しそうに咀嚼しながらほっぺに手をやった。
「まぁ、上手くできたな」
「京太郎はシビアだな」
「お前が強火で全部を炭にしなくてよかったよ」
キッチンのシンクには底が黒焦げになった保温鍋が水につけられていた。
「次は大丈夫、おれ火加減を覚えたから」
その言葉を俺は鵜呑みにして良いのだろうか。
「はぁー食った、食った。お腹いっぱい」
ゆうきは足を伸ばして膨れたお腹をぽんぽんっと叩いていた。
「皿洗いしておくな」
「ありがとう〜」
キッチンに皿を運ぶと、俺はスポンジに洗剤をつけて、洗い始める。
「京太郎〜、風呂入れておくよ」
「おう、頼む」
ん? 風呂?
何気なく返事をしたが、つまり今からゆうきと俺は風呂に入るわけで……
待て待て、まだ一緒に入るとは決まったわけでは……
皿を洗い終わると、キッチンのシンクに手をかけた。心臓がドクッドクッと高鳴る音が耳に響いた。
ゆうきと……風呂?
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