第37話 ワタクシタチはモノノセイメイ

 遥かな古代、遥かな昔、人族が発生しそこから異種族が発生する。

 他の世界では異世界が形成され、ありとあらゆる世界が複雑に絡まる。

 それを0から見ていた物がいた。

 それは石だった。

 その石には生命が宿っていた。

 全ての始まりである魔法族の誕生であった。


「ワタクシは1人だったワタクシの意思は伝染しいつしかワタクシは10人になった。そうしてワタクシは100人になりそうしてワタクシは1000人になった。ワタクシにはレベルという概念は存在せず。ただそこにある。だがワタクシはワタクシにとってレベルという概念が欲しかった」


 1人の魔法族、彼または彼女は人間が持つレベルという概念が欲しかった。

 その為には生き物が持つ生命としての活動が必用であった。 

 だから石はスキルを習得するため、転がった。

 転がってモンスターを倒し、1000人の魔法族が大地を転がり、デイリボーナスを得た。

 その結果、それぞれなりたい道具や武器や鎧に進化する事に成功し。

 

「皆は武器や防具や道具に進化した。だがワタクシは始まりだから変化する7つの武器となった。レインボーウェポン。それがワタクシの名前。剣、斧、槍、鈍器、杖、弓、ダガーそれがワタクシだ」


 そして意識は現実に戻っていく。

 魔法族とは異種族として人間に嫌われ続けてきた。

 それでも彼等は知っている。最初の始まりは人間であった事を。

 悪い人間、良い人間そういう物は確かに存在する。


 だがレインボーウェポンことレインボーにとって人間とはまだまだ幼子のようなもので導いてあげればいいと思う、しかし時には鬼のように奈落の底に叩き落す必要もあるだろうが。


「レインボー人間達の街の兵士はびびって動けねー」

「こっちもだ。本当に人間を導くのか?」


「それがワタクシタチの役目だ」


「「おう」」


「皆は人間の保護をよろしく頼む」


「「れ、レインボー」」


「安心しろ、そう簡単には壊れぬさ」


 魔法族の仲間達は鎧または武器の姿をしてぷかぷかと浮遊しながら街の方角へと向かう。


「さて、お前達、どこぞの異世界の住民何だろうが。この街にはな歴史があるんだよ」


 レインボーの脳裏で色々な過去が巡っていく。

 ある子供はレインボーの武器の姿をおもちゃだと思った。

 レインボーはその子供が老いるまで見届けた。

 ある女性は子供を産み死んだ。

 その子供を守る為見守った。


「ワタクシタチに出来るのは見守る事だ。だが人間はいつしか魔法族のありがたみを忘れ、敵対視してきた。怖いなど危険など。だがそれでもいかように出来よう、今まで遥か昔の人間はやさしかったのだから!」


「なぁ、お前達、ミナゴロシダ」


「先程から黙って聞いていると生意気な武器だ。その武器はわたしが使って差し上げよう」


 そこに群がる異種族。ゴースト族。

 半透明な姿に所々だけが肉体の部分がありそこが弱点とされる。

 異世界の異種族を研究した訳ではないが、かつてどこかから異世界から渡ってきた人が教えてくれた。

 とても危険な種族。


「わたしの名前はヴィボーレ、元々人間でゴースト族になったのよ、社交界では優雅にドレスを着用して踊った者よ」


「ほう、奇遇だなワタクシも踊れるぞ」


「へぇ、踊れるなら踊りましょう、皆お相手さしあげて」


 赤いドレスをふらりふらりとさせながら、ヴィボーレは踊る。

 それに合わせて、ヴィボーレの周りのゴースト族500体が動き出す。


 異変は唐突にやってきた。


「ゴースト族ですか、とても見苦しいですね」


「ルウガサーさんそれは言わないほうが、でもホーリーアーチャーとの相性は抜群ですわ」


 光の矢が飛来した。

 次から次へとゴースト族が浄化されていく。

 一応ザコとはいえ、レベルは5000はあったはずだ。


「叩き漏れたのは、ユニコールドとフェリルルやってあげて」


 ルウガサーの周りから突如として馬のようなモンスターとオオカミのようなモンスターが飛来する。


「は、馬鹿め、物理はきかんのって」


 馬とオオカミは次から次へとゴースト達を倒していた。


「あらぁ? この子達もある種のゴーストみないなものよ、召喚という技術で異世界ならぬ霊界みたいな?」


「は、はああああ」


 ヴィボーレは唖然と口を開いていたが。

 彼女はにんまりと笑うと、右手と左手をぱんぱんと叩いた。


 異世界からなのか扉が出現しそこから数えきれないゴースト族がやってくる。


「リナテイクさん、ちょっと余裕がありません」


「ルウガサーさん、こっちもです」


「それならワタクシが色々と片づけますのね、お二人は返ってください」


「そうもいきません、団長があなたを必用としています」


「このワタクシをですか? 魔族の娘よ」


「そうです」


「そうですか。分かりました。ワタクシに出来る事であれば。ただし、あそこのゴーストの娘は許せません。この道中100人の人間の死体を見ました。ワタクシはあの子達の遥かな祖先を一人残らず記憶しています」


「は、はは、ははあはははは、そんな命1つ1つ大事にしたっていつか死ぬんだお」


「そうですか、ちょっとお仕置きが必用ですね、魔王ルウガサー、ジョブ女王リナテイク。心遣い感謝します」


「魔王だと分かったのですね」


「ジョブ女王ってなんですかー」


 ルウガサーとリナテイクがレベル5000のゴーストを相手にしている間。

 レインボーはただ一言呟いた。


【再臨せよ】


 レインボーの体が7つに分裂する。

 7本の武器が鎖で繋がれて、空中を浮遊する。

 これを使えるのは偶然にも獲得したスキルだから。


【スキル:多重構造:《効果》意識を多重操作できる】


「きっもーい」


 ヴィボーレはそう叫ぶ。

 背中から禍々しい赤黒い大剣を引き抜きざま。

 レインボーに肉薄する。

 ゴーストにとって走る事など必要とせず。

 ただそこに行きたいと思えば風のように飛来する。


「わたしのレベルは9900であんたはレベル1だろうがああああ」


「魔法族にとってレベルは意味をなさない」


「はい? レベルこそが全てだよばーか」


「そうですか? 技術こそが全てだと思いますよ。ワタクシの記憶にはあらゆる戦闘を記憶しそこからシミュレーションして作り上げる事が出来ますからね」


「いみわかんなーい」


「奇遇ですねバカには何も教えてあげないでーす」


 魔法族の武器が7つと1本の禍々しい大剣が衝突したのはその時だった。



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