第3話 ショッピングモール
「京太郎〜! こっちこっち!」
可愛い女の子が俺の名前を呼んでいる。それだけでこれは夢じゃないかと思う。
「何してんの京太郎?」
「いひゃぁっ、何でもない」
頬をつねって確認していたところ。後ろに手を組んでゆうきが覗き込むように俺の見上げてきた。
こいつは男、こいつは男、こいつは男。
鎮まりの呪文を唱えたが、心拍数は収まることなく上がっていく。
ゆうきは外出ということでジーンズ生地の上着に、ボーダー柄のマリンシャツ、そして太ももが見える半ズボンにストッキング、加えて足にヒールみたいなぺったんこシューズを履いいる。おまけに手触りの良さそうな長い髪にはベレー帽を乗せていた。
なんかファッション誌から飛び出てきたようなオシャレ感が漂う。
一方の俺は無地のシャツにブルゾン、ジーンズは全てユニクロ、下着に靴下までもが同じだ。靴は高校から履き古しているセールで買ったニューバランスだし、何だかレベルが違う。
「何だぁ〜? おれに見惚れてるのか? うり、うり!」
肘で俺の脇腹を突いてくるゆうき、俺は自然と前屈みになった。
「いや、なんかすごくオシャレだなって、洋服とかは自分で買ってるのか?」
「あ〜これね。服はさぁ、お母さんが買って来るんだよ。別に着なくてもいいけど、着ないともったいないじゃん? おれ、可愛いし」
「確かに似合ってる」
俺は頷いた。ゆうきのお母さんのセンスは見事のものだ。
「京太郎、おれが可愛いをスルーしたな! そんな生意気なお前には脇腹をこちょこちょこちょこちょ!!」
「ばっ、お前っ、や、やめろ!! やめろよ!! こんな、ところでっ! うひゃっ、ひゃひゃひゃ」
ゆうきは俺の脇腹をホールドしてくすぐる。
「どうだ、まいったか! 降参しろ!!」
「する! する! 降参するから! 手を離して!!」
「わかればよろしい」
ゆうきが手を離すと、ふと彼女の髪の毛から石鹸のいい匂いがした。
こいつ本当に男だったんだよな。
今の姿だけをみたら、誰もそうとは思わないだろう。
俺だってまだ信じられていない。
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